ORICON NEWS
川谷絵音×萩原みのり、「映画づくりは美しかった」Huluオリジナル『ゼロの音』インタビュー
本来の自分に近い役をやってみたい
萩原お似合いでした! 役衣装を着て現場に入ると、普段身にまとっているオーラがスッと消えていて、市役所のシーンの撮影初日に、私、川谷さんの前を素通りしてしまって。後から気づいて、うわっ、ごめんなさい、ごあいさつもせずにって(笑)。現場に溶け込んでいました。
川谷確かに、エキストラの方と間違われたこともありました(笑)。音楽の現場だと、自分が引っ張っていかないと、という気持ちだけど、映画の撮影現場は監督がその役目を担っていて、僕は準備して、出番がくるのを待っていただけなので、ずっと下を向いてスマホをいじっていたから、素通りしてしまったのも仕方なかったと思います。ヘアスタイルもいつもより短くしていました。
川谷僕らミュージシャンがカメラの前に立つのは、テレビ番組の出演時か、ミュージックビデオの撮影時なので、だいたい派手な服を着てるんですよ。だから最初のうちは何か変な感じがしてました(笑)。スタイリストさんに、「また、今日もこの服ですか?」って(笑)。
萩原それは前後のつながりがありますから(笑)。でも、川谷さんのリアクションは新鮮でした。私たちが当たり前だと思っていることが、すべての人にとって当たり前というわけではないんですよね。私は、役衣装を着て、役の気持ちが入った状態で現場にいる方が落ち着くし、素の状態でカメラの前に立つ機会の方が少ないので、番宣で情報番組に出る時の方がどうしていいかわからなくて、そわそわしてしまう。川谷さんにとっては役衣装の方がしっくりこなくて、そわそわしているんだなぁと思いました。
川谷正直なところ、どうすればよかったのか、今もわからないです。弦のキャラクターは、とにかくコミュ障で、ほとんどしゃべらないということだったのですが、僕自身はよくしゃべるし、笑うし、180度違う。監督からは「感情を抑えてください」と現場で何度か言われて、感情を出さないように演技をするのが大変でした。
萩原川谷さんは、弦さんとは真逆ですね。朝5時集合でロケに行った時も、私は寝ぼけまなこだったのですが、川谷さんはしっかりエンジンがかかった状態で、片道1時間の道のりをずっとお話しされていたので、私も目が覚めました(笑)。帰りも川谷さんを中心にみんなでおしゃべりして楽しかったですよね。スタッフさんともすごく仲良くなれたのは、川谷さんが誰に対しても分け隔てなく話しかけてくださったお陰だと思います。私も撮影の時間だけでは埋められない、川谷さん演じる弦さんと自分が演じるいととの距離の詰め方というか、関係性を自然と作ることができたと思います。
萩原優しい映画を見た後は、人に優しくなれたり、景色がちょっと変わって見えたりするんです。この作品は、監督をはじめ、現場のスタッフ、キャスト、みんな優しい人たちばかりで作った優しい映画です。優しさが映像を通して伝わったらいいな、と思います。
――川谷さんには映画初出演を経て、今後の意欲を聞かせてください。
川谷僕が普段やっている音楽は、1人で作ることもできますし、バンドメンバーだけでできることも多い。ミュージックビデオの撮影はたいてい1日で終わります。ですが、映画は何日もかけて、今回は約3週間でしたが、たくさんのスタッフと一緒に一つの作品を作り上げる。皆さんそれぞれプロフェッショナルな仕事をしている姿が美しかったですし、本当に映画は総合芸術だと思いました。もし、また映画に出演する機会をいただけるなら、今度は本来の自分に近いおしゃべりな人の役をやってみたいです。