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診断慣れしているからこそ「リアルを知りたい」…言葉の強弱、バランスが求められる令和の占いブーム
2020年にYouTubeで占いを始め、3年を経た現在、25万人ものチャンネル登録者をもつあんずまろんさん
次から次へと起こる変化に「心が追いつかない」占いが拠り所に
あんずまろんさんは、コロナ禍だった2020年にYouTubeで占いを始め、半年で10万人を超す視聴者を獲得した。3年を経た現在、占いチャンネルとしては異例である25万人ものチャンネル登録者を抱え、相談者を傷つけずに寄り添う彼女の占い方は「#あんまろ掘り」として親しまれる。先行きの見えない不安のなかで「自分はこれで正しいのかという答えを求める方が増えている」と分析する。
「大企業の不正が暴かれたり、コロナ禍で先行きが見えないなど、混沌とした世の中の雰囲気があること。それに加え、ネット社会になって人と自分を比較することが増えたことで、自分の選択は本当に正しいのかという“答え”を求めたくなる人々の心理があります。不安やフラストレーションの蓄積から、占いの力を借りたくなる方が増えたように思います。そもそも今、占い師自体も増えているのですが、もとはその人たちも自分自身と向き合うなかで、自分の不安を拭うために、占いを学んだのがきっかけという方が多いんです」
2020年以降、先の言葉にある不安とフラストレーションが高まる時代背景を表すように、「一部の占い好きの人が集まってきた」というよりは、「占いをしてもらうのは初めて」という相談者が多かったと振り返る。
「占いブームと言われるようになるほど利用者が増えたのは、間違いなくコロナ禍の影響が大きかったと思います。例えば、今まで直接会えていた人と会えなくなったり、ネットワークでの関わりしか持てなくなったことによって、相手の真意がわからないという不安を訴える方が非常に多くいました。さらに、直接会えるようになってからは、今度はそれまでとのギャップについていけないという悩みが増えました。同時に、国内外を含めた世界情勢だけでなく、SNSツールのXもそうですけど、次から次へと起こる変化に、心がついていけない。心のよりどころをどこに置けばいいのかわからない方が今、多いと感じています」
「リアルを知りたいけど、キツイ言い方をされるのは辛い」相談者の本音
「以前のブームのときは、テレビ番組のトークのネタみたいな感じで、面白いエンタメとして占いを見ていた人が多かったと思います。でも、今は、『辛いから助けてほしい』『何かにすがりたい』『自分ってどういう人なのかいろいろな観点から知りたい』というように、リアルに占いを自分の生活に取り込みたい方が増えています。楽しむ分にはキツイ言葉もいいけれど、いざ自分の身に降りかかるとなったら、キツイ言い方をされるのは辛いですからね」
実際、あんずまろんさんも占い師によって傷つき、悔しい思いをした経験があるという。
「人間関係ですごく落ち込んで、ボロボロになって、街角の占い師さんに見てもらったときのことでした。いいアドバイスをもらえたらと思っていたのに、ボロクソに言われて、メンタルに追撃を食らって、あまりのショックにご飯も食べられなくなってしまったほどでした(笑)。でも、そのうちだんだん怒りが湧いてきたんです。タロット占いだったのですが、当時、私も少し勉強していたので、結果がそんなに悪いわけではないことはわかりました。なのに、ものすごい酷い言い方をされて、私が占い師なら絶対そんな読み方や言い方はしないって思って悔しくなって。私と同じように占い師さんに傷つけられたり、怖い思いをさせられた方がいるのではないかと考え、本格的に占いの勉強を始めたんです。そう思うと、今となればあの占い師さんには感謝しかありません」
同時に「占いの持つ『胡散臭い』『怖い』というイメージも変えたかった」と語る。
「占いに行ってきたと言ったら『何、病んでるの?』と言われて、悩みを発信することに罪悪感を抱いたり、そういうレッテルを貼られることを恐れる方がひじょうに多いと感じていました。占いの持つそのような負のループを断ち切るきっかけのひとりにと思ったのも占いを始めた理由でした」
あんずまろんさんは、今、顔出しするのではなく、ゆるくて可愛いキャラクターを自身のアイコンとして使っている。それも「占いは怖いものではない」と訴えたい気持ちから。しかし、身近な存在として相談者に寄り添い、良いことばかりしか言わないとなると、逆に批判も生まれるのではないだろうか。
「たしかに『良いことばかり言われて、実際何も起こらなかったらすごく辛い』とか、『ちょっとは悪いことも言ってもらわないと現実味がない』という方もたくさんいらっしゃいます。皆さん夢を見たいわけじゃなくて、リアルを知りたいんですよね。でもあまりしんどいことを言われるのもつらい。そのポジティブとネガティブ、言葉の強弱のバランスをうまく取られている占い師が求められ、人気になっているかなと思います」
診断コンテンツに慣れ親しむ世代、占術の種類よりも結果や数字に着目
「占術にこだわるよりも、実際に何人を鑑定してきたとか、何人を幸せに導いたとか、その人がどれだけ結果を出しているのかという数字に着目し、そこから入って、その後、自分との相性で選ぶ方が多いです。あと、占い師の実体験を気にされる方も多いです。例えば、どん底から這い上がった経験がある人なら、占いだけでなく、現実的に生き方を導けるスキルを持っているのではないかと考えるようです」
あんずまろんさんはYouTubeでのリーディング動画のほか、オンラインサロン「あんずまろんさろん」も主催。どちらも見せ方は1対多となるが、それでも、自身がこだわる「個々に寄りそうこと」を重視しているという。
「俳優さんが演じるときの理論じゃないですけど、全員に向けて届けようとすると、当たり障りのない言葉になりがちです。ですから、大勢を視聴者にしている場合も、全員にではなく、個人=あなた様に向けて言っていることをすごく意識していますし、オンラインサロンでは個人鑑定の機会を大切にしています。SNSやインターネットにより、“1対多”の占いが増えたとしても、個人の悩みにアプローチする占い自体のパーソナルな特性は変わっていないと考えているからです」
星座占いを見ているとは周囲に言えるけど、タロット占いをしているとは言いずらいなど、「まだまだ占いに対する先入観を持っている人、恐怖心を抱いている人が一定数いるのも事実」とあんずまろんさん。最近では「ちいかわ占い」など、「占い=怖い」感覚をアップデートする様々なコンテンツや占い関連グッズが登場しており、あんずまろんさんは自身の活動を通して「占いを身近で奥深く面白いもの」と考える人を増やしていきたい思いがあるという。
「占いって怖いイメージだったけど、入ってみたら実は興味深くて面白い世界だっていう人を増やしたいし、『占いに行ってきたよ』と言ったら『いいじゃん』というように、占いがもっと気軽で身近なものになるといいなと思います」
人々が抱える悩みや不安が深く、その数も増えている令和の占いは、ますますカジュアルでパーソナルな娯楽として進化していくのかもしれない。

PROFILE あんずまろん
YouTube「あんずまろん」の登録者は24.9万人。著者は活動から2年で7冊を超える。DMMオンラインサロン「あんずまろんさろん」(外部サイト)は2000名を超え、2023年には特別賞も受賞。占いの“怖く怪しい” イメージを変えるため、各メディアでの執筆や監修・占い師ユニット育成、占い×キャラクターコンテンツ「ほしタロ」のプロデュースなど、さまざまな活動を行っている。