6年の熟成
2020年のデビュー以来、間断なく進化を続けてきたコンパクトスポーツの「トヨタGRヤリス」。一般ユーザーの間ではもちろん、コンペティションの世界でもチューニングのかいわいでも光を放つ一台は、2026年モデルでどう進化したのか? その走りを報告する。
東洋の奇跡
トヨタGRヤリスの登場は、ベースとなる「ヤリス」より約半年遅れの2020年秋。つまり、デビューからほぼ6年の月日が流れた計算だ。世界ラリー選手権(WRC)でラリー1規定が施行された2022年に合わせるようなデビューとなったわけだが、実際、同年以降のマニュファクチャラーズタイトルはトヨタが独占しており、旧規定の2021年も合わせれば5連覇中……と、もはや所期の目標は十分に達成したようにもみえる。
が、GRヤリスは活躍の場をラリーやダートのみならず、ジムカーナやスーパー耐久にも広げるなど、モータースポーツ全般にリーチするトヨタきってのスポーツモデルとして、今も成長を続けている。また、チューニングの素材としても成熟しつつあり、指標となる筑波サーキットのレコードは8段AT車でも1分切りと、もはやBセグメントの範疇にはない。今後、かつてのCT系ランエボやGC系インプのように魔改造を受けながら化け続けていく可能性も高そうだ。
思えば、トヨタがこれほど高い実戦力を持つクルマを継続的に販売し続けた例は、過去にない。それこそ、そういうのは三菱やスバル、あるいは日産やホンダのお仕事だった。言わずもがな、トップの熱の入りようが奏功してのことだが、前述のモータースポーツやチューニングの話も相まって、近ごろはユーザー側からみても、このクルマに託すものがちょっと変わりつつある気がしなくもない。
それこそ、1990年代には選ぶに悩むほどあった、手が届きそうなガチマジのスポーツギアという役割は、見渡せば唯一、このクルマが担うのみである。特に乗り出し400万円以内にして純正オプションも整う「RC」グレードの存在は、もはやそんなものを期待しようもない欧米の好事家にとっては七不思議のひとつだろう。...