中川翔子が子どもたちへ本気のメッセージ「大人の押し付けではない、傷ついた子どもが手に取れる本を」
今なら不登校は時間の 無駄ではないと言える
昔は単純に憧れのアニメの歌を歌いたいって思っていたんです。でも、今その夢が少し変化して、子どもたちに歌で夢や、いつか懐かしいと思えるような大切な思い出のなかに何か届けられたらいいなって変わってきたんです。歌を歌うことは変わらないんですけど、角度が変わったというか。子供たちが『しょこたーん』ってイベントに来てくれることがすごく嬉しいんです。そういう未来のある子どもたちがいじめられて命を落とすなんて世界になってほしくない。だから、そういう子どもたちのために、自分で経験したことや考えたことを少しでも言葉にして置いておきたいなと思いました。
インパクトのあるタイトルは ライブの口グセから
中川ライブをしていて、心から出る言葉なんです。つらいことがあったとしても生きてさえいれば、また出会えるかもしれないという意味で叫ぶんですけど、それは子どもたちに向けても同じ。いじめを受けていても、生きていれば、生き延びてさえいれば、心が震えるような『生きててよかった』という瞬間に出合える。そんな思いを込めました。
中川本にまとめるきっかけになったのは、NHKの『#8月31日の夜に。』(10代が「学校に行きたくない」「生きるのがつらい」という気持ちを吐き出し、共有できる場をめざす番組)に呼んでいただいたことでした。その番組やTwitterを通じて、10代の当事者の方たちと意見を交わしていくうちに、自分自身、ハッキリと言いたいことがあると気付いたんです。それは子どもたちへ『死なないでほしい』ということと、大人へ『いじめがないと思わないで』ということ。14、5歳だと、心に余裕もなく、学校がすべてなことが多いので、死なないで生き延びた先にいろんなものが待っているということが、なかなかわからないんですよね。
また、親や先生に『学校へ行きたくない』とSOSを出すことは、最終段階の可能性が高く、大人がきちんと対応しないと大変なことになってしまう。そういうことが自分の経験からわかっていたので、何かできることはないかとずっとモヤモヤしていて。SNSは発信しやすいし、目に届きやすいかもしれないけど、流れていってしまうので、紙の形で残したほうがいいと思って本にまとめました。いじめっていつの時代もなくならない普遍的な問題でもあるので、本棚とか図書室に置いてあれば、大人の押し付けじゃないかたちで、傷ついた子どもたちがそっと手に取れるかなと思ったのも、本にした理由ですね。
伝わりやすいよう 30ページほどマンガを描いた
中川子どもたちに寄り添うけど、決して大人の考えの押し付けにはならない。そのバランスが難しかったですね。あとは加害者を責めすぎないことに気をつけました。加害者への怒りに満ちた文章になると、変な構図になってしまう。言葉選びもものすごく慎重に考えて書きました。
それから、自分の経験は書くけれど、それはあくまで一例として載せる。自分自身の経験は20年も前の話なので。今のいじめについて当事者になってしまった人と対談もしました。悪口、陰口、スクールカーストなど昔から変わらないこともあれば、SNSによるものなど、いじめの多様化も感じました。
普段文章を読む習慣のない子でもマンガなら読みやすいかもしれないと思って、30ページくらいマンガも描きました。自分が表現しやすい形でもあるし、SNSだとなかなかできないことなので。実は、リリースイベントと重なって、すごく忙しいタイミングでの締め切りだったんですが、言いたいこと、書きたいことが定まっていたので、締め切りよりも早く書き上げました。あれも書かなきゃ、これも書かなきゃって、最初の想定よりだいぶページ数も増えました。
本当につらい思いをしている子やそのまわりの先生、お父さん、お母さんにも読んでほしいです。マンガの部分だけでもいいから読んで、何か少しでもプラスになればいいなと思っています。
『「死ぬんじゃねーぞ!!」いじめられている君はゼッタイ悪くない』
中川翔子 著
8月8日発売
(文藝春秋)
1,200円+税
中川翔子 著
8月8日発売
(文藝春秋)
1,200円+税