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“ファンタジーの巨匠”天野喜孝、世界観を形成した当時を振り返る 「FFはある意味“伝統芸能”」

独立前後では”何かに合わせて生み出す“と”自分の絵は何か“を考えることが一番の違い

――そして、タツノコプロ時代の話ですが、毎週のように新しいキャラクターを生み出すのは大変だったんじゃないかと思いますが。

天野喜孝「辛かったですよ。でも、そういう仕事でしたからね。僕だけじゃなくて、みんなそういう環境でやっていました。アニメの放映が一週間に3本あったりすると、ゲスト・キャラクターをとにかくたくさん描かないといけなかったりして。トータルすると毎週13人くらい描いていたでしょうか。それを毎週描き続けるという。だから逃げたりとかしてね(笑)」

――逃げる!?

天野喜孝「会社に行きませんでした(笑)。家にいて、1日中映画を観たりしていました。ただ、締切は絶対ですから。迷惑かかることはしなかったです。真面目ですよね(笑)」

――そんな辛い時代を経て(笑)、独立されたわけですが、タツノコプロ時代と独立後の後で絵のタッチが変わったと思うのですが、それはどういうきっかけだったのでしょうか?

天野喜孝「タツノコ時代は会社に仕事の依頼があって、そのうえで会社員としてイラストを発表していた…要するに“タツノコの絵“を描いていました。でも独立してからは、絵柄のタッチはこちらに任されています。たとえば小説の挿絵だったら、依頼された絵を描くのはもちろんですが、タッチは要求されないんです。その違いですかね。自分で絵柄は何だろうと考える。”何かに合わせる“のではなくて、”自分の絵は何か“を考えることが一番の違いでしたね」

――タツノコ時代は職人だったわけですね。

天野喜孝「そうですね。タツノコの世界観で、世の中にいないキャラクターを作るということが役割でしたから。独立後の仕事も職人的でしょうけれども、でも世界観は自分で創造していいわけです。名だたる画家たちも、それぞれ自分の世界があって、それを自分の絵柄で表現した。キャラクターを作り出す作業とは、根本的に違う。逆に“自分のクセ”みたいなものが大事だったりするんです」

――クセというのは、冒頭でお話されていた「自分を出さないようにしようと思っても出ちゃう」ということに通じますよね。

天野喜孝「僕に仕事を依頼されるときは、それが望まれていると解釈しています。ある種のクオリティーでもあるわけです。独立したての頃、『SFマガジン』で連載をしていたんです。自分でストーリーを考えて、7〜8枚の絵で表現するということを毎月行っていました。自分の世界観を自分で考えなきゃいけなかったので、毎月自分の中にあるものをひねり出して形にして……勉強になりましたね」

――そういう積み重ねがあって、今の独特の幻想的な絵のタッチがありますか?

天野喜孝「そうですね。小説の挿絵や表紙の場合はすでに物語があるので、仕事イコール小説を読むということも結構ありますから、『こういう世界もあるんだな』と思うことなど、自分の世界観を広げるうえですごく役だったなって思っています。たぶん最初の何年間かでいろいろなものを吸収できたんでしょうね」

――幻となった押井守監督の『ルパン三世』(85年公開予定だったが未発表)、OVA作品『天使のたまご』(85年発表)のアート・ディレクションをされていましたが、この頃の出来事はご自身のキャリアの中にどのような影響を与えましたか?

天野喜孝「『天使のたまご』をやったことは、僕にとっては良かったことです。少女を描くということが珍しかったですし。押井さんとは同い年なんです。彼の世界観はちょっと不思議ですが、作品の表現の仕方に、どこか共通するものを感じましたね。虚無感みたいな。僕らは宮崎駿さんの世代とは10年ぐらい違いますが、大友克洋さんや押井さんの世代の“若い力”みたいなものをすごく感じましたね」

――影響を与えあった?

天野喜孝「そうですね。そうだと思います」

産みの苦しみよりも、愛され続ける作品に携わる責任が大きい「FFはある意味“伝統芸能”」

――その少し後に『FINAL FANTASY』が始まったんですよね。

天野喜孝「そうですね。当時、海外小説の翻訳版表紙の仕事などで、ファンタジー作品を多く手掛けていたので『FINAL FANTASY』のお話が来たんじゃないかなと思います」

――『FINAL FANTASY』の誕生から30年以上経ち、かなり大きな存在に成長しましたが、ご自身のなかでは、それまでの仕事の流れのひとつという感じでしたか?

天野喜孝「そうですね。でも、それまでは小説の世界を表現するということが多かったですが、ゲームということでジャンルが違っていたので、新しい試みだったと思います」

――昨年はユニバーサル・スタジオ・ジャパンのイベントで新たなイメージカットを描き下ろされていましたよね。30年続くコンテンツというのは本当にすごいですよね。

天野喜孝「『ファイナルファンタジー XR ライド』ですよね。本当にすごいと思いますよ。僕がすごいというよりも、スクウェア・エニックスさんや、FFスタッフさんたちがすごいんですけどね(笑)。作品自体のクオリティーが高いので」

――我々からすると、天野喜孝=『FINAL TANTASY』みたいなイメージもあります。

天野喜孝「それはありがたいです。FFに携わっている人たちはいっぱいいるわけですから、その一部としてずっといられるのは嬉しいことですよね」

――昔、007を演じていたショーン・コネリーが「ずっとジェームズ・ボンドと言われることは嫌だと思っていた」というエピソードもあったりしますが、『FINAL FANTASY』を続けることの葛藤などはありますか?

天野喜孝「やはり『FINAL FANTASY』という作品は僕の仕事の中でも大きいですし、特に海外に行くとFFしか知らないという感じですね。ただ、それで有名になったからいいのかなって思います。FF以外の仕事もたくさんやっていますし、今回の展覧会で出すような絵も描けていますし、いろいろな仕事のなかのひとつがすごく大きいってだけというか」

――歌手でいうヒット曲の持ち歌のひとつみたいな感じでしょうか。

天野喜孝「そうですね。すごくヒットして誰しもが知っている曲もあれば、そうじゃない曲もいっぱいあるじゃないですか。一部の人に刺さるか、多くの人に刺さるか、それだけの違いというか。そういう作品があると、ライブでも盛り上がっていいですよね(笑)。それと同じで、僕のFFも名刺代わりになっています」
――『FINAL FANTASY』はある意味、ひとの人生を変えてしまうほど影響力のある作品だと思うんですけど、そのような作品を作ろうと思って作っていらっしゃるのでしょうか?

天野喜孝「結果的には、狙ってそういう作品をつくるのは難しいんですけど、そういうつもりで作っていると思います。ただ、意識しすぎると気が楽ではないですね。『FINAL FANTASY』に関しては30年、どんどん形が変わって続いているわけですよね。もちろんドラクエもそう、マリオもそう、そのほかにもそういった作品はたくさんあるのですが。本当にすごいことだなと思います」

――生みの苦しみでしょうか。

天野喜孝「苦しみというよりは責任ですよね。ある意味、伝統芸能みたいなもので、繰り返しではあるけれども、そこに新しい要素が入るみたいな感じなのかなと思います。歌舞伎だって時代に合わせて、少しだけ形を変えて続いているわけじゃないですか。そこには、“待っている人がいる”などの、やらざるを得ないという事情もあると思うんです。創作の苦労というよりは、責任みたいなところ。それはある種の葛藤みたいなものがあるなか、仕上げなくてはいけない。モノを作る人は、みなそうだと思いますけどね」

(文/鴇田 崇)

『ラフ∞絵』 開催情報

展覧会名: ラフ∞絵
開催期間: 2019年4月2日(火)~4月16日(火)
開場時間: 11:00〜20:00(入館最終案内19:30まで、4月2日は14:00開場)
開催場所: 3331 Arts Chiyoda 〒101-0021 東京都千代田区外神田6-11-14
休 館 日: 無休

入場料金: 一般券(一般2,000円/大学生1,500円/高校生1,000円)
プレミアムチケット 3,000円
入場券購入者へは、会場で「特典」をお渡しします。
一般券はモノクロチケット4種のうち1種。プレミアムチケットはカラーチケット4種セットです。
中学生以下および障がい者手帳をお持ちの方は入場無料です。
介護が必要な場合、介護者1人まで無料です。
各種専門学校生は「大学生」のチケットをご購入ください。

お問い合わせ: 公式サイト 4rough.com/ 公式Twitter @4rough_official
TEL 03-3253-8558(「ラフ∞絵」実行委員会事務局)

主  催: 「ラフ∞絵」実行委員会
広報協力: 株式会社スクウェア・エニックス
特別協力: 楽プリ株式会社、3331 Arts Chiyoda112

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