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ORICON NEWS
中二病監督・福田雄一、『今日から俺は』に見る幼児退行“ダダこね演技”のインパクト
アニメ・漫画の実写化は“炎上必至” でも収益的には安全パイな鉄板コンテンツ
炎上すると分かっていながら、なぜコミック原作が人気なのか? それは、作品の認知度が高く、コアファンの根強い支持があるため視聴率や興行成績など収益面で安全パイであること。そのほか、ビジュアルイメージが決まっているため、上層部への稟議がオリジナル作品よりも通りやすく、出版社と連携した大規模展開をできる点も大きな要因だろう。
事実、原作に忠実なキャスティングと演出で評価された『DEATH NOTE』『るろうに剣心』などはヒットを記録。福田監督も、映画『銀魂』『HK 変態仮面』『斉木楠雄のΨ難』、ドラマ『勇者ヨシヒコシリーズ』、『アオイホノオ』などで高い評価を獲得。有名作品に福田流の“笑い”を織り込んで、女性ファンや子どもなど一般層の獲得にも成功している。
こうした点から、実写化成功を分ける要素として、コアファンを“満足”させる原作の忠実再現と、一般層を取り込む“笑い”が重要だと分かる。
ツッパリを美化せずギャグとして笑いに昇華「子どもはわからない位のものがいい」
本ドラマは、過去のヤンキーマンガのように、ツッパリを「カッコイイ」ものと美化せず、ギャグとして笑いに昇華。いわゆるイジリの笑いで見るものにカタルシスを感じさせている。また、昭和のツッパリ純情ヤンキー設定は、現代のデジタルネイティブ世代の子どもたちには目新しく、親世代には青春を懐古させる懐かしさの両輪で支持されている。
実際、SNSでは「親子で『今日から俺は!!』観てるから(主題歌の)『男の勲章』を息子がまるっと歌えるのが不思議な感じ」「『今日から俺は!!』流行ってきたなぁ〜。息子の小学校でも話題になりだしたらしく興味もって見始めた!親子で話し合うのうれしい!」など、ファミリー層で楽しんでいる傾向が見てとれる。
この点、過去の『勇者ヨシヒコシリーズ』、『銀魂』での成功例を踏襲しているようだ。ORICON NEWSのインタビューで福田監督は「家族と会話が生まれるドラマを」と述べ、福田監督流ヒットの法則を解説。「若い子たちが『なんじゃこりゃ』となって、いかに会話を生み出すかが大事。むしろ“分からない”くらいのものの方がいいんですよね。『勇者ヨシヒコ』が小学生にウケたのはそういうことだと思うんです」と分析。また、「笑えるだけだとダメなんですよね。笑えて格好いいものが作りたい、というのは完全に中二病(笑)」と、自身の作家性の根源に“中二病”の心があることを認めている。
連続ヒットはクセだらけの“福田演出”が国民的に認知された証拠
映画『銀魂』の神楽役で“鼻ホジ”を見せ話題をさらった橋本環奈は、今作ではキレると怖い早川京子役で大乱闘を演じたかと思えば、伊藤真司(伊藤健太郎)との大仰なラブラブシーンぶりで二面性を披露。ほかにも、著名俳優による変顔や白目などは、もはや通常運転。主人公・三橋を演じる賀来賢人は、福田組の常連だけに変顔だらけのぶっ飛び演技を毎回披露。7話では「うんこ」を連発する謎の歌まで軽快に歌い上げた。
さらに同作には“福田組アベンジャーズ”の如く小栗旬、島崎遥香、堤真一、浜辺美波、柳楽優弥、山崎賢人、山田孝之らがゲスト出演。こうした俳優陣が福田監督のムチャブリ演出をノリノリで演じているのも人気の理由だろう。本ドラマでムロツヨシは『3年B組金八先生』(TBS系)の金八先生をモチーフとした椋木先生を熱演。6話では同ドラマの登校場面を完コピし、SNSでは「ムロさんの金八先生完コピOPが素晴らし過ぎて困る」など絶賛の声が多数見られた。
一方で、黄金パターンは模倣され“経年劣化”していく懸念も
今後、ドラマ版『聖☆おにいさん』、映画版『ヲタクに恋は難しい』の監督も決まるなど、漫画・アニメ実写化の第一人者としても支持される福田監督。世代を超えたファンを獲得しつつ、一体感を強める福田組アベンジャーズとともに、どんな“新手法”を生み出すのか期待したい。