ORICON NEWS
大物俳優が続々参入、スマホ向け縦型ドラマの可能性「一瞬の微表情まで映す、俳優の本質的な魅力が堪能できる」
唐沢寿明や安達祐実、窪塚洋介らも出演 縦型ドラマがキラーコンテンツとなる日
LINE NEWSでスタートした動画プロジェクト「VISION」は、そんなシーンに新たな縦型動画カルチャーを生み出すことを掲げて2019年6月に発足し、クリエイターとともにスマホフレンドリーな縦型動画の可能性を追求。コント、ドキュメンタリー、生歌ライブのほか、ミュージカル、心理ゲーム、ユーザー参加型ダンスバトルなど、チャレンジングなコンテンツを次々と開発し、ローンチから現在までの約3年半で累計100シリーズほどを配信している。
その過程において、さらなる認知およびユーザー拡大のためのキラーコンテンツ制作を目的として企画されたのが、縦型画角の本格的な連続ドラマだ。LINE NEWS VISIONコンテンツプロデューサーの内田準一朗さんは、その経緯を「『VISION』を代表するヒットコンテンツを作ろうと考えたとき、アプリでのスマホ視聴が前提なので、縦型、短尺、連続して観てもらう10話ほどのシリーズ構成といった制約のなかでクリエイターの皆さんと議論していき、連続視聴や中毒性を生み出しやすいミステリードラマにたどり着きました」と振り返る。
縦型で見せることを徹底的に追求した本作を内田さん は、「想定以上に豪華なキャストと著名なクリエイターの皆さんに、縦型ドラマという新しいチャレンジに興味を持って、精力的に取り組んでいただけたことで、従来の横型とは異なる圧倒的な迫力と没入感を生み出すことに成功しました。ここでしか観られない動画カルチャーを作るという思いがひとつの形になりました」と手応えも十分。2022年より縦型映像作品のコンテンツレーベル『上下関係W(ワールド)』をスタートさせ、10月から配信した『トップギフト』には唐沢寿明や安達祐実ら実力派俳優が出演している。
視聴者に近い視点で楽しめる魅力も…脚本と演出が大きく異なる縦型と横型のドラマ制作
一方、1話5〜10分の短尺ドラマ制作においては、寄りのシーンが多くなる縦型画角で見せるのに相応しいストーリー展開のほか、視聴者に次話への期待を抱かせるための盛り上がり(クリフハンガー)を短尺のなかに入れ込む脚本作りの難しさが生じる。演出面でも、監督はシーンごとに従来とは異なる縦型画角の構図と効果的な見せ方を検討し、役者への芝居の演出も含めてテストを繰り返してから、ようやく本番に臨むといった側面もある。
「とある俳優さんがおっしゃっていたのは『従来の横型も今回の縦型も演技することに変わりはないが、左右の動きが大きいと画角から外れることがある。それに慣れるのに少し時間がかかった。最終的には監督に身を委ねることで気にならなくなった』ということです。撮影後の映像を観て、『縦だとこう表現されるんだ』という新しい発見があったようです」(内田さん)
そして縦型ドラマならではの魅力について、「ドラマコンテンツは、より人物の心情にフォーカスし、没入感や臨場感を感じさせる縦型との相性が良いと思います。あるクリエイターは『集中力を高めて観るスマホの縦型動画は、コンマ何秒の一瞬現れる人物の“微表情”まで伝わるので、本質的な役者の魅力が活きるフォーマットだ』とおっしゃっていました」(内田さん)と解説する。
さらに、「縦型ドラマ『終わらせる者』に出演した玉山鉄二さんは、『人物に寄った時に左右の余白が少ない分、表情だけではなく、目の奥の色、温度といったところにまで没入できる』と完成報告イベントで発言されていました。実際の視聴者からは、『まるで自分に話しかけられているようで、ドキッとする』といった声もあがっています」(内田さん)
競合の参入が増えることで、シーン活性化に期待
ただし、長い歴史を持つ横型の映画やテレビドラマがなくなることはない。それらと並列にスマホ縦型ドラマがひとつのフォーマットとして市場が確立し、それぞれの画角と視聴環境に合った作品が、メディアごとに作られるようになっていくことが考えられる。そんな時代に向かう現状について、内田さんはこう語る。
「縦型ドラマは、まだまだ作品数が少ないのが実情。おもしろがってくれるクリエイターや表現できる場所がもっと増えていけば、次第に変わっていくと思います。TikTokやInstagramもそうですが、縦型動画はジャンルとして確立されています。そこにプロが作ったコンテンツが普及していく可能性のは十分にあります。まだまだ黎明期であり、いま、いち早く取り組んでいるクリエイターの皆さんが活躍する場がさらに広がったり、もっと賞賛されるような時代がやってくることを願っています」(内田さん)
第1作となった『上下関係』のキャストやスタッフ陣を見ると、芸能事務所も制作プロダクションも含めた業界全体が、縦型ドラマの可能性を信じていることがうかがえる。実際には、「『上下関係』を観て縦型ドラマに興味を持ったクリエイターや出演者からの問い合わせも多数ありました」(内田さん)と反響も大きかったようだ。もともとエンターテインメント界は新しいことやおもしろいことに積極的だが、他サービスの早期参入でシーンの活性化に期待がかかる。
(文/武井保之)