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渡辺謙が語る世界の俳優業「日本人としてのアイデンティティを持って人生も含めて役に乗せる」

ハリウッド俳優にはなれない、なるつもりもない

――日本と海外の差をどこに感じますか?
渡辺謙映画館で予告編を観ても、画の違いがわかるじゃないですか。でもそれは単なる制作費の問題ではないような気がするんです。その辺の違いを学び取って、違うエッセンスが入ってくると、日本映画の枠がもっと広がっていくと思います。

――企画としてはどうですか? 日本はとくにメジャー作品では漫画実写化など似たような企画が多いように見えます。
渡辺謙基本的にリスクを避けたいんでしょうね。いいお話であれば、たとえば50代の恋愛ものでも観客は入ると思います。たしかにハリウッドでもそういう映画の数は多くはないけれど、それでもちゃんと作られている。もっと発想豊かに、実際の人生で起こることをドラマにできないかと思っているところはあります。

――ハリウッドでは、出演料を興行収入からの割合で受け取るスタイルのスターも多いと聞きます。
渡辺謙やはり映画会社としても、リスクを低くするために最初のギャランティを抑えて、バックエンドで回収するというのは1つの手法としてあります。それはとてもフェアだと思います。俳優側もヒットさせるためにプロモーションに励むし、撮影時の向き合い方も違う。ただ日本の映画界では、なかなか昔からの慣例を崩すのは難しい。契約の1つの形として、日本でもあっていいとは思っていますけど、簡単ではないですね。
――日本でも俳優組合が必要とする声もあります。
渡辺謙もちろん必要だと思います。ただ、アメリカでも悩ましいのは、組合でいろいろなことが保護されるのはいいんだけど、上層の10%とその他の90%がまったく違うレベルで組合に依存しているところ。また低予算の映画は、組合から外れておかないと撮影までこぎつけられない。でも労働環境は守られますから、それは必要なこと。組合にも功罪両方あると思います。

――今は自動翻訳も進化していますが、ハリウッドで活躍するためにはやはり語学力は必須でしょうか?
渡辺謙実はあまり関係ないんです。セリフはスクリプトが送られてくるし、ダイアローグ・コーチと次はこういう感じと相談して、それをトレーニングするだけの話なので。英語といっても基本はツールなんです。それよりも俳優としてのスキルの方がよっぽど重要。過酷な現場や、なかなか集中できないような環境でも常に良いポテンシャルを提供する、ということの方が大事です。

――世界を目指す後進へのアドバイスをお願いします。
渡辺謙なんでもいいからまず世界に出ればいい。行ってみたら足りないところも見えてくる。そうすると、日本で仕事をするにしても考え方が変わる。どんなツテをたどってでも行ってみることだと思います。

――渡辺さんは『ラストサムライ』が転機になったと思います。そこから海外志向が生まれたのでしょうか。
渡辺謙逆でしたね。むしろ日本の仕事をちゃんとやらないとダメだと感じました。たとえば、日本アカデミー賞をいただいたりすると、アメリカのエージェントがすごく喜びます。自国でしっかり評価されている俳優なんだと。外国の映画賞にノミネートされると日本の観客に喜んでもらえますが、その逆もあるんです。僕は常に日本人としてのアイデンティティを持って、僕の人生も含めて役に乗せていくことが僕の存在意義だと。僕のなかにあるベーシックな人生観は、今の僕が持っているものしか出せない。だから僕はハリウッド俳優にはなれないですし、なるつもりもないんだなあ。
(文/壬生智裕、撮り下ろし写真/逢坂聡、ヘアメイク/筒井智美(PSYCHE)、スタイリスト/馬場順子、衣装/BRUNELLO CUCINELLI)
渡辺謙(俳優)
PROFILE/わたなべ けん
1959年10月21日生まれ。新潟県出身。2004年、映画『ラストサムライ』で『第76回アカデミー賞』助演男優賞、『第61回ゴールデングローブ賞』助演男優賞にノミネート。2015年、『The King and I』で『第69回トニー賞』ミュージカル部門主演男優賞ノミネート、リバイバル作品賞を受賞。2019年、『王様と私』で英『ローレンス・オリヴィエ賞』ミュージカル主演男優賞にノミネート。世界で高い評価を受ける国際的俳優。2019年、ハリウッド映画『GODZILLA ゴジラ キング・オブ・モンスターズ』『名探偵ピカチュウ』に出演。

『ゴジラ キング・オブ・モンスターズ』

1954年に日本で誕生し、30作以上でさまざまな進化を続けてきた国民的IP『ゴジラ』。シリーズ累計動員数は日本国内だけで1億人を突破している。そんな日本が世界に誇る唯一無二のキャラクターが、2019年に生誕65周年を迎え、ハリウッド製作の世界最大級の超大作として再び日本上陸する。ゴジラ、モスラ、ラドン、キングギドラ、そして全人類。人智を超えた圧倒的な驚異との対峙。彼らが現れたとき、人類はどう立ち向かうのか。
【公式サイト】(外部サイト)
2019年5月31日(金)世界同時公開
(C)2019 Legendary and Warner Bros. Pictures. All Rights Reserved.

提供元: コンフィデンス

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