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“擬人化アニメ”極まれり? “細胞”を擬人化したアニメ『はたらく細胞』人気の理由
擬人化こそがアニメーションの根幹!? 古来から日本には“擬人化”を受け入れる風土が
そんな中、昨今のアニメブームにおける“擬人化”の起源は、2004年に備長炭を擬人化した『びんちょうタン』と言われている。その後、海洋生物を擬人化した『侵略!イカ娘』のヒット以降、鉄道、国家、ゲーム機など、多種多様な擬人化が一般化していく。
中でも『ヘタリア Axis Powers』(国)、『刀剣乱舞-ONLINE-』(刀の男子化)、『艦隊これくしょん -艦これ-』(艦艇の美少女化)、『けものフレンズ』(動物)などが人気を獲得。また、『ミラクル☆トレイン 〜中央線へようこそ〜』(中央線などの駅の男子化)、『MS少女』(モビルスーツの美少女化)、『俺タワー -Over Legend Endless Tower-』(建設機械・工具の美少女化)といった、かなりニッチな擬人化作品も。
そのほか、『文豪ストレイドッグス』では、太宰治や芥川龍之介といった文豪たちを、擬人化を超えた“別キャラ化”させた作品も。また人気の『Fate』シリーズでは、アーサー王、ヘラクレス、佐々木小次郎などが、性別を変えて“別キャラ化”して登場している。
しかし、本来口を利かない動物や物体との対話は、日本に限らず人類の妄想の産物として古くからあり、擬人化は世界的にアニメーションの根幹とも言える。まさにディズニーアニメの『ミッキーマウス』がその代表例で、動物が意思を持ち、会話をしている。実写では再現が難しいテーマを掲げることこそ、まさにアニメーションの魅力と言っても過言では無いだろう。
特に、日本が“擬人化大国”と言われるのは、古来より“八百万の神”と言うように、「森羅万象すべての物に魂が宿る」という多神教的な考えがあった。また、昨今の日本の擬人化作品は、日本特有の“萌え”文化がミックスされた「萌え擬人化作品」が多いのが特徴だ。
生きてるだけで聖地巡礼? 学術的に細胞のメカニズムを学べる点が人気の秘訣
7月からアニメ化され、『dアニメストア』が行った「今期何見てる?2018夏アニメ人気投票」で堂々の1位。「生きてるだけで聖地巡礼」「推しが体内にいる」と言うパワーワードがネットでも流行するほど。夏に開催された「コミックマーケット94」で、同アニメのコスプレイヤーが多かったことからも人気のほどが分かる。
人気の理由の一つとして、キャラクターたちが個性的で非常に魅力的な点にある。「赤血球」は明るくて可愛いが、おっちょこちょいな面もある美少女。彼女を助ける「白血球」は、「外部から体内に入ってきた異物の除去」を仕事として、「ばいばい菌だ」が決め台詞のクールなイケメン。さらに「血小板」は幼稚園児くらいの小さくて可愛らしい少女。「キラーT細胞」は癌細胞などの異物を破壊する攻撃的で威勢の良い“殺し屋”を担っている。ほかにも、悪玉菌、病原体、寄生虫として「肺炎球菌」「黄色ブドウ球菌」「スギ花粉」などが、典型的なモンスター型のキャラクターとして描かれている。
細胞のメカニズムや人体の仕組みを学ぶことができる“教育アニメ”として見ることもでき、勉強になるとネットで話題。「先週のを見ましたが、(テストに)まんま出ましたよ(笑)」「看護師歴30年の母親に見てもらいましたが、『とってもわかりやすいし、将来医療関係の職に就きたいなら見て損はしない』と言ってもらえました」と、実際に、看護学生などからの評価も高い。
そのほか、「『野菜食べないと赤血球ちゃんがいま困ってるよ』『キラーT細胞さんの力が出なくなるからお菓子ばかりはダメ』というと、野菜を食べるようになったりした」など子どものしつけにも役に立っている様子。
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『はたらく細胞』のウィキペディアを見てみると、およそアニメを紹介しているページとは思えず、まるで医学用語の解説のようなページになっており、学術的にも正しい考証と裏付けがあることがうかがえる。
現在、ある種、飽和状態にある“擬人化アニメ”界ではあるが、まだまだ新しい可能性は残されており、おそらく今後も驚きの設定や新基軸の擬人化アニメが作られるだろう。次にヒットする擬人化の対象が何になるのか気になるところだ。