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(更新: ORICON NEWS

【コミケ97】過激コスプレは『表現の自由』か? モラル低下が懸念される露出ぶり、弁護士の見解

  • コスプレイヤーとそれを撮影するカメラマン

    コスプレイヤーとそれを撮影するカメラマン

 12月28日から31日まで、東京ビッグサイトで開催される『コミックマーケット97』。この世界最大の同人誌即売会は、コスプレイヤーの活躍の場としても注目を集めている。だが近年、コスプレの過激な露出が問題視されることも多い。露出にまつわる犯罪といえば『公然わいせつ罪』が思い浮かぶが、法律的な視点ではどこまでがOKで、どこからがNGなのか? コミケのコスプレイヤーや来場者の声とともに、レイ法律事務所の舟橋和宏弁護士に話を聞いた。

「知らない人が見たときに、モラルや品性、イメージ低下につながる」

 「会場ごとにルールが異なるので、それに沿った範囲であれば、過度な露出もありだと思う」と語るのは、今回の冬コミでコスプレをしていた20代の女性。とはいえ、「街中のイベントでは参加者以外の目にも触れるため、通行人に迷惑がかからないように」と、場所によって配慮の仕方を変えているようだ。「見えてもいいアンダーウェアを着て、下着が見えないように気を付ける」(別の20代女性)など、注意を払っている人もいた。

 コスプレイヤーを撮影していた40代の男性は、「その時しかできないコスプレや、その時にしかない気持ちに合った衣装があるだろうから、どんな格好するのも個人の自由。その瞬間瞬間の気持ちは尊重するべき」と主張。「風でたまたまモラルに反した写真が撮れてしまうこともあるが、それはネットに公開にしない。女の子がストレスなく楽しめる安心安全な場作りをして、お互いにとっていい写真を撮れることがベスト」と語る。

 一方、一般来場者の30代女性は、「過度な露出をしている女性を見ると、コスプレイベントを知らない人が見たときに、モラルや品性、イメージ低下につながりそう」と、心配の声を上げる。

 それぞれ、「行き過ぎた露出はよくない」という意識はあるようだが、置かれた立場によって、微妙な温度差が感じられる。では実際、コスプレの露出はどこまでがOKで、どこからがNGなのか。法律的な視点を舟橋弁護士に語ってもらった。

『公然わいせつ罪』で処罰されると6ヶ月以上の懲役、30万円以下の罰金

――法律的には、どこまでがOKでどこからがNGなのですか?

【舟橋弁護士】例えば、胸や下半身などの陰部が見えてしまう、または明らかに下着が見えてしまう、などがNGラインと言えるでしょう。布一枚へだててほぼ下着が透けている、というものNGでしょう。こういった場合、刑法でいうところの『公然わいせつ罪』に該当する可能性があります。

――逮捕もありうるのでしょうか?

【舟橋弁護士】可能性という意味ではゼロではありません。そして、逮捕されて『公然わいせつ罪』として処罰される場合には、6ヶ月以上の懲役、30万円以下の罰金が課せられ、いわゆる「前科」がつくことになります。

――そんな危険を避けるため、コミケではコスプレについてどのように運営しているのでしょうか?

【舟橋弁護士】現在、きわどい衣装についてはコミケのスタッフが声かけをすることもありますね。そして、コミケの主催団体は、トラブルが極力起きないようにコスプレについて最低限のルールを設けています。このようにしているのは、コスプレや撮影を「表現」として、その自由を最大限尊重し、いたずらに撮影手法を制限するなどして本来生まれ得た表現が世に出る機会を失わせてしまうというリスクを鑑みて、慎重でありたいと考えているからです。そのため、参加者にも自律に基づく行動を求めています。

――コスプレ文化を守るためにも、参加者それぞれが意識をしっかり持たないといけないんですね。

【舟橋弁護士】そうですね。何か問題が起きると、イベント開催・運営自体が立ち行かなくなったりもします。「最低限これ以上はNG」というルールを作り守ることは、自己防衛でもあり、文化を存続させるためにも大切なことになってきます。ですが、コスプレイヤーさんの中には、どうしても「注目を浴びたい」と考え、露出度の極めて高い危険な衣装を着る人がいるようです。

――コミケのときにはネット等でも大々的に特集が組まれていますし、SNSで自分の写真をアップするコスプレイヤーもいます。

【舟橋弁護士】SNSなどで簡単に注目されるからこそ、「いいね」欲しさ…という方もなかにはいらっしゃるのかなと。

自分の『表現の自由』があれば、他人の『表現の自由』もある

――コスプレと『表現の自由』との関係はどうなんでしょう?

【舟橋弁護士】アニメのキャラクターの衣装を三次元で再現してポーズを取ることは、『表現の自由』の一つであるといえます。ただ、自分の『表現の自由』があれば、他人の『表現の自由』もありますよね。あるキャラクターのコスプレを「見るのが嫌だ」と言うのも自由なわけです。そういったことから、批判をされるということも当然ありますし、一切批判されないことまでが保証されているわけではありません。

 『公然わいせつ罪』や『迷惑防止条例』に当たる行為であれば、犯罪行為として取り締まられるということも別のレベルで存在しています。そして、犯罪ではないけれど、社会常識とかマナーとして、これは守ったほうがいいと言われているルールもあるわけです。それぞれ、憲法に規定されている『表現の自由』という側面、刑法という側面、マナーという側面に分けて考えていくべきものだと思います。

――表現の自由というと『あいちトリエンナーレ』の「表現の不自由展」なども話題になりましたね。

【舟橋弁護士】もちろん、ある表現に対して、「嫌いだ」を言う自由はあります。しかし、そうは言っても脅迫をして開催中止に追い込んだり、クレームを何十件も重ねるといったことまでが認められるかといえばそうではないでしょう。そこはよくよく考えられなければならない問題ですね。

――では、弁護士の視点から、コスプレを楽しむためのアドバイスをお願いします。

【舟橋弁護士】楽しむためには、コミケが告知しているルールはよく読み、守ることが必要だと思います。コスプレ会場間を移動する際に、横断歩道などを渡ることもありますし、コミケ参加者以外が通ることも当然あります。そういった場所を移動するときはマントなどを羽織り、露出を控える配慮が必要です。また、あまりに過激な衣装だと、心無いカメラマンや参加者からの盗撮やセクハラなどを受けるリスクがあります。当然盗撮は撮影する人間が悪いのですが、そういった人間を見つけた場合はスタッフを呼ぶなど、コスプレをする側も見る側も、すべての参加者が意識をしていただきたいと思います。

――文化を守るためにも、全員の意識が大事ですね。

【舟橋弁護士】はい。ルールは増えれば増えるほど窮屈になってしまいますし、それはコミケの主催者側も本位ではないでしょう。コミケを存分に楽しむためにも、互いを尊重しながら、年に2度の祭典を楽しんでいただきたいと思います。

(文:衣輪晋一)
<プロフィール>
舟橋和宏弁護士
レイ法律事務所所属。アニメ・映像コンテンツの権利保護に力を入れており、知的財産保護(特に、著作権・商標権保護)に精力的に取り組むほか、『子どもの人権と少年法に関する特別委員会』に所属し、いじめ予防授業等にも取り組んでいる。自他ともに認めるアニメオタク。大塚明夫さんが演じるイスカンダルが好きすぎてガチャにいくらつぎ込んだかは考えないようにしている。

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