ディズニー実写『アラジン』大ヒットの背景に「映画魔法の現代化」
「ガール・ミーツ・ボーイ」として物語を反転させた鮮やかさ
映像をめぐる技術は、1992年に較べ、格段に進歩した。アニメーションでしか表現できなかったものも実写化できるようになった。それは魔法かもしれないし、映画というメディアは、出発点から進化にいたるすべてが魔法なのだと論じることも可能だ。実写『アラジン』はだから、魔法によって実現した作品ではある。だが、アラジン側からではなく、ジャスミン側から本作を捉えたとき、魔法の意味は変幻するだろう。
前述したようにジャスミンは特別「強い女性」として描かれているわけではない。おそらくはどんな女性にも、あらかじめ備わっているであろう、「現実」を見極める原初の力が、ジャスミンを通して表出されていると思った。
この映画における魔法とは、「ボーイ・ミーツ・ガール」と思われていた物語を「ガール・ミーツ・ボーイ」として反転させることである。その鮮やかさにこそ、2019年ならではの新しさがあり、それゆえに多くの観客に受け入れられているのではないだろうか。
(文/相田冬二)