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アイドルとモノマネが生む相乗効果、衝動的な批判が奪う可能性とは?
アイドルのモノマネは諸刃の剣、だが相乗効果を生むことも
だが過去には、モノマネされたことがアイドル自身の人気の広がりや、長期化に繋がった例もある。遡れば、1975年に実力派アイドルとしてデビューし、ヒットを連発した岩崎宏美のモノマネが挙げられる。80年代にコロッケが「シンデレラハネムーン」のモノマネをやりだしたため、本人のコンサートでこの曲のイントロが流れると笑いが起きるようになったと言うが、のちに「若い人たちに岩崎宏美という名前を繋げてくださって、すごく感謝しています」と、テレビ番組内でコロッケ本人に話していた。故・前田健やはるな愛の松浦亜弥、おかもとまりの広末涼子、友近の中森明菜…などのモノマネも、同様な相乗効果を生んでいる。これらの例からもわかるとおり、たとえアイドル自身の活動が落ち着いたとしても、媒介者たるモノマネタレントが芸を披露し続けるからこそ、世間からその存在は忘れられることなく、長く語り継がれていくことになるのだ。
SNSの直接攻撃によりさらに加熱、衝動的な批判は両者の可能性を奪う
SNS時代の今、一般人も芸人を直接攻撃できるだけに、感情的な批判は影響力を増し、それがネットニュースになるなど騒動は過熱しやすい。結果、モノマネによりアイドルの魅力を間接的に伝える機会が失われることはもちろん、モノマネ芸のハイライトでもある“本人との共演”が当人の感情とは別の忖度からNGになれば、アイドルと芸人双方の可能性と相乗効果を奪うことにもなりかねない。そう考えると、ファンとしての想いからであっても、衝動的な芸人の批判はアイドルにもプラスにならないだろう。
アイドルとしてステップアップするには、幅広い年代や層の人々に認知されることと、人気を長く持続させることが重要。芸人にモノマネのネタにされるのも、アイドルの普及になっていると考えればマイナスではない。エンタテインメントにはシリアスでストレートな表現もあれば、笑いを誘うために捻ったデフォルメもある。人を楽しませることには変わりないと、どちらの“芸”も寛容に見守り、ウイン・ウインの相乗効果に期待するのも、ひとつの応援の仕方だ。
(文・斉藤貴志)