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ディズニー実写『アラジン』大ヒットの背景に「映画魔法の現代化」

『アラジン』(C)2019 Disney Enterprises, Inc. All Rights Reserved.

『アラジン』(C)2019 Disney Enterprises, Inc. All Rights Reserved.

 世界史に類を見ないエンタテインメント・ブランドであるディズニーは、これまでに何度も黄金期を迎えている。6月7日より日本公開され、映画動員ランキング5週連続1位。現在、興行収入85億円を突破し、100億円超えを射程に入れる実写版『アラジン』の破竹にして怒涛の勢いもまた、最新のゴールデンエイジを証明するものだろう。

■イノベーションと温故知新の双方向からブランド価値を編み上げていくディズニー

 ディズニーの歴史を振り返ってみると、アニメーション版『アラジン』が全米公開されたのが1992年。その前年にはアニメ版『美女と野獣』がロードショーされている。この『美女と野獣』はアニメとして初めて最優秀作品賞にノミネートされたエポックメイキングな一作だった(当時、アカデミー賞にはアニメ部門はなく、『美女と野獣』は実写映画と同等の位置づけでノミネーションされるという一大快挙を成し遂げた)。

『美女と野獣』は、それまでのアニメに対するイメージを世界的に覆した。子どもの付き添いで映画館を訪れた親たちも一緒に楽しめるというようなファミリームービーの域ではなく、大人の女性と男性がデートムービーとしてセレクトできる気品と奥深さがそこにはあった。実写映画と遜色がないどころか、実写では生まれようのないエレガンスと深遠が波打っていた。

 翌年の『アラジン』は、同じくロマンスが底辺にあるとはいえ、アニメというイメージの革新そのものだった『美女と野獣』に較べると、アニメ本来の原動力であり存在証明である活劇性に回帰した快作だった。ディズニーのすごさは、同じアプローチでブランドを補強・推進するのではなく、イノベーションと温故知新の双方向からブランドの価値を編み上げていくことにあるのだと、1990年代初頭に思い知らされた記憶がいまもまざまざとよみがえる。

これまでとこれからの変化を見据えた上での「現代性」が渦巻く

キャスト、スタッフが集結した『アラジン』USプレミア開催

キャスト、スタッフが集結した『アラジン』USプレミア開催

 あれから27年。大ヒット中の実写版『アラジン』に遭遇すると、大きく新たな発見がある。ディズニーは、時代の移り変わりと潮流を見極めて、コンテンツを練り上げ、投入している。その鍛錬を怠ってこなかったからこそ、21世紀のいまも、娯楽の最前線で疾走し、映画界を牽引してもいるのだ。

 まず結論を述べよう。実写版『アラジン』は、1992年のアニメ版『アラジン』の単なるリメイクではない。これは実写化ではなく「現代化」である。これまでの変化、これからの変化を見据えた上での「現代性」がここには渦巻いており、そのことに圧倒される。この要素は、かつての『アラジン』にはなかったものだ。そして、このファクターは、2019年の「いま」だからこそ、多くのひとびとに必要とされ、また受け入れられるものになっている。なによりも、そのことに感動する。

 ディズニーはここ数年、『シンデレラ』『美女と野獣』『ジャングル・ブック』など、かつての名作アニメの実写化プロジェクトを継続している。もちろん、その都度、21世紀にふさわしいかたちへの仕立直しはおこなわれている。だが、その必然性が、ここまでクリアに到達した例はなかったのではないか。

提供元: コンフィデンス

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