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夏休み映画ランキングTOP10、ヒット作続くも伸び悩む 40〜50億円台生まれず

8月最後の週末が過ぎ、7〜8月公開の夏休み映画興行の結果が出そろった。ランキングの1〜5位は『パイレーツ・オブ・カリビアン/最後の海賊』『怪盗グルーのミニオン大脱走』『銀魂』『劇場版ポケットモンスター キミにきめた!』『メアリと魔女の花』。ハリウッド大作の実写とアニメが興収60億円台で1、2位となった。

今夏1位作品の興収は昨年より15億円下がった

 昨年の同TOP5(『シン・ゴジラ』『ファインディング・ドリー』『ONE PIECE FILM GOLD』『ペット』『アリス・イン・ワンダーランド/時間の旅』)と比較すると、今夏は1位作品の興収が15億円ほど下がったほか、40〜50億円台のヒットが生まれず、作品それぞれのヒット規模が小さくなった。

 これは今年に入ってからの邦画実写で現れている傾向と一致する。17年上半期TOP10作品を前年同期と比較すると、邦画実写の30億円台のヒットが昨年の3本から今年は0本とヒットボリュームが小さくなり、逆に洋画では昨年は0本だった40〜50億円台のヒットが今年は6本生まれ、中ヒット層が厚くなっていた。

邦画実写から洋画大作への観客の流れ

 この邦画実写苦戦の背景には、これまでの主に大作における原作主義のヒット方程式の疲弊や邦画製作における業界の構造的な問題などさまざまな要因が考えられるが、その1つとして挙げられるのが、映像をとりまく環境の変化に対する観客の意識の変化ではないだろうか。

 ここ最近でとくにNetflixやHulu、Amazonビデオ、dTVなどに代表されるネット配信サービスのオリジナルドラマや映画、バラエティといったスマホで楽しめる映像コンテンツが一気にシーンに増えている。それにより、ユーザーが楽しむエンタテインメントの選択肢が広がるとともに、YouTubeやSNSなどの無料動画を含めると可処分時間の奪い合いはよりいっそう熾烈を極めている。

 そんななかで、1800円を払って映画館に映画を観に行くことへの意識の変化が起こっていること、その価値のある作品の選別がシビアになっていることなどから、結果として邦画実写から洋画大作への流れが現れていると考えられる。

大ヒット減、中ヒット増。映画シーンは上向き傾向

 一方、上半期の実績を見ると、昨年のTOP10作品総興収719.7億円を今年は813.1億円と大きく上回っており(文化通信・上半期ランキングより)、大ヒット作こそ減っているものの、そのぶん中ヒットが増え、映画シーンとしては上向き傾向であることがわかる。

 一部ヒット作とアニメを除き、今年上半期から夏休みにかけて苦戦を強いられている邦画は、昨年は610本が劇場公開されているが、将来的には、観客にとって“映画館で観るべき”意義のある一部作品を除いたその多くが、ネット動画やパッケージへとメディアを移していく未来も考えられる。映像シーンに今まさにパラダイムシフトが起きようとしており、その始まりが今年なのかもしれない。
 ただ、今年の夏休み映画の初動ランキングTOP10(公開初週末興行のランキング)では、邦画実写4本、洋画実写3本、邦画アニメ2本、洋画アニメ1本と邦画実写が作品数としてはもっとも多く、そのポテンシャルは変わらず高いことがわかる。

 これまでにも決して順風満帆ではなかった時代の荒波を乗り越え、この10年ほどの映画シーンの屋台骨を支えてきたのも邦画実写。時代の変革に沿った進化を遂げ、この先も芸能文化のメインストリームでシーンを盛り上げていくことを期待したい。

『パイレーツ・オブ・カリビアン/最後の海賊』(C)2017 Disney Enterprises, Inc. All Rights Reserved.『怪盗グルーのミニオン大脱走』(C)UNIVERSAL STUDIOS.『銀魂』(C)空知英秋/集英社 (C)2017 映画「銀魂」製作委員会『忍びの国』(C)2017 映画「忍びの国」製作委員会

提供元: コンフィデンス

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