是枝裕和監督、パルムドール受賞からNo.1ヒットへ高まる期待
カンヌ7度目の常連監督が噛みしめる栄誉と責任
日本映画の受賞は、97年の『第50回カンヌ国際映画祭』での今村昌平監督の『うなぎ』以来21年ぶり。ここ数年、毎年のように招待され、カンヌ常連となっていた是枝監督だが、受賞スピーチでは「さすがに足が震えています。この場にいられることが本当に幸せです」と世界三大映画祭での最高賞受賞の栄誉と責任を噛みしめている様子が見られた。
これまでの作品でも、家族のあり方とその人間ドラマにフォーカスし、さまざまな角度から社会とのつながりを描いてきた是枝監督だが、今作は「この10年間考え続けてきたことを全部込めた」とする渾身作。年金と万引きでひっそりと生活する貧しい家族が、ある事件をきっかけにその絆を引き裂かれ、社会からの容赦ない批判の矢面に立たされながら、それぞれが抱える秘密と切なる願いが明らかになっていく物語。そんな家族の姿を通して、豊かな現代社会の隅に追いやられてしまっている人たち、そこに生じる社会のひずみ、生々しい人間の感情を映し出している。
米映画業界誌も太鼓判 メインストリーム映画へ
一方、興行収入で見ると、是枝監督のカンヌ選出作のなかで10億円を超えたのは、『そして父になる』(32.0億円/13年)『海街diary』(16.8億円/15年)の2本のみ。昨年の『第41回日本アカデミー賞』で最多6部門(作品賞、脚本賞、監督賞ほか)を受賞した『三度目の殺人』(17年)も14.6億円。是枝作品に限らず、昨今の日本映画シーンにおいては、漫画原作などのエンタテインメント大作以外の邦画実写で20億円を超える大ヒットは極めて少なくなっている。
しかし今作は、パルムドール受賞という大きな話題を巻き起こしたすぐあとの絶好のタイミングで公開される。米映画業界誌『Variety』は「チャーミングでもあり、胸が張り裂けるようなこのすばらしく巧みな作りの映画はアート系のファンだけでなく、メインストリームの観客の心も掴むだろう」と評していた。従来のファンに限らず幅広い層へのアプローチが予想される今作は、是枝作品No.1ヒットへの期待が高まる。
『万引き家族』
配給:ギャガ 【公式サイト】(外部サイト)
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