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【新年特集 BORDERLESS ASIA】刻々と状況が変化する中国市場、日本映画への追い風も

 いまや映画館スクリーン数が世界一の中国で、『君の名は。』をはじめとする日本アニメや漫画原作もの、『昼顔』などテレビドラマ発の映画が人気を得ている。その一方、制度上の問題から、日本映画の配給数は限られている。両国の架け橋となって活動を続ける日中映画祭実行委員会の理事長・耿忠氏に、日本映画の中国でのニーズ、刻々と変化するシーンの現状、この先の可能性を聞いた。

中国で人気が高い日本アニメ、若い世代を中心に根付くファン

「日本コンテンツは中国でも根強いファンが多くいます。最近は若い人の間では、とくにアニメの人気が高い。『君の名は。』は中国でもヒットし、新海誠監督の熱烈なファンも生まれました。実写映画では漫画原作ものに人気が集中しています。日本の作品はメッセージ性があり、情景も美しく、人物像が深く描かれていることが、人気の理由でしょう。日本語を勉強して、言葉を理解して楽しもうとするファンもいるほどです」と話すのは、日中映画祭実行委員会の理事長を務める耿忠氏だ。

 日本と中国を基軸にアジア各国で幅広い活動を続けている人物であり、日中それぞれの映画作品を両国で紹介する日中友好映画祭では総合プロデューサーを務め、市場展開まで見越して日々奔走している。耿忠氏が同映画祭に力を入れるのには理由がある。立ち上げた06年当時、中国では日本映画が一切上映されていなかった。90年から06年の16年間は、日中関係の悪化や海賊版問題などで両国のコンテンツ交流が途絶えてしまっていたのだ。
「やり方次第で対策はできます。大変なときこそ日中の文化交流は大事だと思い、関係各所に相談して回りました。そんなとき、最初に助けてくれたのが山田洋次監督でした。私の想いを伝えたら「応援します」と。多大な力添えをいただいたことで作品を集めることができ、06年6月に上海国際映画祭のなかで「日本映画週間」を初開催することができました。上海での反響が大変良かったため、同年11月に北京でも「日本映画週間」を企画し、そこで上映したオープニング『手紙』は、16年間の沈黙を破って中国で配給されました。その後、中国作品も日本で上映する機会を設けて交流の場を作っています」

 開催にあたっては、大手企業からの協賛も得て今日まで継続している。日中国交正常化45周年となる17年の6月に上海国際映画祭で実施された「日本映画週間」では、『昼顔』のチケットがわずか30秒で完売。出演者の上戸彩や斎藤工もゲスト参加し、注目を集めたという。

「中国でファン層が厚い古川雄輝さんをはじめ、最近は菅田将暉さんや山?賢人さんも人気です。そういった俳優の出演作や日本で話題になった作品は積極的に上映するようにしています。その先の配給が見込めるからです。実行委員メンバーの映画評論家や監督、プロデューサーの方々のご意見を聞きながら、選定しています」

映画館スクリーン数世界1位。海外作品配給年間50本の制限

 中国国内では昨今、シネコン式の映画館が各地で急激に増え、スクリーン数は5万ほどと言われている。その数は、16年には米国を抜いて世界1位に躍り出ており、3000スクリーンほどの日本とは比べ物にならない規模だ。また、年間の興行収入も15年に日本を抜き、1位のハリウッドとの差を縮めつつある。現在の中国では、興収1000億円を超える特大ヒットも生まれており、出演料が1作で15億円にも上る人気俳優もいる。

 そんな急成長を遂げる中国映画市場で、日本映画も大ヒットを狙いたいところだが、中国では外国映画の配給数が年間50本に制限されており、その道は狭き門になっている。現状、そのうち30本ほどをハリウッド作品が占め、残りの20本のなかでヨーロッパやアジアの作品が選ばれる。これまでの日本作品は、年間平均2〜3本ほどという。
「中国では海外作品輸入の窓口は一箇所に限られ、そこで国の許可を得ることが必須条件。さらに、海外作品を配給できるのは2社のみ。厳しい競争のなか、その配給の枠に入ることはとても大変ですが、中国の映画祭への出品作は優先的に配給されており、我々も実績を作っています。政治情勢が不安定ななかで、調整役として各所に根回ししながら、少しでも多くの作品が中国で展開できるように努めています」

 近年では、政治上の理由から映画やドラマ、音楽など韓国コンテンツが中国市場から締め出される事態が起きたことなどで、日本にとっては追い風が吹き、16年は11本の日本映画が中国で公開された。17年は国による日中映画共同制作協定が大筋合意まで進んだが、これが締結されれば、合作製作における各種手続等の円滑な進行が確保されることになり、政情的な不安が取り除かれるほか、合作は海外作品に含まれないため配給数の制限がなく、共同製作がより進みやすくなる。中国市場進出のチャンスが、これまでとは段違いに広がることは間違いないだろう。

 中国では、人気の日本のIPが高額で売れる話も多く聞かれる。日本映画界の進出が進めば、新たなIPのセールスなどそこへの好影響も期待される。状況が刻々と変化している中国市場への進出を視野に入れた動きは、今年より活発化しそうだ。
(文:長谷川朋子)

日中友好映画祭

 日中両国の政府、映画界、および民間の各日中友好団体と企業の支援のもと06年にスタート。以降、中国および日本にて毎年開催され、日中映画文化産業の交流を推進。日中映画界の交流ルートとしての重要な役割を担っている(日本ではパソナグループなどが支援)。
 17年は「北京・日本映画週間」「上海・日本映画週間」「福州・シルクロード国際映画祭 〜日本映画週間〜」「成都・日本映画週間」「東京×沖縄・中国映画週間」などを開催。
【公式サイト】(外部サイト)

提供元: コンフィデンス

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