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『冬のソナタ』から20年…日本に浸透した韓国カルチャー 文化交流が良好な日韓関係を築く後押しに

  • 『冬のソナタ 韓国KBSノーカット完全版 ソフトBOX VOL.2』(発売元:ソニー・ピクチャーズ エンタテインメント)

    『冬のソナタ 韓国KBSノーカット完全版 ソフトBOX VOL.2』(発売元:ソニー・ピクチャーズ エンタテインメント)

 社会現象を巻き起こしたドラマ『冬のソナタ』から今年でちょうど20年。その後、音楽や映画、ドラマなど幾度ものブームを経て、いまや韓国カルチャーはすっかり日本に定着。食やファッション、美容、インテリアなど韓国から発信されるさまざまなモノやコトが、身近な日常生活に浸透している。そのベースに人々を魅了してきた“エンタテインメントの力”があったことは見逃せない。日本人の消費行動やライフスタイルに大きな変容をもたらした日韓カルチャー交流の現在地を探る。

幾度もの韓流ブームを経て、日本の日常生活にまで浸透した韓国カルチャー

  • 俳優のイ・ドヒョン(C)ORICON NewS inc.

    俳優のイ・ドヒョン(C)ORICON NewS inc.

  • 歌手のPunch(C)ORICON NewS inc.

    歌手のPunch(C)ORICON NewS inc.

 今年4月、『韓国 DRAMATIC NIGHT』が東京で開催され、38ヵ国で1位を獲得したNetflixドラマ『ザ・グローリー 〜輝かしき復讐〜』に出演した俳優のイ・ドヒョンと、「韓ドラOSTの女神」と呼ばれる歌手のPunchがともに初来日。それぞれが携わったドラマをフックに、韓国旅行の際に体験してほしい食文化や、訪れてみてほしいロケ地など、日本人旅行客に向けてさまざまな韓国カルチャーの魅力を紹介した。

 同イベントは、韓国の行政機関である文化体育観光部と観光事業の開発を担う韓国観光公社が主催。韓国では「2023〜2024韓国訪問の年」と位置づけ、コロナ禍を経た観光交流再開の鍵としてカルチャーを活用したさまざまな取り組みを行うことを宣言している。韓国の観光振興において「エンタテインメントは強力な武器です」と韓国観光公社東京支社のカン・ヒィジュ次長は語る。

「始まりは2003年に日本初放送されたドラマ『冬のソナタ』でした。ドラマで描かれた美しい風景に魅せられた多くの方々がロケ地の聖地巡礼をされ、韓国旅行が一気にポピュラーに。日本の皆さんが身近で魅力的な旅行先として、韓国に気付いてくださった大きなきっかけでした」(カン次長)
 ノスタルジックな純愛が描かれた『冬ソナ』ブームの担い手は、主に中高年の女性だった。それから20年の間に起こった幾度ものブームを経て、いまや韓国カルチャーはすっかり日本の日常生活にまで浸透している。

「全世代を魅了するカルチャーの1つがグルメです。韓国旅行でも『あのドラマに出てきた本場の○○を食べてみたい』という要望は多く、エンタテインメントの力を感じます」(カン次長)

K-POPグループやドラマの影響で、韓国の美容室でヘアメイクをしたい若年層が急増

 映画『パラサイト 半地下の家族』のチャパグリ、ドラマ『愛の不時着』のチゲやチキン、ドラマ『イカゲーム』のダルゴナなど、印象的な食事シーンが描かれる韓国作品は多い。

「近年は、日本のスーパーマーケットでも本格的な韓国食材がごく普通に並ぶようになり、ドラマや映画で描かれた食文化を気軽に日常に取り入れられるようになりました。Z世代だけでなく老若男女にも広く韓国カルチャーが浸透したのは、コロナ禍の巣篭もり期間に大ヒットした『愛の不時着』や『梨泰院クラス』といった動画配信サービスドラマの影響がとても大きかったと思います」(カン次長)
 『冬ソナ』の熱狂が落ち着いた後に巻き起こったのが、K-POPアイドルが牽引した2010年頃の第2次韓流ブームだ。この頃のブームの担い手となったのが少女時代やKARAといったルックスとスタイル抜群のアイドルたちに魅せられた若い女性たちで、BBクリームやフェイスシートといったコスメ類が韓国旅行のお土産の定番となる。とはいえ、当時は熱狂的な一部の韓流ファンに支えられたブームであり、現在のようにZ世代全体に「韓国=かわいい、おしゃれ」という認識は定着していなかった。

「あくまで個人的な実感ですが、日本人メンバーのいるTWICE(2017年日本デビュー)の功績は大きかったのではないでしょうか。それまで憧れはありつつも遠い存在だったK-POPスターが、一気に身近になったきっかけだったと感じます」(カン次長)
 この系譜はIZ*ONEやNiziUと連なっている。彼女たちの私服や練習着はSNSを通じて発信され、韓国ブランドが若い女性に人気を集めるようになった。さらに国内ブランドも韓国テイストを取り入れたアイテムが増えており、K-POPファンならずとも流行に敏感な若い世代を惹きつけている。

「さらに最近は若い男性が韓国の美容室でヘアメイクをしたい、プロフィール写真を撮りたいという旅行需要が目立って拡大しています。これは明らかにBTSを始めとするK-POPボーイズグループの影響だと思われます。トレンドに敏感に反応する女性だけでなく、男性も行動を起こすようになったことで、本格的な韓国カルチャーの定着を感じます」(カン次長)

 韓国ドラマでは男性が日常的にフェイスパックをするシーンがしばしば描かれる。また近年は、日本のドラッグストアでも韓国コスメが気軽に購入できるようになった。エンタメコンテンツを通じて発信される韓国カルチャーは、日本男性の美容意識にも変容をもたらしたと考えられそうだ。

韓国で空前の日本アニメブームも…エンタテインメントの力は良好な日韓関係を築く後押しに

 コロナ禍には、韓国旅行を疑似体験する「渡韓ごっこ」が若い女性の間で流行した。

「自然発生的に起こったブームでしたが、より本格的に楽しんでいただこうと、2022年には韓国観光公社が渡韓ごっこイベントを主催。本場の韓国雑貨や韓国食品をプレゼントしてとても喜ばれました。また、韓国料理店もかつてはトラディショナルな内装が多かったのですが、コロナ禍の間に現代の韓国スタイルを取り入れた店が一気に増えた印象です。渡航制限もいよいよ緩和されましたし、次はぜひ本場で韓国カルチャーを楽しんでいただければうれしいですね」(カン次長)
 1998年にキム・デジュン大統領が来日し、国会衆議院本会議場での演説で「日本の大衆文化解禁の方針」を表明。それから25年が経ち、岸田文雄総理と会食した韓国のユン・ソンニョル大統領が、ドラマ『孤独のグルメ』(テレビ東京系)の話題で盛り上がったことが報道され、関心が寄せられた。

 先日の『韓国 DRAMATIC NIGHT』に登壇した韓国・文化体育観光部のパク・ポギュン長官は、是枝裕和監督の映画『ベイビー・ブローカー』に出演した俳優のソン・ガンホが、『カンヌ国際映画祭』(2022年)で韓国人俳優として初めて最優秀男優賞を受賞したことについて、「韓日両国の文化協力が勝ち取った強烈で意義深い成果を、世界に知らしめる歓喜と感動の瞬間でありました」とコメントした。

 また、映画『THE FIRST SLAM DUNK』や映画『すずめの戸締まり』が、韓国で空前の日本アニメブームを巻き起こしていることに触れ、「日本と韓国の若い世代が互いの文化を楽しみ、関心を深めながら両国間の親善交流の窓を大きく開いています」と語った。
 さらに、「BTSやBLACKPINKに世界の人々が熱狂していますが、その出発点は日本です。2002年に韓国アーティストのBoAさんが、初めてオリコン週間アルバムランキングで1位(1stアルバム『LISTEN TO MY HEART』)を獲得し、翌年に『冬のソナタ』が人気を集め、韓流ブームが始まりました」とパク長官が語るように、日韓関係はこの20年で確実に未来に向かって前進している。

「国同士の信頼関係を築くためには、人と人とのコミュニケーションが欠かせません。その鍵は、現地に足を運んでいただくことと考えています。『冬ソナ』ブーム以降、韓国旅行のリピーターはどんどん増え、この20年で世代も性別も老若男女へと広がりました。エンタテインメントの力は間違いなく良好な日韓関係を築く行動を力強く後押ししてくれています」(カン次長)

(文/児玉澄子)
◆韓国観光公社のオフィシャルサイト(外部サイト)

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