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大人にウケている『妖怪ウォッチ』 実はシュールでブラック?

すさまじいほどの社会現象となった『妖怪ウォッチ』の大躍進が止まらない。子どもたちだけではなく、大人までを巻き込んだムーブメントの裏にあるものとは!?

◆大人もどっぷりハマってしまうおもしろさ

 “街を歩けばジバニャンにあたる”というくらい、街中にキャラクターが溢れ、子どもたちは、都合が悪くなれば“妖怪のせい!”と言い放つ。企業はジャンルを問わずコラボし、コンビニにはお菓子からパスタ、パンやソーセージなど節操なく妖怪が憑依された商品が並ぶ。

 マクドナルドでは、コラボしたハッピーセットが通常の3倍に売り上げを伸ばし、毎年恒例だったピカチュウのカレンダーも妖怪ウォッチに鞍替え。値段が昨年よりも上がったにも関わらず、その人気はとどまるところを知らず、売り切れが続出しているという。先週末は、劇場公開された映画版も記録的なヒットスタートになったそう。

 我が家には小学校1年生の『妖怪ウォッチ』ドンピシャ世代の子どもがいるため、その感染力のすさまじさに驚くばかりだが、とりあえず親として観ておこうと思い、アニメを観始めたが最後……。実はこれが、大人もどっぷりハマってしまうおもしろさなのだ。

 基本的には『ドラえもん』のような普遍的でわかりやすい話なのだが、実はシュールでときにブラックさもある、明らかに大人向けの“ギリギリのパロディ”や小ネタが満載なのだ。まず番組開始早々、「3年Y組〜! ニャンパチ先生〜!」という、聞き覚えのあるフレーズが聞こえるではないか。その後、人気キャラクターのジバニャン(ちなみに自縛霊の猫である)がおかっぱで登場し、「ニャンですと〜!」とキメ台詞を叫ぶ。明らかに金八のアレである。

◆子ども向けアニメなのに…子どもを無視?

 さらに、“サザエさんの番組提供”とまったく同じ構図の場面が現れたり、『天空の城ラピュタ』のムスカの名言「目が〜目が〜!」を、人気キャラであるウィスパーが連呼する場面も。しかも、大ヒット中のエンディング曲であるDream5+ブリー隊長の「ダン・ダン ドゥビ・ズバー!」に関しては、お察しの通り、ひととき一世を風靡した「ビリーズブートキャンプ」のビリー隊長にそっくりなブリー隊長が登場。もはや、子どもたちにはビリーよりもブリーが元ネタのような存在感になっているのだ。極めつけは他のアニメではあまり、というか絶対に観ないアンパンマンそっくりのキャラクターが存在したりとやりたい放題。

 そこまでは子どもにわかったとしても、主人公のケータが“ジョジョ立ち”を披露したり、『アド街ック天国』のパネルをそっくりに再現したり、あの名作『孤独のグルメ』の完全パロディ『給食のグルメ』では、妖怪がまったく出てこずに、とにかくパロディを極めんとするという徹底ぶり。これには腹を抱えて笑わずにはいられなかった。もちろん、小学生の娘はポカーンと口を開けて何もわからない様子。子ども向けアニメなのに、子どもを完全に無視しているのだ。

 ちなみにジバニャンが大好きなアイドルはニャーKB。なんと、2015年のエンディング曲は本家のAKB48が担当。リアルニャーKBが誕生したのだ。これもパロディが生んだ奇跡。妖怪メダルがついた衣装にネコ耳というファッションで登場するニャーKBからは、子どももアイドルファンも目が放せない。

 こうしたてんこ盛りのネタの数々を見ていてひしひしと感じられるのは、このアニメの制作陣はきっと30〜40代が中心になっているのだろうということ。妖怪ウォッチを観る子どもたちの親の層とフィットしているからこそ作り出せるこのおもしろさ。子ども向けと思ってアニメを観たことがないという人は、一度観てみてはいかがだろうか。きっと気がつけば引き込まれているハズだ。
(文:吉田可奈)

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