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“北関東芸人”の需要拡大 洗練された“関東芸人”と異なる利点とは?

  • 茨城県出身のお笑いコンビ・カミナリ(C)ORICON NewS inc.

    茨城県出身のお笑いコンビ・カミナリ(C)ORICON NewS inc.

 『2017タレント番組出演本数ランキング』(ニホンモニター調べ)で、ANZEN漫才、みやぞん、ブルゾンちえみらを抑えて「2017ブレイクタレント」のグランプリに輝いたお笑いコンビ・カミナリ。前年わずか5番組のみの出演だったのが、235番組へと大きく増加した。彼らの“ウリ”と言えば、地元・茨城の方言を活かした漫才やトーク。同じく方言を持ち味にして人気を得たコンビには、栃木県出身のU字工事がおり、テレビではしばしば彼らを“北関東芸人”としてくくることがある。とんねるず、さまぁ〜ず、おぎやはぎに代表されるような“関東芸人”とは異なる“北関東芸人”の魅力とはどこにあるのだろうか?

カミナリは週に16本のメディア出演 “北関東芸人”の高い需要

 現在のカミナリの活躍ぶりを図るデータとして、5月19日〜25日の一週間で地上波・地方局・ネットテレビ・ラジオの出演情報を調べたところ、計16本もの番組に出演していた。特に5月19日(土)は、21:00から『bpm』(AbemaTV)、21:54から『輝きYELL!』(日本テレビ系)、22:10から『有田Pおもてなす』(NHK総合)、23:10は『さんまのお笑い向上委員会』(フジテレビ系)と、夜はまさに出ずっぱり状態。地方のとちぎテレビでは『カミナリのチャリ旅!』という初冠番組も持っている。

 同じ“北関東芸人”のU字工事は、準レギュラーだった『いきなり!黄金伝説。』(テレビ朝日系)が終了したものの、堅調に露出を続けている。『陸海空 こんな時間に地球征服するなんて』(テレビ朝日系)の出演のほか、『とちぎ発!旅好き!』、『U字工事の産地直送!ふれあいマーケット』(以上、とちぎテレビ)と、特に地元では安定した需要があるようだ。

「関東vs関西」の構図しかなかったお笑いシーン

 しかし、今でこそ“北関東芸人”という言葉を聞くようになったが、これまでのお笑い界は、とんねるずなどに代表される「関東芸人」と、ダウンタウンなどに代表される「関西芸人」の構図しかなかった。イメージ的にも、「関東芸人=どこか洗練されている」、「関西芸人=アクが強い」といった対比で捉えられ、ウッチャンナンチャンはそれぞれ熊本、香川出身と関西よりだったにも関わらず、しゃべりや見た目のイメージから「関東芸人」にカテゴライズされ“都会派コント”と評されていた。

 また、関西の芸人は東京でも大阪弁を貫き通していたものの、基本的に地方出身の芸人は、東京ではあえて“なまり”を封印して標準語で話していた。その潮目が変わったのが、『M‐1グランプリ』(テレビ朝日系)以降のお笑いブームだろう。タカアンドトシ(北海道)、サンドウィッチマン(宮城)、スリムクラブ(沖縄)など、地方の実力派芸人たちが全国から登場。また、吉本興業が全国47都道府県に「住みます芸人」を居住させ、お笑いによる地域活性化を推し進めてきた。それにより、笑いのスタイルも多様化し、方言も“笑いの武器“として受け入れられるようになった。

「方言」を武器にした千鳥のブレイクからも顕著 親しみやすさを与える効果も

 そうした流れをくんでブレイクした代表格と言えるのが岡山県出身の千鳥。「○○じゃ」に代表される岡山弁は、本人たちのネタにもあるように「クセが強い」ものの、隣県の広島弁に比べると、とげとげしさもマイルドになり、親しみやすさを感じさせる。だが、当初はなまりを抑えていたとのことで、ツッコミのノブは、2018年4月21日放送の『オードリーのオールナイトニッポン』に出演した際に、「いま、東京での俺ら見てみい、大(おお)方言よ!」と語っており、方言がブレイクへの重要な武器だったことを明かしている。

 カミナリもまた、千鳥と同じような境遇を歩んでいる。以前、自らの漫才スタイルの変遷を語ったインタビューで、当初は標準語でコントをするなど、「自分たちが普段使わない言葉」で舞台に立っていたと明かしている。だがその後、先輩芸人のアドバイスなどもあり「地元の友達を笑わせるような素朴なネタ」を作ることに転換。現在は、茨城弁でトークしつつ、最後にツッコミの石田たくみが、ボケの竹内まなぶの頭を強くひっぱたき、「おめえ、そう言えば○○だな!」とどやす、おなじみのスタイルが確立されている。

 関東芸人が使う「標準語」は、ともすれば気取った感じの印象を受けたり、嫌味っぽく聞こえることがある。一方で、北関東芸人たちが使う地元の方言には、視聴者に純朴なイメージを与えるとともに、強烈なツッコミさえも嫌悪させない“中和力”を持っている。もちろん、テレビ露出を増やしていけるのは、方言を笑いに昇華させる彼らの実力が背景にあるからこそだ。今後、北関東芸人のほかに、新たな“地域芸人”が現れ、バラエティを席巻するのを期待して待っていたい。

(文:五目舎)

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