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“透かし彫り”から“ドラ○もん感”まで…“ガンダムらしからぬガンダム”が劇的大変身「同じモビルスーツに見えない」
売り場に余っていたグシオン、カスタムイメージは「鬼神」
「単に売場で余っていたからですね。グシオンは、『機動戦士ガンダム 鉄血のオルフェンズ』で悪役が搭乗する機体、あまり人気がなかったと思うんです。逆にそういうのを仕立てるのも面白いかなと思いました」
悪役が搭乗、といっても“彫り”のイメージは『鬼神』だったという。
「武器がハンマーなので雷神をモチーフにし、悪鬼ではなく鬼神として、守護者のようなイメージを元に彫りのデザインをしました。こうした彫りの作品を制作する際は、ネットで建築物やレリーフなどの資料を見たり、近くのお寺や神社を巡ったりしてデザインの参考にしてます」
ひとつひとつの彫りが非常に細かく、丁寧な仕事なのが作品からも伝わってくるが、こうした“彫り”作品は非常に多くの工程を経て完成に至るという。
「全体的なイメージは予め脳内で膨らませておいて、プラモのパーツにイメージしたデザインを鉛筆で下書きし、全身のバランス見ながら彫り進めてます。デザインも彫り方も手探りでやっているので一体につきだいたい3ヵ月かかってます」
本作も例外なく、苦労は多かった。
「グシオンは、ボディのパーツが予想以上に大きく、デザインも彫りもかなり苦労しました。大きめのパーツが多かったので肩に文字を彫って、デザインが単調にならないようメリハリをつけました。
透かし彫りという性質上、どうしても強度が下がるのでフレームとアーマーが別になっているキットを中心に選んでます。サイズもHGくらいが丁度いいので『鉄血のオルフェンズ』のキットが一番適していると思います」
ガンダム史に基づいて正確に再現する人、if設定で自ら物語を派生させる人、全く別の世界観で作る人など、同じガンプラでもモデラーによってさまざまな信念を持って制作に挑んでる。ノールスさんはどのような信念で制作しているのだろうか?
「ガンプラは手のひらサイズの模型という玩具です。その限られた大きさに自分の中にあるイメージというか世界を表現して、見る人の心を動かすことができればな、と思って制作しています。仕事の時以外ほとんどガンプラいじっているので、私にとっていまやライフワークですね」
一見ガンダムっぽくないけど、“ガンダムらしさ”を感じ、このカラーに
「こんな事を言うと怒る人もいるかもしれませんが、『∀(ターンエー)ガンダム』以降のテレビ作品を観ていないんです。『SEED』以降のモビルスーツ(MS)はバックボーン抜きに、ロボットとしてのデザインの好みだけ見ている感じなんですが、そんな時に、雑誌でみたグシオン。ガンダムの名を冠しているのに、コロコロしたデザインに『なんだこれ?かわいい!』と、機会があれば作りたいと思っていました。個人的にはハイゴック、カプルに通ずるかわいさです(笑)」
モデラーもトリコにするかわいさを見せるグシオンだが、カスタムにガンダムカラーを選んだのは、ああみえて“ガンダムらしさ”を感じたからだという。
「グシオンには、カエルっぽさも感じていたので、当初はアマガエルのような、爽やかなかわいさを塗装で表現しようと思っていました。しかし、実際のキットを仮組して各デザインを見てみると、『ガンダムとしての記号』がしっかり落とし込んであり、細かいところもちゃんとガンダムしている(失礼)。これに気づいてから、『トリコロールで行けるのでは?』と思い、このカラーにしました」
色味を決めた後も、塗装はクオリティーにこだわった。
「色替えがメインテーマなので改造的なことは特にしていません、肩の合わせ目などはそのまま残っていますし、表面処理でグシオンの丸っこさを潰さないよう、面出しには注意しました。こだわりはカラーリングのバランスです。普通にトリコロールで塗装したらオモチャっぽさが出てしまったので、青のトーンを落として、白部分の塗り分けもライトベージュで落ち着いた色合いにしました。色を目立たせるために、あえてデカールも貼っていません。一番のポイントは頭。小さいアンテナがかわいくて目立たせたいので、あえて白いままです。ガンダムを踏襲するのであれば、オデコの所に赤を入れるべきかと思うのですが」
もともと地味な機体だったグシオンがヒーロー然とたたずむ。色を替えるカスタムはその機体の印象を大きく変える一つの手法といえよう。
「色替えってすごいセンスが必要だと思います。今回はガンダムのトリコロールカラーというお手本があったので上手くいきましたが、他の方の作品を見ると『なんでこんなキレイな配色が出来るの?』と思うことが多々あります。少なくとも今の自分にはないスキルです。そして、その色替えによってガンプラは、”その人のMS”作品になり、個性を生むことができる。ただの塗装表現ではなく改造手段の1つだと思います」