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【生田斗真インタビュー】トランスジェンダーの芝居で怒られる? 「久々にしごかれました」

 映画『彼らが本気で編むときは、』で、初のトランスジェンダーの女性を演じた生田斗真。昨今、アクション作品への出演が多かった生田だけに、今作は彼にとっても大きな挑戦となった。役者として着実に歩みを進める生田は、どのようにしてこの難しい役柄と向き合ったのだろうか。日本映画の新たな地平を拓く荻上直子監督からは、「久々にしごかれた」という。彼の役者としての成長も語った。

「以前のイメージがチラついたら負け」、挑戦的な作品に

――映画『彼らが本気で編むときは、』で、トランスジェンダーの女性・リンコ役に挑戦した生田斗真さん。オリジナルの脚本も書き上げた荻上直子監督から「他には考えられない」と、熱いラブコールを受けての出演だそうですね。
生田斗真 監督から「出てくれませんか」という熱い想いをぶつけられて、俳優として素直に嬉しいです。即答で「出させていただきます!」と答えました。

――『土竜の唄』シリーズ(2014年・2016年)や、『予告犯』(2015年)、『秘密 THE TOP SECRET』(2016年)など、近年はハードなアクションを披露する男っぽい役柄が続いていましたが、それとは真逆のキャラクターを演じる戸惑いは?
生田斗真 それは少しありましたね。これまでガンガンにアクションをしてきましたし、役柄の上では人も殺してきました(笑)。ですから、この作品を観ていただいた方の中に少しでも以前の僕のイメージがチラついたら負けだなと思って。そういう意味では、かなりチャレンジングな仕事だと、想いを強くしました。

トランスジェンダー役に葛藤、女性の仕草を学ぶ

――体は男性でも心は女性として生まれてきたリンコは、性別適合手術をして、今では外見も女性として生きている。演じる上で、女性になりきることは難しくありませんでしたか?
生田斗真 まず、衣装にメイク、ヘアスタイルとかを、監督やスタッフのみなさんといろいろ試しながら作っていきました。最初は長い髪を考えていたのが、セミロングに落ち着いて。メイクも濃い目を考えていたけど、スタッフさんから「ナチュラルなほうがいい」という意見が出た。あのリンコさんは、スタッフさんたちの好みの女性像ですね(笑)。僕自身、女性の扮装をしていろいろわかったこともあります。まず、口紅って大変ですよね。なにげなくペットボトルで水を飲んでも、飲み口にべっとりと付いてしまう。そうなると、また塗り直さなければいけない。爪もそう。僕は台本をガンガンめくってサクサク読みたいんだけど、長い爪ではそれもできない。女性がいわゆる“女の子っぽい仕草”になるのも、理にかなっているんだなと思いました。

――リンコの所作がおしとやかで美しく、見入ってしまいました。声のトーンも自然でしたが?
生田斗真 声は、監督から「やや高めで、きれいな声で」と言われたので、それを意識しました。あとは、所作や作法などの専門の方に現場で教えていただきましたね。その方の所作が、どちらかというと古風とうか、昔の奥ゆかしい女性の動きなので、そういう優雅な感じがリンコさんらしいなと思っていました。

考えたのは、社会を変えることではなく「“普通”ってなに?」

――参考にした映画やドラマなどは?
生田斗真 歌舞伎の女形とか、いろいろ観ました。海外作品では映画『トランスアメリカ』(2005年)や『リリーのすべて』(2016年)とか。ただ海外作品は、娼婦とか特殊なキャラクターが多くて、リンコさんの役作りにはちょっとそぐわない。でも、男性が女性を演じるのがいかに難しいかということは、思い知りました。

――トランスジェンダーの方ともお会いになったそうですが?
生田斗真 僕の友人にもトランスジェンダーの人がいるので、彼女たちに話を聞いたんです。そこで、劇中でも描かれている、リンコさんが少年の頃に味わった辛い経験は、現実にあるということも知りました。学ランを着なきゃいけないとか、男子用の水着を着て胸を出すことが恥ずかしくて死ぬほど嫌だったとか……。そんな様々な試練がある中で、一番大事なのは身近にいるご両親が理解してくれるかどうかなんですよね。それによって、大きく違ってくるんです。リンコさんの場合は、お母さんが「あなた、女の子だもんね」と理解をしてくれる。トランスジェンダーの方から見たら、すごく羨ましい環境なんです。お母さん、ステキですよね。

――こういう作品によって、多くの人々の意識が少しでも変わればいいですね。
生田斗真 そうですね。とはいっても、そもそも監督も僕も「社会を変えて行こうよ!」というよりは、「“普通”ってなに?」ということを考えたんです。男性と女性が愛し合うことが“普通”と言われているけれど、それは大多数がそうだから“普通”と言われているだけだという。そういういろんな境目が少しでも緩和されればいいなという気持ちで、この映画を作ったつもりです。監督もおっしゃっていましたけど、差別とか区別とかという意識は、海外に比べると日本はまだ低いですよね。

――そういう日本にあって、リンコを心から愛して一緒に暮らしているパートナーのマキオ(桐谷健太)の存在は貴重ですよね。
生田斗真 ほんと、イイ男ですよね。彼の、「リンコさんのような人を好きになると、男でも女でもどうでもよくなるんだよ」というセリフがありますけど、とても人間的で魅力的な人だなと思いました。ダメなところも、可愛いところもあっていいですよね。聞くところによると、監督がご自分の旦那さんをイメージしてマキオさんのキャラクターを書いたらしいです。ということは、監督の理想の男性ということじゃないかなぁ(笑)。

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