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山下智久ライブレポート “茨の道”を選び10年、ソロの王道アイドルを目指して
30代のアイドルは、自分を磨いてダイヤモンドのように
大袈裟に聞こえるかもしれないが、山下智久というアイドルを何か美しいものにたとえるなら、花とか星とか太陽とか、動物とか架空の生物というより、宝石が一番ふさわしい気がする。それも、ルビーとかエメラルドとかサファイヤのような色のついた石ではなく、無色透明なダイヤモンド。彼のソロコンサートに足を運んだのは久しぶりだが、MCにしても演出にしても、前回の印象より数段洗練され、歌やダンスのスキルもアップしていたことにまず驚かされた。
新たなサプライズに、「抱いてセニョリータ」などヒット曲も満載
ダンサーの一人が、「山Pは楽屋でもずっと筋トレしてる」と話していたけれど、たしかにその肉体のフォルムも、動きのしなやかさも、日に日に進化していっているのがわかる。ソロは、自分との戦いだ。グループのように、役割分担があるわけではないから、ライブ中は一切休むことはできない。不得意なものを、メンバーに任せることもできない。頼ることもできない。でも、逆に言えばこのコンサートでは、ソロでしかできないことに溢れていた。結局、カッコイイところも、カワイイところも、ただただ美しいところも、スリリングなところも、ストイックなところも、お茶目なところも、やんちゃなところも、全部出し尽くしてこその山下智久なのだ。
グループではなくソロで……山下が志す王道アイドルの道
彼が、どんなにトロッコに乗って会場を回っても、ファンと次々にハイタッチを交わしても、どこか寂しそうな孤高の存在に見えるのは、たぶんそのストイックさゆえだ。彼が好きな音楽は、応援ソングよりもラブソングで、健全さよりも大人っぽさや妖しさや切なさを、共有しようとしているのではないだろうか。
ジャニーズ事務所に入所して20周年、ソロデビュー10周年の節目となる今年、MCの後にジャニーズJr.時代の映像が流れ、『8時だJ』(98年〜99年、テレビ朝日系で放送のバラエティ番組)などでJr.たちに歌い継がれた「Can do! Can go!」を当時の振り付けそのままに披露した。10代のときも、20代のときも、31歳になった今も、彼は特別に美しい生命体であり続ける。グループとしての仲の良さよりも、絆よりも、ただ個が持つ輝きを多面的に見せていくという意味で、彼は必死で、ソロとして王道のアイドルのあり方を守り続けているのかもしれない。集団で進化するよりも、個人で進化する方がずっとずっと難しいはず。でも、31歳の山下智久は、誰にとっても“観てよかった”と思える充実のステージを提示していた。
(文/菊地陽子)