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「ダサい」までもがポジティブに? 時代とともに変化する言葉

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    ”ダサかっこいい”『U.S.A.』でブレイク中のDA PUMP・ISSA

 ダンスヴォーカルグループ・DA PUMPのニューシングル「U.S.A.」が大ブレイクしているが、そのキーワードが「ダサい」だ。本来、ネガティブな意味で使われるはずだが、同曲を評して「ダサかっこいい」、「計算され尽くしたダサさ」、もしくは枕詞的にダサいの前に“いい意味で”をつけるなど、ポジティブな意味で活用されている。時代の変化とともに、本来の言葉の意味とは異なる形で使用される風潮を嘆く声もあるが、「ヤバい」のように定着する言葉もある。今回は、ネガティブな意味で広まったものの、ポジティブに変化した言葉の変遷をたどってみたい。

70年代に誕生した“ダサい” 大衆性を象徴する言葉としてポジティブ表現に変換

 そもそも“ダサい”は1970年ころから若者の間に広まった俗語で、「恰好悪い」、「野暮ったい」、「垢抜けない」などの意味を持つ。80年代初頭にタモリが埼玉県民をからかう意味で「ダサい」と「埼玉」を掛け合わせ、「ダ埼玉」との造語を生み出したことをきっかけに一般化。さらに対義語として「ナウい」などの言葉も派生した。当時の「ナウい」は「今どきの」、「おしゃれ」という意味に近く、今ふうに言うと「イケてる」だろうか。最先端を行っていたはずのこの言葉は、当時の時代の象徴とはなったが、“死語”となって消えていった。仮に今「ナウい」を使えば、それはもう真逆の「古臭い」という意味に近くなるだろう。

 さて肝心の“ダサい”だが、実は、エンタメにおいて“ダサい”がヒットに結びついた例は意外に多い。「U.S.A.」を当初から「ハロプロ系、つんく♂の楽曲と同じ匂いがする」と評していたのはハロプロ系のファンだった。たしかにモーニング娘。などのハロプロ系の楽曲には独特の古臭さ、気恥ずかしさがあったが、その“ダサさ”がなければ、あれほど大衆には響かなかったとも言える。

 ハードロックやヘヴィメタルの世界にも独特の男臭さ、オタク臭があるが、その独特の“様式美”があればこそ「アニメタル」などの派生形も生まれたし、メタルとアイドルの融合「BABYMETAL」も、その延長線上にあるのは明らか。

 アイドルにしても、冷静に考えれば“ダサい”グループ名や楽曲なども相当数にあるが、それを自身のものに変換し、人気が出ればもはや違和感はなくなる。つまり、「ダサい」にはベタなものの象徴として大衆性があるわけで、ヒットする立派な要因ともなるのである。

他の言葉と組み合わせ、新しい表現として“転生”

 こうした“元”ネガティブワードの「ダサい」に並ぶ2大巨頭のもうひとつが、「ヤバい」だ。これも元々は「危ない」、「危険が迫っている」という意味だが、90年代後半からは「超越している」、「とても」的な強調語としても使われはじめ、肯定の意味として広がっていった。「オタク(ヲタク)」にしても、今では「ある種の知識に精通している」としてリスペクトの対象に使われたりする。「キモい」も、なにかを超越している人やものに使うことがおおく、ほぼ「すごい」の同義語となりつつある。

 最近では、ネガティブワードを他の言葉と合体させて使用することで、新しい表現の武器となることもおおいにある。今回のように、“ダサかっこいい”など形容詞の枕詞的に使うことによって、重層的な深みのある表現に変換することもでき、汎用性が高いことから使い勝手のいい言葉として重宝されているのだ。「キモかわいい」などもそうだろう。

ポジティブワードは時代を象徴しすぎて経年劣化!? 後世まで残りやすいのは“元”ネガティブワード

 若者たちはキャッチ―で使い勝手のいい言葉を仲間内で使うわけだが、SNSなどによって拡散され、やがて一般化していく。しかし、「ナウい」などのその当時の“最先端”の言葉は、時代を象徴しすぎていて経年劣化を起こし、すぐに時代遅れとなってしまうので再利用されにくい。むしろ普遍性のあるネガティブワードのほうがかえって使いやすく、意外性もあっておもしろがられるのかもしれない。

 言葉というのは時代や使う対象が変化すれば、それと同時に変化していくもの。今では相手を罵倒する際に使われる「貴様」も、相手を敬う漢字が使用されているように、もともとは身分の高い人に使う尊敬語だった。「新しい」や「だらしない」も、「あらたしい」「しだらない」という言葉の音節順序を入れ替えたもので、「ザギンでシースー」的な業界用語のノリから来ている。

 また、直近の流行語の「半端ない」も、本来は「(○○が)半端じゃない」というように対象を前に示さなければならないが、この言葉自体が「すごい」を意味するものとして“独り立ち”しているのだ。

 とは言え、何でもかんでも変えればいいものでもないだろうが、時代の経過とともに意味が揺らぎ、新しく更新されていく言葉の変化を楽しむのもまた一興だ。肩の力を抜いて、“ダサい”の着地点がどうなるのか、見守りたいところである。

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