「あとでやろう」と思って中断した仕事ほど、なぜか頭の片隅に残り続ける。実はその気がかりは、集中力だけでなく、睡眠や休息の質にも影響することがある。1万人以上の患者を診てきた医師が、医学的根拠に基づいて執筆した『体力がすべて』から、一部を抜粋・編集し、「やりかけの仕事」と上手く向き合うヒントを解説する。
仕事のことが頭をよぎって、気になってしまう
未完了の作業を抱えたまま次に移ると、その後の作業中にも前の作業がふと頭をよぎる。こうした気がかりが残る状態は、心理学では注意の残留として説明されることがあり、その後の課題のパフォーマンスを下げやすいことが報告されている(*1)。
脳は、終わっていないことをそのまま放っておくのが得意ではない。条件によっては、やりかけの課題のほうが、終わった課題よりも記憶に残りやすいことが報告されており、これをツァイガルニク効果と呼ぶ(*2)。
その一因として、「まだ終わっていない」という状態が、心の中で優先度の高い項目として残り続けることが挙げられる。
特に気がかりが残りやすいのは、前の課題に戻ったときに何をすればよいのかが曖昧な場合だ。再開の見通しが立っていないと、脳は「どこまで進んでいたか」「次は何をすべきか」が頭の中に残り続け、その分、目の前の作業に集中しにくくなる。
そのため、次にどう再開するかをあらかじめ決めたり、外に書き出したりしておくと、気がかりによる干渉が弱まり、その後の作業に集中しやすくなる(*3)。
中断せざるを得ないときは、再開時の手がかりを短く残し、必要な資料をあらかじめそろえておく。
あわせて、記憶しておくべきことは、メモやリストに書き出し、いったん頭の外へ置いておくとよい(*4)。さらに、開きっぱなしのブラウザタブや作業途中のファイルなど、やりかけを思い出させる視覚的なサインは意図的に閉じておく。目に入る情報を物理的に減らすだけでも、集中は保ちやすくなる。
こうした気がかりは、日中だけでなく、1日の終わりや休息の質にも影響しうる。週末に未完了の仕事を多く抱えている人ほど、寝つきが悪く、睡眠の質も低下しやすいことが報告されている(*5)。一方、再開の予定をあらかじめ決めて紙やメモに書き出しておくと、入眠が早まることも実験で示されている(*6)。
終わっていないことを、ただ未完了のまま放置しない。次にどこから再開するかを決め、必要ならメモやリストに書き出しておく。そうすることで、気がかりが減り、目の前の作業に向けられる余力を保ちやすくなる。
結局、負担の本質は、中断そのもの以上に、次に何をするかが曖昧なまま中断されることにある。再開の手がかりを残す。重要事項を頭の外に書き出す。目に入るやりかけのサインを意図的に閉じる。こうした小さな習慣の積み重ねが、思考のスペースを守り、次の仕事に向かう力を残してくれる。
(本稿は『鍛えるよりも「使い方」 体力がすべて』から一部抜粋・編集したものです。)