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ムロツヨシ熱演『大恋愛』、ポップにサラッと描く最近の恋愛ドラマの逆へ

視聴者の繊細な感情に気を配り、恋愛プロセスを丁寧に描く『大恋愛〜僕を忘れる君と』(C)TBS

視聴者の繊細な感情に気を配り、恋愛プロセスを丁寧に描く『大恋愛〜僕を忘れる君と』(C)TBS

 戸田恵梨香×ムロツヨシによるドラマ『大恋愛〜僕を忘れる君と』が、その異色なカップリングの驚きを超えて王道ラブストーリーとして感動を呼んでいる。病をモチーフとしながらも“ある種のハッピーエンド”へと向かっていく今作の狙い、第2章からのドラマ後半の見どころをTBSの宮崎真佐子プロデューサーに聞いた。

ドラマチックなセリフもドラマの醍醐味の1つ

 ドラマ中盤となる第5話(11月9日)より新たな局面に突入し、戸田&ムロが演じる2人の恋愛の行方に注目が集まっている。

 今作は、ラブストーリーの名手・大石静氏の脚本によるオリジナルドラマ。若年性アルツハイマーを患う医師の北澤尚(戸田)と、彼女を支える元小説家・間宮真司(ムロ)の10年にわたる愛の軌跡が描かれる。放送前より大きな話題を呼んだのが、ムロの本格ラブストーリー初挑戦だ。このキャスティングの意図を聞いた。

「ムロさんと初めてご一緒したのは、ADをやっていたときのドラマ『空飛ぶ広報室』。同作でムロさんは、コミカルな役柄でしたが、あるシーンで見せた切ない表情がとても印象的で、いつかコメディではないドラマでお仕事したいと思っていました。とくに今作は病気というモチーフから暗くなりがちなので、ムロさんのどこか達観した明るさに委ねたいという思いがあり、今回はご縁があってムロさんに真司をやっていただけることになりました」

 脚本の大石氏もこの起用に賛成だったという。

「大石さんは役者さんの新境地を引き出すことにとてもやりがいを感じるとおっしゃっていて、ムロさんだけでなく、主人公・尚を演じる戸田さんのこれまでと異なる表情豊かな役柄も、尚の主治医役の松岡昌宏さんも今までにないクールな一面を見せるなど、意欲的なキャラクター設定をされています。それが役者さんたちの力量もあって、見事にハマったと感じています」

 ネットでは「ムロツヨシがイケメンに見えてきた」といった声が多く上がっている。それはムロの演技力もさることながら、独特なセリフ回しも功を奏しているようだ。

「あえてオールドファッションなセリフを多く採用しているんです。最近の恋愛ドラマはポップにサラッと描きがちで、そのぶんロマンチックなセリフもあまり出てきません。たしかに現代のリアルな恋愛を追求すれば、そうなると思うんです。恥ずかしくてこんなセリフ言えないよねって。だけど普通の会話では出ないような、ドラマチックなセリフが聞けるのもドラマの醍醐味の1つだと思っています」

 この秋、ドラマ『東京ラブストーリー』(91年/フジテレビ系)の再放送が若い世代にウケたのも、ドラマだからこそ成立するセリフが新鮮に映った面もあるのだろう。
「今作の反響でも『クサいセリフが逆にキュンキュンする』という声はしばしば見かけます」

裏テーマは“幸せの形は1つではない”

 一方、恋愛プロセスについては、現代の視聴者の感情を害さないことに細心の注意を払いながらプロットを組み立てていったという。

「2人の恋愛は、第1話で尚が真司を食事に誘ったことをきっかけに始まるのですが、『婚約者がいるのに違う男性を誘うなんて不誠実』という声が上がる懸念もありました。そこで、尚が決して浮ついた気持ちからではなく、真面目がゆえに真司を誘ったというプロセスを丁寧に描くことを心がけました。視聴者の感情はとても繊細で、恋愛ドラマにおいては応援したくなる2人でないと一気に心が離れてしまいます。制作陣一同そこは非常に気を配っていて、とくに辛辣な意見の多いSNSや掲示板のチェックは欠かせないです」

 さて、第5話の後半には2人の人生に大きな転機が訪れ、第6話(11月16日)から第2章に入る。後半のストーリーは、夫婦となった尚と真司を描いていく。家族となった2人が、どう病気と向き合いながら幸せな家庭を築いていくのかが見どころになる。現代の医学ではアルツハイマーは完治はしない。しかし決して悲劇的な結末にはしないという。

「今作には“幸せの形は1つではない”という裏テーマがあります。病状は進行していきますが、それよりも2人にとっての幸せは、かけがえのない相手とともに過ごせたこと。そんなある種のハッピーエンドで終われるように、後半ではより2人の日々を深みを持って描いていきます」
(文:児玉澄子)

提供元: コンフィデンス

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