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良質な“パロディ”がドラマの新トレンドに
パロディ、オマージュシーンで盛り上がった前期ドラマ
また、TOKIO松岡昌宏主演『家政夫のミタゾノ』は、タイトルそのものが松嶋菜々子主演『家政婦のミタ』(日本テレビ系)のパロディ。しかしその内容はと言うと、“深夜のパロディドラマ”という大方の予想に反して、家族をテーマにしっかりと作り込まれたオリジナルドラマになっており、『家政婦のミタ』、その元ネタの『家政婦は見た!』(テレビ朝日系)に勝るとも劣らない評価を得ていた。
「とくに前期は顕著でしたね。例えば、唐沢寿明と窪田正孝出演の『THE LAST COP/ラストコップ』(日本テレビ系)では、同局系の『ごくせん』『地獄先生ぬ〜べ〜』『臨床犯罪学者 火村英生の推理』などをパロディ化。また織田裕二主演『IQ246〜華麗なる事件簿〜』(TBS系)でも、第1話で、織田主演ドラマ『振り返れば奴がいる』(1993年/フジテレビ系)で共演した石黒賢がゲスト出演した際の、土屋太鳳演じる和藤奏子のセリフ「振り返っても奴はいない」は話題を集めました。そのほか、今期に目を向けても、草なぎ剛主演『スペシャリスト』(テレビ朝日系)第1話では、ラーメン屋のシーンで、ガツガツと餃子を食べる戸田恵梨香主演『SPEC〜警視庁公安部公安第五課 未詳事件特別対策係事件簿』(2010年〜/TBS系)の主人公・当麻(戸田)らしき人物の見切れシーンが。昨年は年間を通してパロディ、オマージュシーンを盛り込んだ作品が多数あり、“昨年のトレンド”と言ってもよい流れになっていると思います」(エンタメ誌ライター)
パロディ要素の“お茶の間”化は朝ドラ『あまちゃん』から
2012年に放送された『リーガルハイ』では、第2話に某国民的アイドルの大物プロデューサー兼作詞家がモデルと思われる作詞家・葛西(鶴見辰吾)が登場したほか、第5話ではフィクサー的な大物政治家(江守徹)の汚職事件について言及したり、第9、10話では大企業による土地汚染問題を扱うなど、時事ネタを揶揄したような表現も。分かりやすいところでは第7話で、市川崑監督の名作映画『金田一耕助』シリーズのパロディもあり、じわじわとドラマ本編におけるパロディを一般に浸透させていった。
また、その翌年に放送された『あまちゃん』も、過去のアイドルソングのオマージュや現在の“アイドルあるある”だけでなく、NHK大河ドラマ『龍馬伝』(2010年)や朝ドラ『純と愛』(2012年)、ヒット映画『桐島、部活やめるってよ』(2012年)、クドカンが脚本を務めた『マンハッタンラブストーリー』(2003年/TBS系)など、元ネタを挙げていけば切りがないほどパロディが普通にストーリーに盛り込まれ、視聴者はこれらの小ネタ探しに熱狂。朝ドラということもあって、年齢やマス、コアなどの垣根もなく、日本中が元ネタを知っている喜びを見出し、共有し、当時を懐かしがった。そうした楽しみ方が作品の大きな魅力のひとつになり、放送が終わったことを寂しく思う“あまロス”という流行語まで生んでいた。
かつては“下”に見られたパロディ。今では制作陣に抵抗はない
また、パロディ作品と言えば、欧米のドラマや映画が有名だが、一方で日本にも短歌の“本歌取り”という、“古来の短歌の一部を残したまま、いかに本歌を連想させて歌に膨らみをもたせるか”という技法が存在している。パロディやオマージュ作品が作られる土壌は日本にそもそもあり、前出のライターも「日本ならではのパロディ作品の発展」に期待を寄せる。
かつてのパロディにB級感がまとわりついていた時代とは異なり、今やテレビドラマ界では、作品にそれを入れ込むことに制作陣も抵抗がないように見受けられる。これは単なる“流行”か、それとも未来へとつながる“新たな潮流”となるのか。ここ最近のヒット作を見ると、いかに“パクリ”と呼ばれてしまうようないやらしさがなく、さりげなくおもしろいパロディを入れるかが、ヒットを生み出す要素のひとつになっていることがうかがえる。
(文:衣輪晋一)