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『大河原ザク』に『ドアン専用ザク』…装飾なしで “設定”再現したモデラーたち「ガンダムやガンプラブームは先人たちの努力の賜物」

大河原先生の考える『リアルタイプ』を考えながら制作

 最初に紹介するモデラーは、メカニックデザイナーとして、ガンダムに登場するさまざまなモビルスーツ(MS)を生み出してきた大河原邦男氏の描いたザクを表現したジオン広告さん(@ms06rzktr)。旧キット独特の風合いを生かした“大河原ザク”をSNSで発表し、多くの賞賛の声が上がったわけだが、そもそも本作を作ろうと思ったのには、幼いころの原体験があったという。

「私は、ロボットアニメ全盛期をリアルタイムで経験してきました。あの頃、同世代の誰もが夢中になったロボは、ほぼ大河原先生のデザイン。大河原先生が自ら制作された正真正銘の量産型ザクを、いつか自分でも作りたかったというのが理由です。特に同年代の方々は、幼い頃から毎日当たり前のように見てきたロボットですから、もはや刷り込み。私に限らず、こう思っている方も多いと思います。あの頃は現在のようなネット環境はありませんし、情報は全てテレビCMや本でした。幼い頃の原体験として、強烈なインパクトがあったのが、小学校低学年で読んでいた『テレビマガジン』や『コミックボンボン』などで見た『ザク』でした」

 “大河原ザク”の制作にあたって、イメージしたのは「大河原先生の考える『リアルタイプ』」だったという。

「自分自身で作ることによって理解したい。そう思って作品作りを進めていました。当時、大河原先生ご自身が『リアルタイプ』について語っておられた記事を今でも読み返すのですが、『実在の戦車や戦闘機のようなマーキング(注意書き)やウェザリング(汚し)を施した、こんなMSがアニメのように動いたら…』と書かれております。つまり『もしMSが実在したら』というイマジネーションの世界を想像しながら制作を進めました」
 「塗装やマーキング、ウェザリング。この銀のドライブラシやハゲチョロこそ私が最もガンプラだと感じる部分です」と語るほど、こだわって制作した“大河原ザク”には、多くの賞賛の声が寄せられた。

「やはり何年経っても色褪せない魅力があるんだなと、私に限らず、皆さんの心の中にいつまでも残る『名作』なのだなと、改めて感動しました。
 また、この40年以上もの間に起きた、ガンダムやガンプラブームは全て偉大な先人たちの並々ならぬ努力の賜物だと思います。私はほぼファーストガンダムしか知りませんが、やはり当時の熱量があったからこその現在。『あの頃の想い』は大切にしたいと思っております」

テレビ版をオマージュしつつもかっこ良かった映画版『ドアン専用ザク』を意識

 デザイナーの想いを大切にしたいというジオン広告さんの“大河原ザク”の一方、『旧キットザク』を見て、制作のイメージを膨らませていたすみちーさん(@YMS07B_sumichi)。“作画崩壊”で有名な『ドアン専用ザク』を再現し、多くの共感を得た。そもそも同氏は、『ドアン専用ザク』を作るつもりはなかったという。

「実は、最初から『ドアン専用ザク』を作るつもりではありませんでした。旧キットの1/144 量産型ザクを仮組みし、姿を眺めていたら、だんだんと旧キットの独特のフォルムが『ドアン専用ザク』に似ているなと思い始めたのがきっかけでした。ちょうど安彦良和監督の映画が公開タイミングだったので、ちょうどいいと思いました。まさか『ククルス・ドアンの島』が映画化されるとは、当時の子どもたちは思いもしなかったことですしね」

 制作の際、意識したのはテレビ版ではなく、今年公開された映画版。それには理由があるという。

「テレビ版をモデルとして忠実に再現すると頭部は相当デフォルメが必要だと思います。ただ、映画版の『ドアン専用ザク』がテレビ版をオマージュしつつも、かっこ良かったのでそれを意識して改造してみました。
 ホームページなどで調べてみると、映画版の『ドアン専用ザク』は脱走後に倒した相手の機体から部品を回収してドアン自身で改修を行った設定になっていました。ですので、今回のガンプラでは、顎の部分をいったん切り離し、取り付け角度を変更して再接着して、ドアン専用ザクの特徴的な面長な印象を出すように心がけました。頭部のパテ盛りやヤスリがけだけで3日くらいかかったと思います(笑)」
 本作完成後、SNSに発表する際には、完成画像と共に「君はこの子どもたちのために戦えるか。君の仲間とでも。」というコメントを添えた。

「『ドアン専用ザク』を作ることを決めた後、テレビ版の第15話を久しぶりに見直しました。やはりドアン専用ザクをヴィネット(小型の立体模型)化するのであれば、子どもたちも一緒に登場させたくなりました。なので、ヴィネットの再現場面を、浜辺のドアン専用ザクと子どもたちのシーンに決めました。写真撮影は背景を海っぽくしたかったですが、滋賀県在住なので琵琶湖の畔でごまかしました(笑)。
 いざツイッターに投稿する際に何とコメントしようかといろいろと考えました。書きたいことはたくさんあったのですが、作品の印象が薄れるだけのような気がしてなかなか決まりませんでした。ふとスマホで『ククルス・ドアンの島』の映画予告を見ていたら『君はこの子どもたちのために戦えるか。君の仲間とでも』のドアンのセリフがあり、これだけで十分伝わるのではと思い投稿しました」

 当時〜現在までの『ドアン専用ザク』を細かく調べ、ガンプラで再現するだけでなく、その想いまでも感じ取れるようにする。原作(アニメ)へのリスペクトがなければ、ここまでの作品はできないだろう。最後に、“作画崩壊”などと、その不格好さを揶揄されながら、映画化までされた『ドアン専用ザク』が人々を魅了する理由について聞いてみた。

「『ドアン専用ザク』そのものが魅力的なのではなく、ククルス・ドアンが魅力的なキャラクターなのだからだと思います。守るべきものがある男は強いですし、魅力的ですから」

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