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年間映画興行ランキング『邦画&洋画に共通するヒット作の傾向とは―』

2014年の映画興行ランキングTOP10が決定した。実に13年ぶりに興収250億円を超えた『アナと雪の女王』(日本歴代興行収入記録3位)のメガヒットのほか、『永遠の0』『STAND BY ME ドラえもん』『るろうに剣心』2部作などがシーンを牽引。しかし、後半にかけては厳しさが漂い、年間興行収入ではほぼ前年なみなる。映画ジャーナリストの大高宏雄氏が、2014年の映画シーンを総括し2015年の展望を綴る。
>> ランキング表はこちら(興行収入も)

年間興収はおおよそ2000億円前後 ほぼ前年なみ

 2014年の映画界は、『アナと雪の女王』の1年であったことは間違いないが、当然ながら、それだけということはない。多くの映画館が、『アナ雪』で助かったという。そうだろうと思う。何度も言ったが、まさに歌の力が、本作のメガヒットの大きな理由である。もちろん、王女の描かれ方に今日的な視点があった。詳述する余裕はないが、その新鮮な視点に、喜んだ人も多かっただろう。全くもって、このメガヒットは、日本人全般への凄まじいばかりの波及力の点において、映画のひとつの歴史を作ったのである。

 だが、視点を少し変えれば、『アナ雪』があったにも関わらず、年間の興行が大躍進とはいかなったことのほうが、映画界にとってはより重要である。深刻であると言ってもいい。全体の年間成績から、それは一目瞭然である。誇るべきは誇っていいが、『アナ雪』で浮かれてはいけない。

 2014年は、1年を通し、おおよその興収で2000億円前後あたりとみられる。12月の成績が、いまだわからない段階なので誤差は出るだろうが、前年から大きく飛躍しなかったことは確かだ。前年を大幅に上回っていた上半期までの興行成績が、夏興行の終わりごろから、どんどん失速していった。『アナ雪』などで大量に貯めた興収の“貯金”が、どんどん吐き出されていったのである。

 とは言いつつ、『アナ雪』に加えて、『永遠の0』と『STAND BY ME ドラえもん』が、前半から夏場あたりまでの興収増を引っ張ったことは確認しておきたい。これに、『るろうに剣心』の2部作を加えると、2014年の邦画と洋画のめぼしいヒット作の傾向がわかる。そのひとつの共通点として、CG映像などの進化が、興収を著しく膨らませているのが注目される。CG映像や各々描写の中身はすべて違うが、これまで見たことがないような多様な映像の連鎖が、観客の大きな支持につながっていることは特筆すべきだと思う。

軸は揺るがさず製作姿勢を変えつつある松竹の成功

 東宝の配給作品のように興収30億円以上ということはないが、松竹の配給作品が、年間を通して5本が10億円を超えたことにも触れておきたい。『ホットロード』(24億5000万円)、『超高速!参勤交代』(15億3000万円)、『小さいおうち』(14億円)などで、5本すべて松竹が中心になって製作した、同社の幹事会社作品だったことが、映画界全体にとって、とても重要だと思われる。

 松竹は、確実に企画のバリエーションが広がってきた。山田洋次監督の作品を中心に動いてきた同社の製作事情だが、その基本方針は維持しつつ、徐々に製作姿勢を変えつつあると言えようか。基本の軸は揺るがさず、製作の全体の動きとしては、若い層を視野に入れた企画の融通性が確立してきたということだろう。この流れは、同社創業120周年を迎える来年2015年でも期待ができそうだ。

 洋画は、『アナ雪』の公開時、映画館で大変な量の予告編が流れた『マレフィセント』が、『アナ雪』以外の洋画では図抜けた成績になったのが興味深い。これは、『アナ雪』効果であるのは間違いないが、予告編の重要性を改めて考えさせる。どの映画の上映のときに、どの映画の予告編を流すか。場当たり的ではない知恵を絞るべきであろう。これは、配給会社の力関係を超えて、映画館の側こそがアピールすべきであろうとも思う。

厳しい興行事情のなかでどのように花開かせるか

 さて、ひとつ大いに気になったことがある。万全の興行を誇ってきた東宝の配給作品の一部で、少し厳しさが出てきたことだ。とくに挙げたいのが、『春を背負って』と『舞妓はレディ』である。ともに10億円に届かなかった。東宝からすれば、10億円に届かない作品でも、5億円から10億円あたりを推移しているので、それほど危機感はないように感じられたが、私は違う。監督が大いにこだわりをもって製作する作品に、観客がついてこない感じがしてならないからである。

 これは、由々しき事態だと思う。監督のこだわりとは、映画の本質とも強いかかわりをもつ。何故、映画を作るのかという問いのひとつの回答が、そこにあるからである。そこに意味がなければ、映画にかかわる必要もなくなる人たちが多くいる。監督の作りたい作品を、この厳しい興行事情のなかで、どのように花開かせるか。ここが脆弱化すると、映画は随分とわびしいものになってしまう。映画を何故作るのかといった問いは、商業性のなかで、もっと煮詰めるべきではないのか。

 さて来年2015年は、とくに夏興行に話題の作品が集中するのが見ものである。『HERO』『進撃の巨人』『バケモノの子』などを、一挙に夏公開する東宝がとくに壮観だ。上述の監督のこだわりは、そのなかで、どのような成果となって現れるのだろうか。商業主義を否定しない私は、それとギリギリ闘う監督たちの意欲と挑戦を強烈に見たいのである。
(文:映画ジャーナリスト・大高宏雄)

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