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イケメン俳優同士のラブシーンが増える背景

最近、邦画で目立っているのがイケメン俳優同士の“ラブシーン”。『MARS〜ただ、君を愛している〜』では、Kis‐My‐Ft2の藤ヶ谷太輔と窪田正孝のキスシーン、『怒り』では妻夫木聡と綾野剛のベッドシーン、『無伴奏』の斎藤工と池松壮亮のラブシーン、『ライチ☆光クラブ』の古川雄輝と間宮祥太朗の濃厚なキスシーン……。これらの作品はすべて今年に上映されたものだけに、このイケメン俳優同士のラブシーンは、ちょっとしたトレンドであると言ってもいいだろう。果たして、その背景には何があるのだろうか?

“深読みさせる”から“直接的なラブシーン”に

 各作品の“ラブシーン”を解説すると、『MARS』では藤ヶ谷を巡って、過去に心の傷を持つモデルの飯豊まりえと窪田が争うという“三角関係”で、失神した藤ヶ谷を抱き寄せた窪田が藤ヶ谷の顎を優しくつまんで、飯豊はじめ公衆の面前でキス……という展開。『怒り』は、バリバリのゲイである妻夫木が、ノンケっぽい綾野に馬乗りになり豪快にキス→行為後、優しく後ろから抱きしめるという流れ。ちなみに、ふたりは役作りのために一緒に暮らしたり、制作発表でもイチャイチャする親密ぶりを見せていた。
『無伴奏』は1969年、学生運動時代の仙台という設定で、斎藤と池松は親友であり、それぞれに彼女もいながら禁断の関係に……という青春期の倒錯っぽい流れ。『ライチ』は設定自体が、中学2年生の秘密結社的な「光クラブ」という妖しいグループのなかで、上位の立場の古川に間宮が従う感じで“服従のキス”……。男に向かう思春期の性がエグく描かれる。
  • 古川雄輝と間宮祥太朗のキスシーンも『ライチ☆光クラブ』(C)2016「ライチ☆光クラブ」製作委員会

    古川雄輝と間宮祥太朗のキスシーンも『ライチ☆光クラブ』(C)2016「ライチ☆光クラブ」製作委員会

「確かに最近はイケメン同士のラブシーンが多いので、ちょっとした流行のように思いますが、実はコレ、ずいぶん前からある戦略です。男同士の熱い絆や屈折した関係というのは、BL(ボーイズ・ラブ)好きの腐女子にとっては、その関係性のなかに“愛”があることを深読みしてキュンキュンしたくなるシロモノなんです。2014年に日本で公開された韓国映画『新しき世界』は、モロにヤクザ映画だったのが、兄弟分との熱すぎる絆をBL好きに深読みされ、異例の6ヶ月ほどのロングランとなりました。ただそれが、これまでは“深読みさせる描き方”が多かったのが、そこから一歩踏み込んで、もっと直接的にラブシーンを入れ込むという方向に変わってきました。しかも人気のイケメン俳優を起用して。そこには、数字を取るという狙いが背景にあると思われます」(ドラマ制作会社スタッフ)

時代によって変動しながらも脈々と受け継がれていく男色描写

 実際、“妻夫木聡と綾野剛がラブラブ!?”となれば、腐女子でなくても興味をそそられるだろうし、話題にもなる。これまでも、伊藤英明の裸のシーンがやたら出てきたり、斎藤工が“セクシー俳優”と呼ばれて脱ぎまくるなど、ファンや女性へのサービスシーンとしての“男のエロス”はあった。しかしいまや腐女子層に加えて、イケメン好きの一般女性をも“萌え”させて、劇場に足を運ばせたり、テレビの前に座らせる戦略として、男同士のラブシーンはより進化(深化)しているようなのだ。

「そんな作品はこれまでにもあって、邦画でいうと激しいバイオレンスのなかの男同士の関係を描いた『GONIN』(1995年)などが知られていますが、先駆けは1987年に公開されたイギリス映画『モーリス』だと思います。20世紀初頭の同性愛が禁じられたイギリスを舞台に、ケンブリッジ大学内の男性恋愛をあくまで“美しく”描いた本作は、シネスイッチ銀座での単館上映だったにも関わらず、若い女性たちに支持されて異例のロングラン上映を記録しています。このあたりから、“女性が男性同士の恋愛関係を見て楽しむ”という文化が一般化してきたんじゃないかと思います」(前出・スタッフ)

 思えば日本では、戦国武将たちが男同士の絆を確かめあう手段でもあり、武家社会の主従関係の価値観も合わさっていたとされる“衆道”と呼ばれた男色は、決して特別な世界ではなく、一般的であった。そして、今も昔もそんな男同士のラブシーンは、女性客を呼ぶためのひとつの表現手法として機能しているのだ。それが昨今では、ライトなBLが一般層にも受け入れられるようになっていく流れのなかで、その表現もよりオープンになり、今旬の人気イケメン俳優らを起用したメジャー作品のなかでも描かれるようになってきている。男性にとっても、こうした見慣れた俳優たちが演じることで“生々しさ”がなくなり、お芝居として抵抗感なく見ることができるようだ。

 ただ、その一方で、昨今の“男同士のラブシーン”をトピックにした宣伝文句には若干、飽和状態気味の感も出始めている。作品数や内容の過激具合などが時代によって変動しながらも、こうした表現が今後も脈々と受け継がれていくことは間違いないだろう。ただし、当然のことだが、そこには常に時代に即した新しさやアイディアが求められている。

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