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渡辺謙が語る世界の俳優業「日本人としてのアイデンティティを持って人生も含めて役に乗せる」

ハリウッドは世界中の才能を吸い上げる場所

――昨今では、日本の若手俳優でもハリウッド進出を目指す人が増えています。
渡辺謙僕は“進出”という言葉を使わないほうがいいと思っているんだなあ。なんだか壁を作っているような気がするから。ハリウッドという場所は、世界中の才能を吸い上げてしまう、ブラックホールみたいなところがあって。それはアジアに関わらず、ヨーロッパでも南米でもそう。才能があって意欲がある人はみんな吸い上げられていくわけです。だから進出するというよりも、吸い込まれて、飛び込んでいくところだと思うんです。もちろん吸い込まれたまま消えてしまう人もいるし、そういうことも含めて冒険になりますね。

――ハリウッドに吸い込まれて見えてきたことはありますか?
渡辺謙おかげさまでそこそこ打率が良い作品に巡り合っていますので、そういう意味では楽しませてもらっています。ただ僕としては、ハリウッドでも日本でも場所がどこであれ、バランスといったことは考えていません。とにかく自分が興味を持ってやりたいと思った作品に取り組む。僕のなかでは垣根はありません。結果的に、今は日本と海外が6:4くらいですが、舞台も含めると全体では半々ぐらい。最終的に自然とバランスが取れていますね(笑)。
――昔から世界に打って出ようという意識はあったんですか?
渡辺謙まったくなかったですね。僕の世代では無理だと思っていましたから。たまたまそういう機運に恵まれて、僕が呼ばれたタイミングが良かったんだと思います。そのムーブメントは、刻一刻と変わっていく。僕が海外に出始めた頃から日本はちょっと下火になって、代わりに韓国や中国、南米の人たちがワッと行くようになっていきました。でもここ最近は、アジアに対する比重が変革しているように思います。意識してアジアの俳優を使うということではなく、アジアの俳優をキャスティングするのが普通になっている。やはり映画は社会を映す鏡みたいなところがありますから。それがキャスティングに反映されていると思います。

――海外志向を公言する日本の若手俳優にとっては、チャンスも増えていると。
渡辺謙もちろん口に出すのはいいことだけど、それよりもどんどん行けばいいと思うんですよ。俳優だけではなくて、監督や脚本家、撮影、照明、音響とかスタッフも海外に出て、世界標準のスキルを吸収して戻ってきてほしい。そういうことがないと、本当の意味での日本映画の底上げにはならない。もちろん今のままだって日本映画の良さはあるんだけど、テクノロジーが時代を変えていきますから、もっと外と交流をして、ノウハウを吸収してほしい。

提供元: コンフィデンス

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