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芸人作家が増える理由 専業作家を脅かす存在に?

映画監督として注目される芸人はこれまでにも多くいるが、ここ最近では、小説家、脚本家などストーリーテラーとしての芸人作家が脚光を浴びるケースが増えてきている。その勢いは今や、ある面では専業の脚本家や小説家を脅かす存在にもなりつつある。

◆ピース又吉は文学小説、バカリズムは連ドラ脚本…

  • 『火花』で文芸誌デビューするピース・又吉直樹

    『火花』で文芸誌デビューするピース・又吉直樹

  • ピース又吉の『火花』が掲載された『文学界』2月号

    ピース又吉の『火花』が掲載された『文学界』2月号

 芸人が書いた本で最も売れたのは、累計225万部を記録した麒麟・田村裕の『ホームレス中学生』だが、その後も数々の芸人が本を出版し続けている。

 田村の『ホームレス中学生』以降は、品川祐の『漫才ギャング』や、千原ジュニアの『14歳』など、自身の特別な経験を綴った自叙伝的な作品が多かったが、劇団ひとりの『陰日向に咲く』『青天の霹靂』、インパルス板倉の『トリガー』『蟻地獄』、アンジャッシュ渡部の『エスケープ』、爆笑問題・太田光の『マボロシの鳥』『文明の子』など、自叙伝的な作品にとどまらず、さまざまなジャンルの小説に挑戦する芸人も現れるようになった。

 そして今年1月7日には、文藝春秋の発行する文学誌『文学界』で、ピースの又吉直樹が小説『火花』を発表。こちらは又吉の経験をベースにした私小説風の作品ではあるが、純文学のジャンルで作品を発表したことで話題になった。その結果、又吉の小説を掲載した『文学界』2月号は、発売2日目に創刊以来となる初の増刷を決定し、計4万部を発行することとなった。

 このほか、昨年秋には、関西テレビ、フジテレビ系の木曜10時の連続ドラマ『素敵な選TAXI』の脚本をバカリズムが担当したことでも話題に。全10話の平均視聴率も10.0%と好成績を残した。バカリズムは『素敵な選TAXI』を執筆するまでにも、OLになりすましてブログを綴り、それを『架空OL日記』として出版したこともある。

◆なぜ芸人がプロ顔負けの物語を発表できるのか

  • 連続ドラマ『素敵な選TAXI』(フジテレビ系)の脚本を手がけたバカリズム

    連続ドラマ『素敵な選TAXI』(フジテレビ系)の脚本を手がけたバカリズム

 芸人が小説を書いたり、脚本を書いたりということは、これまでは芸人という本業があるからこそできることで、話題先行と思われがちだった。しかし、劇団ひとり、又吉、バカリズムの域まで達すると、専業の脚本家や小説家を脅かす存在にもなってきているようだ。

 現に又吉の小説については「絶対賞をとる」と爆笑問題の太田光が絶賛しているほか、バカリズムの脚本も、一部ネットユーザーの間では「クドカンを(視聴率で)超えた」とも評された。しかし、芸人がプロも顔負けの物語を発表できるのはなぜなのだろうか。

 彼らに共通しているのは、自分のネタのためにコントを書くお笑いの作家でもあるということだ。コントといっても、単独ライブなどになると、3分、5分の短いネタではなく10分を超えるネタもある。10分もあれば、起承転結もあり壮大なドラマのような展開になることも多いし、単独ライブでは、短いコントの積み重ねで最終的にはひとつの舞台を見ていような構成になっている。さらにその内容は、ときに社会風刺を入れながら、現代の若者たちが共感しやすい見せ方や、おもしろさをどこに感じるのかを芸人なりの肌感覚で徹底的に研究し、彼らなりの表現方法でそれを伝えている。そんな芸人たちは、ストーリーを紡ぎだす力に長けているのだ。

 ドラマ(映像)脚本の書き手としても芸人が脚光を浴びてきているのには、これまでのものとは異なる斬新な発想の作品がシーンで求められてきていることがある。人気脚本家、有名作家の作品はもちろん注目され、需要もますます高まっているが、そんななかで今までの定石を打ち破るような脚本が求められている一面もある。

 今後も、新たなストーリーテラーとして発掘される芸人たちが増えていくことだろう。

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