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番宣なしが好感?フジテレビの良心『ヨルタモリ』
タモリ看板番組からバランスよく“いいとこどり”
また、この番組では、『笑っていいとも!』の「テレフォンショッキング」ような、トーク番組の一面も持っている。タモリは向かって右側、ゲストはその左側に座り、フリートークでゲストの人となりにゆるやかに切り込んでいくという形も「テレフォンショッキング」と一緒。『いいとも』と違うのは、ゲストのトークを盛り上げるのがタモリひとりではなく、ママである宮沢りえ、常連客である能町みね子やミュージシャンたちも加わっているということである。
「テレフォンショッキング」には、決まった台本がなかったというが、この番組のトーク部分にも、とくにかっちりと決まった段取りは少なく、そのゆるい空気が、逆に、加山雄三、井上陽水、秋元康、松本幸四郎、甲本ヒロト、篠山紀信などの出演自体が驚きの大御所ゲストたちの本音を引き出すのに役立っているように思う。また、りえママを前にしながら、夜番組ならではの下ネタがけっこうな頻度で飛び交うのも、オヤジ世代からは喝采を浴びていることだろう。
架空キャラクターとして出演する現実とも虚構ともつかない世界
合間に流れるタモリのひとりコントも、回を追うごとにシリーズ化されて広がりをもったり、深くなっていったりと、じわじわとそのおもしろさに拍車がかかってきているように思う。ときには、くだらなさのなかに現代社会をチクリと揶揄するメッセージをひそませるところにも味がある。まさにタモリならではのおもしろさが、自由で伸び伸びとした空気感のなかでいかんなく発揮されている。
“番宣”ゼロをなしえるタモリの人柄とスタッフの気概
しかし、『ヨルタモリ』では、豪華ゲストが出演しながらも“番宣”をいっさいしない。昨今唯一といってもいいかもしれない、その番組のあり方、視聴者への姿勢は、タモリの人柄と番組スタッフの気概がなしえているのだろうか。そこも番組のよさのひとつとして視聴者に伝わっていることは間違いないだろう。なにかと批判を受けることもあるフジテレビだが、同番組の現場にはテレビマンの気概がしっかりと根付いていることが伝わってくる。それは視聴者からも好感を持って受け止められている。
番組の放送は日曜の深夜。翌日から1週間がスタートするOLやサラリーマンからすると、憂鬱なひとときだが、そんな気持ちをこの番組の“虚構感”が忘れさせ、癒しているのではないかとも思える。現在のところ、視聴率は6%〜9%台で上がったり下がったりしているが、往年のテレビファンを魅了している同番組は、テレビ好きにとっての“良心”として、歴史に名を残していくのではないだろうか。大げさかもしれないが、視聴者もきっとそう願っているはずだ。