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水野美紀、完全復活のきざし “残念な女”ポジションを確立?

 2016年も多くの芸能人が活躍をしたが、なかでも急先鋒と言えるのが女優の水野美紀。主演を努めた『逃げる女』(NHK総合)のほか、『家族ノカタチ』(TBS系)『ラヴソング』(フジテレビ系)『みかんの花』(テレビ東京系)『黒い十人の女』(日本テレビ系)『勇者ヨシヒコと導かれし七人』(テレビ東京系・第4話)など今年は数多くの作品に出演。とくに『黒い十人の女』で演じた妙齢の残念な女役は、水野にピッタリのハマり役、新たなポジションを確立した、とも話題になった。水野と言えば、一時期表舞台から遠ざかっていた印象もあるが、今年再びメインストリームに舞い戻ってきたように感じられる。

清純派イメージを打ち破った映画『恋の罪』で再び注目

 水野美紀は1974年香川生まれの42歳。父の友人の道場で少林寺拳法を学ぶなど活発な少女で、1987年、中学1年生の時に『第2回 東鳩オールレーズンプリンセスコンテスト』で準優勝したことをきっかけに芸能活動を開始。特撮戦隊ドラマ『地球戦隊ファイブマン』(テレビ朝日系)の第39話「愛を下さい」でデビューを果たし、その身体能力を活かしてオリジナルビデオ『くの一忍法帖』にも出演。少しずつ知名度を上げていった。

 そんななか彼女を一躍有名にしたのは、1992年に放送された『コーセー ルシェリ』CM。俳優の唐沢寿明との共演で、彼女から彼氏に積極的に迫る「チューして」は、誰しもの記憶に残る名ゼリフになった。その後、数多くの作品に出演をするようになり、1997年、織田裕二の大ヒットドラマ『踊る大捜査線』(フジテレビ系)で物語に欠かせない存在・柏木雪乃の役を得る。これで大ブレイクを果たし、やがてアクションの能力を生かしてウッチャンナンチャンの内村光良主演の『恋人はスナイパー』(テレビ朝日系)にも出演。映画化もされるなど、人気は不動のものと思われたが、2007年に演劇ユニット『プロペラ犬』を作家・楠野一郎と共同主催した頃から、徐々に活躍の場を舞台にシフトしていった。
「舞台を中心に活躍していたほか、諸般の事情もあってテレビや映画から遠ざかっていた彼女が映像の仕事で再び話題となったのが園子温監督の映画『恋の罪』(2011年)。1997年に渋谷区で発生した東電OL殺人事件を元ネタにした衝撃作で、これまで清純派のイメージが強かった水野さんがヘアヌードになり、激しい濡れ場を演じたことでも注目を集めました。この体当たりの芝居を皮切りに、自身の代表作である『踊る〜』のシリーズ最終話となる映画『踊る大捜査線THE FINAL 新たなる希望』(2012年)のラストシーンでの復帰、2015年の木村拓哉主演ドラマ『アイムホーム』(テレビ朝日系)では、『ビューティフルライフ』(2000年)以来15年ぶりの木村さんとの共演を果たすなど立て続けに話題作に出演していったのです」(テレビ誌ライター)

優れた演技力に“おっさん”の素顔…水野に2回目のブレイクはあるか?

 やがて水野はバラエティ番組にも数多く出演するようになり、お茶の間に強いインパクトを与えていった。例えば2015年1月に放送された『爆報! THE フライデー』(TBS系)では、当時の趣味がイカ釣りだということを告白。特技のアクションを活かした痴漢撃退法を披露し、痴漢役を演じたアンガールズ田中をこっぴどく成敗したほか、同月放送の『行列のできる法律相談所』(日本テレビ系)では、彼女主催の舞台に出演したお笑いコンビ・東京ダイナマイトのハチミツ二郎に激怒したことを告白。演出にキスシーンを取り入れることを嘆願されたと明かし、スタジオは爆笑の渦に包まれた。

 そして2016年、水野は1年を通して多くのテレビドラマに出演。とくに、ちょっととぼけた雰囲気と残念感をかもし出した『黒い十人の女』の如野佳代役はハマり役で、最終話で見せたカフェオレを何度もぶっかけられて溺れそうになるという芝居はもはや伝説レベル。水野自身がSNSに投稿した「いいですか、人間は、水の中じゃなくても溺れそうになる事があります。カフェ・オ・レで」も大反響で、さらには「#(ハッシュタグ)黒い十人の女」の「#」をうっかり全角で打ってしまったことからタグ付けができておらず、ファンからツッコミを受けるという彼女らしい“おまけ”付き。ネットを中心に水野を「この人、おもしろくて好き」との声はますます広がっている。
「もともとアクションもこなせる女優としてその演技力には定評がありましたが、故・蜷川幸雄さんの舞台に出演した2009年以降、セリフがなくても表情や背中で心情を示し、強烈な雰囲気をかもし出せるなど、業界内での彼女の演技の評価は改めて高まっていきました。そんなお芝居に対して真摯で、向き合い方も体育会系、さらには男勝りで気が強いといった印象もある水野さんですが、エッセイ『私の中のおっさん』も出版しており、『新橋の高架下にいると落ち着く』『行きつけの立ち飲み屋にはノーメイクにジャージ姿で行く』など、クスッと笑える素顔も明かしています。女優として実力があり、紆余曲折の苦しみを味わった上での愛すべき“おっさん”の一面もある彼女が、コメディ劇『黒い十人の女』でハマり役を演じられたのも納得。水を得た魚のように喜々として立ち回る姿に、彼女を呪縛していたとされる“美人女優”の枠組みからのいい意味での脱却を完全に果たしたと感じる関係者の声も多く聞かれます」(同ライター)

 確かな演技力とアクション女優としても活躍できる身体能力、人間的な魅力、さらにコメディエンヌとしての評価も得た今、彼女は、来期の倉科カナ、三浦翔平主演の連続ドラマ『奪い合い、冬』(テレビ朝日系)で自身初の完全なヒール役・森山蘭を演じる。長い女優人生のなかで、さまざまな経験を積み、多くの苦楽を味わい、自身を呪縛から解き放ってきた水野美紀が、猛烈に嫉妬の炎を燃やす妻役をどう演じてくれるのか。彼女は芸能界で生き残るのに必須と言われる“2回目のブレイク”の機会を今まさに迎えている。
(文:衣輪晋一)

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