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映画『君の名は。』や『ワイルド・スピード』に見る、映像と劇伴の相乗効果と共犯関係

  • 映像美だけではなく、劇伴でも記憶に残る、映画『君の名は。』(C)2016「君の名は。」製作委員会

    映像美だけではなく、劇伴でも記憶に残る、映画『君の名は。』(C)2016「君の名は。」製作委員会

 今年の夏映画の中では、7月19日に公開された新海誠監督の『天気の子』が話題だ。前作『君の名は。』(2016年)は興行収入250億円、日本の映画興収ランキングで歴代4位に輝いたが、『天気の子』は公開3日間で115万人を動員、興収約16億4,000万円を記録し、『君の名は。』の同期間比約128%と好調な出足。そんな新海監督作品の“劇伴”といえば「前前前世」でおなじみRADWIMPSの楽曲の印象が強烈。今作でも引き続きRADWINMPSが全編を彩る。今では、彼らの透明感&抒情感あふれる楽曲に触れた瞬間、新海誠監督作品をイメージさせるに至っている。

“映像と楽曲との共鳴”によって多くの名作が生み出されてきた

 今年の夏映画の中では、7月19日に公開された新海誠監督の『天気の子』が話題だ。前作『君の名は。』(2016年)は興行収入250億円、日本の映画興収ランキングで歴代4位に輝いたが、『天気の子』は公開3日間で115万人を動員、興収約16億4,000万円を記録し、『君の名は。』の同期間比約128%と好調な出足。そんな新海監督作品の“劇伴”といえば「前前前世」でおなじみRADWIMPSの楽曲の印象が強烈。今作でも引き続きRADWINMPSが全編を彩る。今では、彼らの透明感&抒情感あふれる楽曲に触れた瞬間、新海誠監督作品をイメージさせるに至っている。

 こうした“映像と楽曲との共鳴”によって、これまでにも多くの名作が生み出されてきた。思いつくまま挙げても、『ボディガード』ではホイットニー・ヒューストンの「オールウェイズ・ラブ・ユー」、『タイタニック』でもセリーヌ・ディオンが歌う「My Heart Will Go On」が映画ともどもメガヒットを記録、ラブストーリー&ラブソングの王道を築き上げた。また、ヒューマンドラマの傑作『ニューシネマ・パラダイス』でも、全編インスト曲ながら「あの旋律を聞くだけで涙腺がゆるむ」などと言われ、今なお愛され続けている。

 実際、『雨に唄えば』や『サウンド・オブ・ミュージック』などの1950〜60年代のミュージカル映画は言うに及ばず、70年代の『ゴッドファーザー』、『スター・ウォーズ』、『ロッキー』、『ジョーズ』、『エクソシスト』等々ジャンルを問わず、大ヒットした名作と名曲のコンビには枚挙に暇がない。さらに80年代のMTV全盛期には、『ゴーストバスターズ』や『トップガン』に代表されるように、ヒット映画のサントラ盤がヒットチャートを席巻することも当たり前となり、映画と音楽は一体となってエンタメ作品たり得ていくのである。

『ワイスピ』ヒットにおけるSNS戦略の重要性

 “映像と音楽の共鳴”という観点で見た時、今夏の映画にも代表的な作品がある。アクション映画の傑作、2001年の第1作から続く『ワイルド・スピード(以下、ワイスピ)』シリーズだ。事実、本作のサントラ人気は根強い。通常、シリーズものは“右肩下がり”に陥りがちだが、『ワイスピ』は毎回安定した売り上げをキープするだけではく、15年発売の『ワイルド・スピード SKY MISSION オリジナル・サウンドトラック』では約18万枚と、過去最高の売り上げを記録。シリーズ合計でも国内での推定累計売上枚数(※オリコン調べ 7月1日現在)は49万枚を突破している。

 そんな『ワイスピ』シリーズのサントラ効果について、4作目以降、約10年間にわたって本シリーズに携わってきた東宝東和宣伝部・佐藤大典氏は次のように語る。

 「前作『ICE BREAK』(17年)では、サントラの推し曲4〜5曲のMVを発売前に毎週解禁し、それをアーティスト、映画、レコード会社のそれぞれの公式SNSでいっせいにフォローするという波状攻撃をしかけたのですが、そのMVの内容が凄かった」と佐藤氏は振り返る。どのMVも個性的でクオリティが高く、「若いファンの子ならこの映像だけで朝までお酒が飲めるレベルのかっこよさ」と強調する。結果、どのMVも1〜2億回の再生数を記録。「サントラ発売前にしっかりとSNSで話題を拡散させる戦略がハマりました」と、映画ヒットにおける“楽曲”の重要性を同氏は語った。

作品全編と一体化し、その作品性さえ決定づけてしまう“劇伴”のパワー

 つまり、制作陣の楽曲へのこだわりやSNSを通じた戦略によって、『ワイスピ』=「世界のトレンド曲」というイメージが全世界のファンの間で定着。“劇伴”への信頼感が映画のクオリティを担保する相乗効果となっていることが分かる。それはとりもなおさず、いつの時代も若者にとっては、その時代のヒット映画とその劇伴が“ファッション”として愛されてきたということでもある。

 映画の名場面を盛り上げるにとどまらず、作品全編と一体化し、その作品性さえ決定づけてしまう“劇伴”のパワー。映画と劇伴のアーティスティックな“共鳴”もさることながら、観客を引き込み、作品自体を観客の記憶に刻み込む“共犯関係”にもあるようだ。さらに最近では、SNSを巻き込んだ展開にも拍車がかかっているだけに、今後も劇伴からどんな名曲が誕生するのか楽しみだ。

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