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フジテレビ・大多亮氏、日独連ドラ合作で目論む世界展開への礎づくり「世界市場は連続ドラマ黄金時代」

 フジテレビがドイツのZDFエンタープライズとサッカービジネスを題材にした全10話の連続ドラマ『The Window』を共同製作する。総製作予算は20億円規模。日本史上初となる世界水準の連ドラ製作の狙いを、グローバル展開を視野に入れるフジテレビ・大多亮氏に聞いた。

1話2億円規模で共同製作 『ハウス・オブ・カード』サッカー版

 日本の放送局が1話2億円規模の連続ドラマ製作に乗り出すことはいまだかつてなかった。そんななか、フジテレビがドイツの公共放送局ZDFの子会社であるZDFエンタープライズ(ZDFE)と共同出資・製作することになった。

 その経緯を大多氏は、「『ドイツは最強のサッカー大国。『ハウス・オブ・カード』のサッカー版を作らないのはなぜ?』と、うちの国際番販チームがZDFEに尋ねたことがきっかけでした」と語る。

 このアイデアが出発点になり、アジアマーケットに関心を示していたZDFEとフジテレビが組み、連続ドラマ『三銃士』(英BBC)などヒット作を多く手がけるイギリスの脚本家ジェームス・スペイン氏が脚本、制作は英国とドイツの両国に拠点を置くブギー・エンターテインメントが担当する枠組みができていった。

 ドラマは、ロンドンを舞台に、巨額の契約金が結ばれるプレミアリーグのサッカー選手移籍市場「トランファー・ウィンドウ」を巡った愛憎劇が描かれる。かつて『東京ラブストーリー』など数々の人気ドラマを手がけてきた大多氏は、今回の題材に太鼓判を押す。

ドラマにとってもマーケットにとっても必要なことにこだわる

  • 大多亮氏/フジテレビジョン 常務取締役

    大多亮氏/フジテレビジョン 常務取締役

「今や世界最大の共通語でもあり、競技人口が増え続けているサッカーの世界は、いかにもその裏がありそうと想像できることが魅力的。連続ドラマとして深みがあるストーリーになると直感的に思いました。制作統括した『白い巨塔』(03年)を企画した当初、女性に支持されにくい男の権謀術数を描くドラマは数字が取れないと言われましたが、結果は視聴率30%以上。権力闘争の話だけに終わらせずに、家族や人間愛にまで掘り下げたからです。『The Window』も長く続くシリーズ展開を目指した脚本になることを期待しています」

 同作は、今まさに脚本開発が始まったところ。年内に全10話分の脚本を完成させ、来年からの撮影スタート。2019年中の完成を目指す。

 主な登場人物には、将来有望な17歳のサッカー選手とその家族、エージェント、クラブオーナー、ジャーナリストなどが挙げられているなか、そこに日本人の女性弁護士も並ぶ。その役は、これから行われるオーディションによって、日本人女優の起用が決まる。これらキャスティングについても大多氏は、グローバル市場でヒットさせることを第一に考えている。

「今回の座組によって、これまでやりたくてもできなかったハリウッド俳優も起用できます。でも、知名度の高さだけに目を向けずに、作品に誠実に向き合ってもらえる方にお願いしたい。また、日本人やアジア人を何人入れてほしいと言うつもりはありません。場合によっては、1人だけでもいいのかもしれません。ドラマにとってもマーケットにとっても必要なキャストであることに、とにかくこだわりたい」

切羽詰まってやっていかないと生き残れない

 一方、肝心の放送または配信先についてはまだ明かされていない。

「Netflixなのかお聞きしたいのだと思いますが(笑)、慌てずに良い条件、良い影響力を持っているところに決めたいと思っています。すでに世界中の放送局や配信事業者から引き合いがきているので、興味を持ってもらえていることは間違いない。日本での展開も放送枠を含めて現段階では決まっていませんが、フジテレビで放送することにはなるでしょう」

 Netflixが連続ドラマ『ハウス・オブ・カード 野望の階段』で世界的な成功を収めて以降、グローバルコンテンツ市場では“連続ドラマの黄金時代”と言われ、各国が世界水準の連続ドラマ製作に乗り出している。そこにようやく日本も仲間入りしようと、フジテレビが先陣を切った形になる。しかし、100億円規模の連続ドラマが作られることも珍しくないなかで、ドイツと共同出資する20億円規模の製作費は決して高額とは言えないが、国内の他テレビ局から見ると、思い切った経営判断になることだろう。

 大多氏は「本当に大丈夫か?と社内で言われることもあります」と前置きしながら、「でも、コンテンツ投資は当たるも八卦、当たらぬも八卦の世界。指をくわえて見ているだけではなく、リスクもとって、世界へ出ていくべきタイミングと判断しました」と振り返る。

「切羽詰まってやっていかないと生き残れないという気持ちもあります。国内テレビ放送の収益が頭打ちであることは誰しも思っていること。新しい収益はデジタル、グローバルにあると合言葉のように言われていますが、体現していかない限り、絵空事にしかなりません。今回はその具体策の1つだと思っています。これまでにも海外番販は他局も含めて積極的に展開していますが、出資をする共同製作はそれとはビジネスの規模、収益が違う。まずは、そこで勝負する、世界市場へ打って出るノウハウとルートを築かなければならない。今回はそのための第一歩でもあります。このチャレンジがどういう結果になろうが、諦めずに続けていきたいと考えています」
 フジテレビの社運を賭けたドラマとしても注目できる。
(文:長谷川朋子)

提供元: コンフィデンス

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