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(更新: ORICON NEWS

新しいことにチャレンジしたい、演出家・TBS藤井健太郎氏

バラエティの基礎を学んだ『リンカーン』

――学生時代に熱中していたエンタメコンテンツは何ですか?
 テレビも音楽も本も、いわゆる一般的なエンタメには幅広く接していたと思いますが、家にいたら基本テレビがずっとついていて、その中でもやっぱり「バラエティ番組」は大好きでした。小学生のときは『天才・たけしの元気が出るテレビ!!』(日本テレビ)、中学生になってからは『ダウンタウンのごっつええ感じ』(フジテレビ)が一番好きでしたね。

 大学時代も外で人と遊ぶよりも一人で家にいることが多く、だらだらと無駄な知識ばかり溜め込んでいた気がします。ただ、その頃に好きだったり面白いと感じたものが今の仕事に繋がっている部分もあって、何がどこで役に立つか分からないなとは思います。スポーツなんかでも中学生のときはNBA、高校からは格闘技が特に好きでしたが「試合を見て楽しむ」以上に、NBAでいえば「フリースローやスリーポイントシュートの成功率」だとか、格闘技でいえば「誰の弟子でどこの道場出身」とか、データや背景の部分が好きでした。そういう細かい部分が好きなのも、今の仕事のスタイルに通じていると思います。

――大学時代から、エンタメ業界に就職したいというのはありましたか。
 時間を売ってお金に変えるような楽しくない仕事は嫌だなと思っていたので、「楽しさ」と「金銭面のバランス」で就職先を選びました。結果、受けたのはエンタメ系の「テレビ局」「出版社」「レコード会社」だけでしたね。

藤井健太郎氏(C)MusicVoice

藤井健太郎氏(C)MusicVoice

――2003年に「TBS」に入社されて、2年目でいきなり特番を担当されたんですよね。
 入社1年目の冬頃にあった「若手社員を対象にした企画コンペ」で企画が通って、2年目に「プロデューサー兼総合演出」で特番を担当しました。今思えば、そこまで優れた企画というわけでもなかったんですが、「1年目のAD」が考えた企画にしてはまずまずな気がします。番組名は『限度ヲ知レ』。どこまでがOKでNGかを検証する番組で、「公共のプールで着用できる水着の限度」を調べるため「貝殻ビキニ」や「白ブリーフ」でプールに入ろうとしたり…と、今とやっていることが大して変わっていないです。

――情報番組のADなどを経験されて、入社3年目でリンカーンのADになられた。
 そうですね。ずっとバラエティへの希望は出していたので『リンカーン』に配属になったときは嬉しかったですね。そこから「バラエティの基礎」を学んでいった感じです。局としても芸人さんと笑いで向き合う番組をしばらく作っていなかった時期なので、『リンカーン』がTBSの本格お笑いバラエティの「復帰作」だったと思います。芸人さんの気持ちや考え方、打合せのやり方から台本の書き方など、基礎的な部分はすべて『リンカーン』で教わりました。で、そのとき一緒に番組を作っていたADたちが今、『水曜日のダウンタウン』のディレクターになって、一緒に番組を作っています。

――2014年にスタートした番組『水曜日のダウンタウン』は、総合演出という形ですか?
 開始当初はプロデューサーも兼任でしたが、今は演出のみです。基本的に、番組の中身に関わることの最終的なジャッジはすべて行っています。ただ、スタジオ部分の最終的な編集なんかも自分でやってるんですが、そういうところは人に任せられるといいのになぁとは思ってます。VTRがメインの『水曜日のダウンタウン』ではスタジオ部分がそんなに長いわけでもなく、収録時間も短いので普通に「面白い部分」をチョイスしていけば、誰が編集してもそこまで変わるもんでもないんです。でも、チェックして直しを指示するだけじゃなく、ついつい自分でやりたくなっちゃう。もちろん、自分自身で編集することで、少なくとも自分の中では他の人がやるよりも面白くはなっている。ただ、その時間をもっと全体的なこと、例えば企画選定などの時間に割くことで、トータルのクオリティは上がりそうな気もする。それは自分でも薄々分かってるんですが、やっぱりやらないと気が済まないんですよね。

――演出部分もかなり細かくこだわっていますか。著書にも「ほとんどの人が気づかないようなネタも入れる」とありましたが。
 そうですね…今後OAのものだと、「空手家vs棒を使う競技のプロ、空手家が道具に一発蹴りを入れていいルールならいい勝負になる説」という、空手家がバット折りの要領で道具を折って他の競技のプロと「ハンデ戦」を戦う…という企画での「vsカヤック戦」に「ライバル選手ではなく空手家に壊されたパドルで…」という実況を入れました。みんな忘れかけてる「カヌーの選手が禁止薬物を盛ったり道具を壊したりした件」を少し触った感じです。OAではどうなるか分かりませんが、スタジオでは誰も反応していませんでした。あと、同じ回の「100歳以上のヘビースモーカー存在する説」というVTRでは、街頭インタビューで「知り合いで高齢の喫煙者はいますか?」「板橋にいるよ」というやり取りを受けてPUNPEE(番組OP等の楽曲を担当する板橋出身のラッパー)のプロデュースした曲を流したりとかですかね。気づいた人だけ少し楽しめればいいくらいの、あくまでオマケみたいなものですけど。

――『水曜日のダウンタウン』では、斬新な企画がたくさんあります。それはどういった時に生まれるのですか?
 会議で話しながら形を作っていくことが多いですかね。ただ、「面白い企画」を考えるよりも、それを実現する事の方が大変なんです。お金やコンプライアンスもそうですし、仕掛けや設定の作り方など、その過程で出てくる色々な問題をクリアしていかなければならないので。以前、「ホントドッキリ」という「芸人さんにドッキリだと思わせて、実はホント」っていうちょっと変わった企画を行ったんですが、そのときの「ホント」は「三四郎小宮くんのキャバクラ通いが女性週刊誌に掲載される」というネタ。これを実現させるためには、当然、本人や事務所より先に記事が掲載される情報を掴まなければならないし、それがハードなスキャンダルだと事務所も扱うのをOKしてくれないので、ちょっと笑えるレベルのものじゃなきゃいけない。でも、芸人さん自体は記事が出るのを嫌がるくらいのネタではなければならないし、さらに、その対象もホントをバラしたときに良いリアクションをしてくれそうな、ドッキリに向いてる芸人さんじゃなきゃいけない…と、その条件面だけでもかなりシビア。そんな条件がすべて揃った上で、番組サイドは「記事をドッキリだと思わせるような仕掛け」を何個も用意して一旦安心させ、ベストのタイミングでホントのバラシを…という大変な労力です。これでVTRは約15分。「ひらめき」はもちろん大切ですが、新しいことだったり前例のないことだったりすればするほど、それを形にするのもエネルギーが必要なんですよね。

藤井健太郎氏(C)MusicVoice

藤井健太郎氏(C)MusicVoice

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