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染谷将太インタビュー『伝えたかったことの再確認と再発見ができた』

前編に続き、圧倒的なスケール感で人間の善悪について描く映画『寄生獣 完結編』。さまざまなパラサイトと出会い、成長していく主人公・泉新一を見事に演じ切った染谷将太に、2部作となる大作の5ヶ月におよぶ撮影現場に身を置いて感じたこと、俳優として新たに得たもの、完結編に込めた想いを聞いた。

いま実写映画化することで生まれる新しさ

――いよいよ4月25日に封切られる『寄生獣 完結編』。前作から物語が大きくうねるなか、新一がパラサイトの田宮涼子(深津絵里)と最後に対峙する動物園でのシーンでは、前作からの関係性の変化に、不思議な感慨を覚えました。
染谷もともと感情を持たない田宮という生き物が、人間についていろいろなことを研究し、考えていくなかで、情報や知識から作り上げた感情を持ち始める。その最中で田宮自身が変わり、新一との接し方も変わっていく。そんな変化のグラデーションを、深津さんが見事に演じられていたので、動物園でパッと対峙したときに「あれ? 今まで見たことのない田宮だ!」って思えたんです。そのことにすごく感動しました。あのときの深津さんは、何かこう、人間以上に人間らしさみたいなものを放っていました。

――田宮が放っていたものとは、山崎貴監督の掲げる本作のテーマのひとつ“母なるもの”だったのかも知れません。人間の真似をして田宮が笑うシーンは、どうご覧になりましたか?
染谷微妙なズレ感といい、なんとも言えない気持ち悪さもあるんですけど、どこか切なさもあって。自分は孤独な笑いに感じました。同時に、20年前のマンガが原作ではありますが、いま実写映画にすることで生まれる新しさも感じましたね。
―― 一方、ずっと新一を心配し続ける、幼なじみの里美(橋本愛)に対しては“母性”のようなものを感じていましたか?
染谷完結編において、新一と関わる唯一の人間である里美は、新一に人間の愛を与えてくれる存在だと思っていました。里美の愛に気づかされることが、新一には多々あって。里美とのやりとりのなかで、新一の揺れ動いている心が徐々に温まって、ほぐれていく。人間から教わることは里美が、パラサイトから教わることは田宮が教えてくれた、そんな印象です。人間として当たり前のことを、当たり前に気づかせてくれるのが、里美という存在でした。

――里美役の橋本愛さんとのお芝居はいかがでしたか?
染谷自分は基本的に受け身(の芝居)だったのですが、愛ちゃんが必死に向かってきてくれたので、一生懸命ぶつかってきてくださったものを素直に受け止めることができました。最後の方で、新一が人間を代表してひと言申す、みたいなセリフがあるんですけど、そこへつながっていったと思っています。

まだまだ自分の知らない世界がある

――新一と里美のラブシーンも印象的ですが、屋上でのラストシーンも非常に美しかったです。里美のセリフをどう受け止めましたか?
染谷ラストシーンの撮影のときは、とてつもない安堵感に襲われていました。とても温かいシーンだったので、あのセリフも言葉のまま、それ以上でも以下でもない感じがしました。監督には、人としての温かみみたいなことをたくさん演出されました。すべてがもと通りには戻っていないけれども、もともと以上の何かを手に入れるシーンだったので、そういう感情の変化みたいなものを引き出してもらった気がします。実際の撮影は、最終日ではなかったんですけどね(苦笑)。1週間近い(クライマックスの後藤(浅野忠信)との闘いの)撮影の末、オールアップだったんです。(その撮影も)すごく思い出深いです。
――最強のパラサイト・後藤に、新一がいたぶられる姿には、ヒリヒリするような痛みを感じました。今回、本格的にアクションに取り組まれて、どんなことを感じましたか?
染谷後藤は手強かったですね(苦笑)。セリフのお芝居にたどり着くまでに、たくさんのアクションを重ねて、やられまくって、ぼろぼろになって、やっと最後にセリフを交わして……。大変だったという印象が今でも強く残っています。今回、ここまで本格的に、しかもCGの絡むアクションは初めての試みで……がんばりました(笑)。動きや見せ方ひとつでアクションの意味が変わってくるし、役の見え方も変わる。悔しさだったり、つらさであったり、そういう感情がアクションで表現できるということをすごく感じました。

――先ほどお話いただいた、20年前の原作マンガをいま実写化する新しさについては、後藤との闘いの舞台がゴミ捨て場から焼却炉になっていたり、冒頭でパラサイトが空からではなく海から登場するなど、映画独自の設定からも、原作の持つ深遠なテーマに加えて、現代社会が抱えるさまざまな問題についての示唆を感じます。完成作をどうご覧になりましたか?
染谷台本を読んだときにも、撮影中にも(本作が抱える)たくさんのテーマにひっかかっていました。でも最後に(ひっかかりが)全部、きれいになくなったんです。完結編を観て、すごく美しいなと思いました。で、感動しました。エンタテインメントとして楽しむなかで、人の命、生命のようなものが、言葉だけではなく、熱量として腑に落ちたところがありました。いろいろな矛盾もあるけど、それさえも美しいと思えましたし、あぁ人間って美しいなと。個人的にはすごく主観的になっていたので、出来上がったものを観て、改めて客観的にこの映画が伝えたかったことの再確認と再発見ができたと思います。
――約5ヶ月もの長い時間、主人公の人生を背負い続ける貴重な体験を経て、役者として会得したことは何ですか?
染谷こんなに自分の思い描いていた想像を遥かに超えた、自分の予想とは全然違う感動を得られた作品は、初めてでした。台本を読んだときも、お芝居をしている間も「オレたちはそれでも生きていくんだよ!」っていう、ちょっと泥くさい感覚だったんですけど、完成したものを観たとき、それまでとは逆のクリーンな気持ちになっていました。「こんなハッピーエンドがあるんだ!」って、とてもラクな気分になれたというのか。今まで味わったことのない感覚に、まだまだ自分の知らない世界があるんだなって思いました。

――今後も『ストレイヤーズ・クロニクル』(6月27日)『映画 みんな! エスパーだよ!』(9月)『バクマン。』(10月3日)『先生と迷い猫』(今秋)『ディアーディアー』(15年)など、公開待機映画が目白押しです。出演作はどのように決めているのですか?
染谷感覚的なものですが、新しいものでも、知っているものでも、知らないものでも、すべてにおいて、おもしろい可能性を感じるものが好きなんです。
文:石村加奈/撮り下ろし写真:逢坂 聡
ヘアメイク:AMANO/スタイリスト:小橋淳子

寄生獣 完結編

 右手に寄生生物ミギーを宿す高校生・泉新一(染谷将太)の住む東福山市は、市長・広川(北村一輝)を中心に組織化されたパラサイト達が、一大ネットワークを作り上げていた。人間側が、寄生生物全滅を図る特殊部隊を結成し、アジトと化した東福山市庁舎に奇襲を仕掛けようとしていた頃、人間との共存を模索するパラサイト田宮良子(深津絵里)は、新一とミギーの存在に可能性を見出したが、新一は、母親を殺された事件がきっかけで寄生生物への憎悪を募らせていた……。

監督:山崎貴
出演:染谷将太 深津絵里 阿部サダヲ 橋本愛 新井浩文
2015年4月25日公開
(C)2015 映画「寄生獣」製作委員会
【公式サイト】(外部サイト)

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