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任天堂など大手企業からも熱い視線 知られざる“ゲーム実況”の世界

 ドワンゴ及びニワンゴが運営する『niconico』の巨大イベント「ニコニコ超会議」から派生したゲーム実況とゲーム大会のイベント「闘会議2015」が1月31日、2月1日に千葉・幕張メッセで行われる。イベント開催の背景にあるのが、ここ数年の「ゲーム実況」の盛り上がりだ。ゲーム実況はプレイヤーが話しながらゲームをプレイしている映像を、動画サイトに投稿したり、生配信したりするもので、プレイ画面のみで“顔出し”していないにも関わらず、カリスマ的人気を獲得する実況者も現れるなど、動画サイトでの一大ジャンルへと成長している。なぜ今、ゲーム実況が人気を集めているのだろうか。

ゲーム実況に影響を与えた『ゲームセンターCX』

 ゲーム実況が人気といっても、動画サイトにあまり親しみがない人はピンとこないかもしれない。そこで、まずはこれまでの動きを追っていきたい。日本におけるゲーム実況は、「ボーカロイド」同様、『niconico』ブームとともに成長してきた。だが、そのベースとなったのは、よゐこ・有野晋哉がトークしながらレトロゲームクリアに挑むテレビ番組『ゲームセンターCX』(2003年より放送)。実際、同番組の影響を公言している実況者は多く、“自分のゲームプレイを実況して視聴者に見てもらう”というスタイルがコンテンツとして成立する、ということが多くの人に知られるきっかけとなったことは間違いないだろう。

 「闘会議2015」広報担当者は「実況動画の投稿は、『niconico』のサービスがスタートして1、2年目の2008年頃にはすでにありました」と振り返る。2008年は今に続くカリスマ実況者が数多くデビューした時期で、当時すでに有名実況者も出始めており、ゲーム実況動画が再生回数上位にランクインすることも珍しくなくなっていた。さらに2011年より「ニコニコ生放送」を通してリアルタイムで実況ができるようになったことも勢いを加速させ、『ニコニコ超会議』に設けられた「超ゲーム実況」ステージは、数千人を集めるほどの盛況ぶりとなっている。

 そしてその盛り上がりは『niconico』内だけにとどまらなかった。ゲームソフトの動画の配信には原則として著作者の許諾が必要となるため、著作権フリーの自作ゲームの実況動画が人気を集めたが、後に実写映画化された『青鬼』など、動画のヒットをきっかけに商用展開されるソフトも登場。また、ゲーム実況ユニットでありながら、音楽制作ユニットとしても活動していた「M.S.S.Project」は、実況で人気を集めた後の2014年2月に発売した音楽アルバム『M.S.S.Phantom』がオリコン初登場TOP10入り(最高8位/累積1.7万枚)を果たすなど、CDセールスでもその人気ぶりを証明した。

実力よりもトーク力で人気 カリスマ実況者たち

  • 2013年の『ニコニコ超会議2』の超ゲームエリアの様子

    2013年の『ニコニコ超会議2』の超ゲームエリアの様子

 前出の「闘会議2015」広報担当者は、人気実況者の特徴として、「ゲームの実力よりもトーク力」を挙げ、「何時間ものプレイ動画を30分ずつに編集して毎日投稿される方もいますから、何気なく見始めて継続してハマってしまう方も多いようです。ラジオでトークを聴いている感覚なのかもしれませんね」と話す。また、『niconico』には画面上に流れるコメントで他者と感情を“共有”できるという特性があり、実況を楽しむファンは、おしゃべりに対してつっこみを入れたり、会話したりして、その面白さを多くの人と共有できる。そのためにも、どんなゲームであろうと魅力的に見せるトークスキルが必須なのだ。

 そのため、ファン層はゲーム好きはもちろん、普段ゲームをやらないようなライトな層も目立つという。イベントに女子高生のファンがつめかけるなど、アイドル的な人気を獲得する実況者も。確かに先日、ユーザーを招いて実施された「闘会議2015」の発表会見では、出演者が発表されるたびに女性ファンから歓声が上がっていた。逆に言えば、ゲーム実況を入り口としてゲーム人口自体が増える可能性もあるのだ。

任天堂は自社著作物の動画投稿を許諾

 最近では、ゲーム実況に可能性を感じた大手メーカー側が、正式にゲーム実況動画の配信を許諾する例も出てきた。任天堂は昨年5月にYouTube、12月からは『ニコニコ動画』において、不適切なものでなければ同社の著作物を用いた動画の投稿を許諾する旨を発表。さらに『niconico』が実施する、クリエイターの創作活動の支援や二次創作文化を推進する「クリエイター奨励プログラム」に登録し、対象タイトルを用いた動画を投稿、任天堂に許諾されれば、人気度等に応じて奨励金を受け取ることもできるようになった。

 今回初開催となる「闘会議2015」には、特別協賛の任天堂のほか、ソニー・コンピュータエンタテインメント、スクウェア・エニックス、バンダイナムコゲームスといった大手メーカー、さらにデジタル分野で勢いを伸ばしてきたガンホーやコロプラなど、多くの企業が参加。『niconico』ユーザーやゲームファン以外にはまだなじみが薄いジャンルかもしれないが、より幅広い層へと認知が広がることが予想される。ゲーム実況がゲーム業界全体を活性化させる起爆剤となるか、今回の「闘会議2015」が試金石となるだろう。

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