【新年特集 BORDERLESS ASIA】刻々と状況が変化する中国市場、日本映画への追い風も
中国で人気が高い日本アニメ、若い世代を中心に根付くファン
日本と中国を基軸にアジア各国で幅広い活動を続けている人物であり、日中それぞれの映画作品を両国で紹介する日中友好映画祭では総合プロデューサーを務め、市場展開まで見越して日々奔走している。耿忠氏が同映画祭に力を入れるのには理由がある。立ち上げた06年当時、中国では日本映画が一切上映されていなかった。90年から06年の16年間は、日中関係の悪化や海賊版問題などで両国のコンテンツ交流が途絶えてしまっていたのだ。
開催にあたっては、大手企業からの協賛も得て今日まで継続している。日中国交正常化45周年となる17年の6月に上海国際映画祭で実施された「日本映画週間」では、『昼顔』のチケットがわずか30秒で完売。出演者の上戸彩や斎藤工もゲスト参加し、注目を集めたという。
「中国でファン層が厚い古川雄輝さんをはじめ、最近は菅田将暉さんや山ア賢人さんも人気です。そういった俳優の出演作や日本で話題になった作品は積極的に上映するようにしています。その先の配給が見込めるからです。実行委員メンバーの映画評論家や監督、プロデューサーの方々のご意見を聞きながら、選定しています」
映画館スクリーン数世界1位。海外作品配給年間50本の制限
そんな急成長を遂げる中国映画市場で、日本映画も大ヒットを狙いたいところだが、中国では外国映画の配給数が年間50本に制限されており、その道は狭き門になっている。現状、そのうち30本ほどをハリウッド作品が占め、残りの20本のなかでヨーロッパやアジアの作品が選ばれる。これまでの日本作品は、年間平均2〜3本ほどという。
近年では、政治上の理由から映画やドラマ、音楽など韓国コンテンツが中国市場から締め出される事態が起きたことなどで、日本にとっては追い風が吹き、16年は11本の日本映画が中国で公開された。17年は国による日中映画共同制作協定が大筋合意まで進んだが、これが締結されれば、合作製作における各種手続等の円滑な進行が確保されることになり、政情的な不安が取り除かれるほか、合作は海外作品に含まれないため配給数の制限がなく、共同製作がより進みやすくなる。中国市場進出のチャンスが、これまでとは段違いに広がることは間違いないだろう。
中国では、人気の日本のIPが高額で売れる話も多く聞かれる。日本映画界の進出が進めば、新たなIPのセールスなどそこへの好影響も期待される。状況が刻々と変化している中国市場への進出を視野に入れた動きは、今年より活発化しそうだ。
(文:長谷川朋子)
日中友好映画祭
17年は「北京・日本映画週間」「上海・日本映画週間」「福州・シルクロード国際映画祭 〜日本映画週間〜」「成都・日本映画週間」「東京×沖縄・中国映画週間」などを開催。
【公式サイト】(外部サイト)