私的カー・オブ・ザ・イヤー
5代目に進化した「ランドローバー・レンジローバー」が上陸。V8モデルは、既に3年分の生産枠が予約注文で埋まるほどの人気だというが、ロングホイールベース車「オートバイオグラフィーP530 LWB」のステアリングを握り、そのヒットの秘密を探ってみた。
ストリートカルチャーのテイスト
2022年に試乗したニューモデルのなかで「あぁ、このまま乗って帰りたい」と思わされたクルマの筆頭が、5代目となる新型レンジローバーだった。格好はいいしインテリアはモダンだし、ふんわり軽い乗り心地とずうたいに似合わぬ繊細な操縦性にも感銘を受けた。
本稿を執筆しているのは9月上旬で、一年はあと3分の1近くも残っているので「今年のナンバーワン」と書くのは早計かもしれない。けれども、今年中にレンジを上回るようなモデルが登場するというイメージが湧かない。
感動の初試乗から数カ月、いくつかの仕様に乗って初期の興奮が落ち着いてきたところで、あらためてレンジローバーのどこがそんなに気に入ったのかを確かめてみたい。
試乗したのは4.4リッターのV型8気筒ツインターボエンジンを搭載する、乗車定員7名のロングホイールベース仕様。このでっかいボディーが、磨き込まれた玉石や、削り出しの金属塊のように感じるのは、凸凹を廃し、ボディーのつなぎ目の隙間を極小にしたことによる、トゥルンとした表面処理のおかげだ。
で、このボディーを少し離れた場所から眺めて感じるのは、これはカスタマイズカーの世界で言うスムージングではないか、ということだ。英国伝統のプレミアムSUVが、アメリカ西海岸発のストリート文化の影響を受けている、というのはまったくの推測であるけれど、「伝統×ストリート」という動きがさまざまな分野で盛り上がっているのは推測ではなく事実だ。
例えば五輪。東京オリンピックはスケボーやサーフィン、BMXで盛り上がったし、次回開催のパリにはストリート文化の象徴ともいうべきダンスバトル、ブレイキンが採用される。洋服の世界でも、高級ブランドがストリートカルチャーのテイストを取り入れ、ストリートファッションのヒーローを重用している。
なので、各ピラーを黒塗りすることで屋根が浮いているように見えるフローティングルーフや、ボートテール形状のリアビューなど、伝統的なモチーフを残しつつも、新型レンジがデザインの最先端を走っているように見えるのは、「伝統×ストリート」という世界的な潮流に乗っているからだと考えると、すとんとふに落ちる。...