ふわふわのスカートを着ているように見えるスズメの写真。これはスズメを被写体として日常を撮影し続けてきた中野さとるさんによる一枚だ。全国各地で見られる野鳥のスズメの様々な表情やしぐさを切り取ってきた中野さんに、野鳥を撮るきっかけとなったスズメとの出会いなどを聞いた。

冬の羽毛はふわっふわ　風のしわざで撮れた一枚

　このスカートのように広がった羽について中野さんは「冬は羽毛がものすごくフカフカになるのですがいつもはぺったり体にくっついています。でも後ろから強い風を受けると羽毛が逆立ってこんな風になるんです」と教えてくれた。

　静止画であるが、妙に躍動感も感じる写真。音楽がなる中、表情を決めてポーズをとっているようにも見える。
「ドレスを着てるようですよね。わたしはファッションショーの“チュンコレウィンター”と呼んでます（笑）」

　最近出会った中で印象的だったスズメについて聞いてみると、繁殖期である今だから見られる親子の姿だという。「親スズメが食べ物を子スズメに与えるんですが子スズメがぽろぽろこぼすんですね、それを丁寧に拾ってまた子スズメの口の中に運ぶ姿は温かい気持ちになりますよ。がんばって子育てしてるんだなって応援したくなります」と、微笑ましいエピソードを教えてくれた。

人間の縮図のよう？ 病みつきになっていったスズメ撮影

　そんな中野さんが野鳥を撮り始めたきっかけも「スズメ」だったという。いろんな被写体を探していた時に、たまたま公園にいたスズメの群れを見つけて撮ってみたそうだ。ケンカをしたり、寄り添ったり、イタズラしたり…人間社会の縮図のようで病みつきになっていった。
「自分だけで楽しむのはもったいないと思ってSNSでたくさんの人に見てもらおうと投稿を始めたんです。今ではたくさんの人にスズメを知っていただくようになりました」

　スズメを撮り続け、今では写真集やカレンダーなどを発売するまでに。スズメを含め、野鳥の魅力とはどこにあるのだろう。
「いろいろな環境に適応して、姿かたちを変えてたくさんの野鳥がいますね。それぞれの群れや仲間が助け合ったりケンカしたり、いろんなドラマを見せてくれるますね。野鳥の種類によってさまざまな習性があって自然界に適応して生きてるんだなって実感できます」

　今後も表情豊かな鳥を撮っていきたいと語る中野さん。最も人の身近にいるのに、その姿や生活の詳細はあまり知られていないスズメ。中野さんの写真を見ることで、こんなにもユニークな鳥であることに気づかされる。
「一羽でも複数のシーンでも写真を見た人が鳥たちの会話やドラマを想像ができるような写真が撮れたらうれしいです」

■中野さとる X（＠aerial2009（外部サイト））／Instagram（＠onakan_s（外部サイト））