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映画『君の名は。』や『ワイルド・スピード』に見る、映像と劇伴の相乗効果と共犯関係
“映像と楽曲との共鳴”によって多くの名作が生み出されてきた
こうした“映像と楽曲との共鳴”によって、これまでにも多くの名作が生み出されてきた。思いつくまま挙げても、『ボディガード』ではホイットニー・ヒューストンの「オールウェイズ・ラブ・ユー」、『タイタニック』でもセリーヌ・ディオンが歌う「My Heart Will Go On」が映画ともどもメガヒットを記録、ラブストーリー&ラブソングの王道を築き上げた。また、ヒューマンドラマの傑作『ニューシネマ・パラダイス』でも、全編インスト曲ながら「あの旋律を聞くだけで涙腺がゆるむ」などと言われ、今なお愛され続けている。
実際、『雨に唄えば』や『サウンド・オブ・ミュージック』などの1950〜60年代のミュージカル映画は言うに及ばず、70年代の『ゴッドファーザー』、『スター・ウォーズ』、『ロッキー』、『ジョーズ』、『エクソシスト』等々ジャンルを問わず、大ヒットした名作と名曲のコンビには枚挙に暇がない。さらに80年代のMTV全盛期には、『ゴーストバスターズ』や『トップガン』に代表されるように、ヒット映画のサントラ盤がヒットチャートを席巻することも当たり前となり、映画と音楽は一体となってエンタメ作品たり得ていくのである。
『ワイスピ』ヒットにおけるSNS戦略の重要性
そんな『ワイスピ』シリーズのサントラ効果について、4作目以降、約10年間にわたって本シリーズに携わってきた東宝東和宣伝部・佐藤大典氏は次のように語る。
「前作『ICE BREAK』(17年)では、サントラの推し曲4〜5曲のMVを発売前に毎週解禁し、それをアーティスト、映画、レコード会社のそれぞれの公式SNSでいっせいにフォローするという波状攻撃をしかけたのですが、そのMVの内容が凄かった」と佐藤氏は振り返る。どのMVも個性的でクオリティが高く、「若いファンの子ならこの映像だけで朝までお酒が飲めるレベルのかっこよさ」と強調する。結果、どのMVも1〜2億回の再生数を記録。「サントラ発売前にしっかりとSNSで話題を拡散させる戦略がハマりました」と、映画ヒットにおける“楽曲”の重要性を同氏は語った。
作品全編と一体化し、その作品性さえ決定づけてしまう“劇伴”のパワー
映画の名場面を盛り上げるにとどまらず、作品全編と一体化し、その作品性さえ決定づけてしまう“劇伴”のパワー。映画と劇伴のアーティスティックな“共鳴”もさることながら、観客を引き込み、作品自体を観客の記憶に刻み込む“共犯関係”にもあるようだ。さらに最近では、SNSを巻き込んだ展開にも拍車がかかっているだけに、今後も劇伴からどんな名曲が誕生するのか楽しみだ。