渾身のドライバーズミニバン
「日産エルグランド」の新型が間もなく登場。前回のフルモデルチェンジからは実に16年が経過しており、待ちくたびれたファンは半端なレベルの進化では納得してくれないことだろう。日産のテストコースで乗ったプロトタイプの印象をリポートする。
今やライバルとは呼べないくらいの存在に……
エルグランドの登場は前世紀の1997年にまでさかのぼる。それまでの「キャラバン/ホーミー」に豪華な加飾を施した乗用グレードを独立させるかたちで企画されたそれは、「アストロ」のようなアメリカのボンネットバンをほうふつとさせるセミキャブオーバーのシルエットに、内装も昭和のスナックから平成のラウンジくらいにモダナイズされた感もあり、経営的にほうほうの体だった日産にとっては貴重なヒット作として稼ぎを運び続けてくれた。
そんなエルグランドの存在が変えたのがショーファードリブンのあり方だ。礼式的にみて乗せられるクルマといえばセダン一択だったところに、空間価値の高いミニバンというエルグランドの提案は乗せられる側の支持をじわじわと集めることになった。当時、飛ぶ鳥落とす勢いだった歌姫さまや、壊し屋で名をはせた野党党首殿が、先んじて初代エルグランドを移動車に選んでいたことを思い出す。
と、先んじて「グランビア」を展開していたもののエルグランドにボロ負け……という屈辱を受けたトヨタは、高級ミニバンの競争軸をスペースユーティリティーや静粛性などに見定め、乗用車のFFプラットフォームをベースに開発した「アルファード」を投入。同時期に2代目となったFRプラットフォームのエルグランドと激しい販売合戦を繰り広げるなか、アルファードは兄弟車の「ヴェルファイア」を携えて先行したフルモデルチェンジでそのポジションを固め、日産へのリベンジを果たした。
対するエルグランドは2年以上遅れてようやくFFプラットフォームの3代目へとスイッチしたが、走りより見た目の威張り感や室内の広々感が大事という風潮のなか、わずかな背丈の低さも災いしたのか、再びトップに立つこともなく15年以上にわたってトヨタの後塵(こうじん)を浴び続けたのはご存じのとおりだ。特に国内販売戦略のミスリードと戦えるパワートレインの欠落は、なすすべなしの一因となっていただろう。
お待たせいたしました。いや、お待たせしすぎたかもしれません。
……と、4代目となるエルグランドの姿を目の当たりにすると、それゆえか思い浮かぶのは某ドラマで再注目された某監督の言葉である。本当に待たされすぎて、この手のクルマの需要は完全にトヨタが掌握しているようにさえみえるなかで、新しいエルグランドは何を武器に戦うのか。...