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“「憮然」5割超が誤用”は本当に誤用?時代とともに変化する“正しい日本語”とは
“誤用報道”に困惑?言葉の正誤は文化庁も定めておらず「正解は一つとは限らない」
先月発表された平成30年度の調査では、「憮然」の意味を問う設問があり、本来の意味とされる「失望してぼんやりとしている様子」は28.1%、「腹を立てている様子」だと思っている人の割合が56.7%に上るという報道があり、テレビやネットで話題となっていた。
同庁国語課が事務局を務める国の有識者会議『文化審議会国語分科会』の報告では「そもそも、言葉は変化するものであり、地域や共同体によっても通用する言葉や言葉遣いが異なる場合もある。同じ意味を伝える表現が複数あるなど、正解は一つとは限らない。」とし、自分自身が正しいと受け止める意味を基準とし、それ以外の使われ方を誤りとみなすことで、コミュニケーションに障害が生まれることに警鐘を鳴らしている。
あくまで現時点での “正しい日本語”に過ぎない「言葉は変化しながら生きている」
「例えば“危ないですから近づかないで下さい”という日本語を、外国人の生徒に教えるとします。ですが、そもそも“危ない”は形容詞であるため“です”を付けるのは誤用という考えもあります。“です”が丁寧語なのでこれを断定の“だ”に変えると分かりやすい。この文法だと“危ないだ”になってしまうのです。正しいとされる日本語は“危険ですから”、“危のうございますから”。しかし一般的に使われている文法と異なるため、外国人は混乱してしまう。そこで、外国語でも誤用が定着した例は多いため、“間違っているかもしれないけど、これでも通じます”と教えると安心してくれます」(衣輪氏)
また、アナウンサーでも間違った日本語を使っていることが多いという。例えば「ダントツの一位」。ダントツそのものが「断然トップ」の略なので、「トップ」と「一位」の重複表現になっている。ほかにも「すべて一任する」も間違い。「一任」がそもそも「すべて任せること」なので、これも重複表現だ。これをいちいち指摘していると、“通じるのに間違い?”と混乱ばかりが増えて、日本語を習得する際の障壁になってしまうのだという。
「“正しい日本語”というものをしっかりと知っておくことはとても大切です。ですが“正しい日本語”は複数の辞書で上位に挙げられているもので、現時点での“正しい日本語”に過ぎないのです。例えば『愛嬌(相手に好感を与え、親しみをさそう振る舞い)』は、古典の時代では“可愛らしく、優しい魅力。深く優しい思いやり”という意味。『あからさまに(明らかに。あらわに)』は、古典では“仮に。ついちょっと”。あと『明日(翌日)』は、本来は“朝、翌朝”を指すのです。古典に合わせるとこれらの今の使い方も間違っている。つまり時代によって、日本語は変化。言葉は古より変化しながら生きているのです」(同氏)