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女子高生たちの“百合”描く作者の疑問「なんで毎回、男女の恋愛が優先?」、実績ゼロで“次にくるマンガ大賞”ノミネート

 性の多様性が重要視される前から、エンタメ作品ではさまざまな愛の形が描かれてきた。最近では、ドラマや映画、マンガなどでもよく題材となり、コアファンのみならず一般的にも市民権を得たと言える。LINEマンガ『百合にはさまる男は死ねばいい!?』は、吹奏楽部の2人の女子部員と1人の男子を取り巻く、名前がつかない感情をエモーショナルに描いた作品。「百合」とは女性同士の同性愛、またはそれに近い親密な関係のことを指す同人用語だが、この時代にあえて批判を生みかねない言葉、表現を用いた思いとは? 作者である蓬餅さんに聞いた。

ニッチな“百合”ジャンル「自分が見たいものを自由に描いた」

 トランペットは、吹奏楽のなかでも人気が高く花形。そんなトランペットのパートには、1st、2nd、3rdとポジションがあり、1st奏者はほぼすべての曲でメロディを担当する。同作では、自身が1stを吹くことを誇りに思っていた片桐と、音楽一家に育ち全国レベルの強豪校で1stを吹いていた転校生・相川という2人の女子高生が軸になっている。タイトルに“百合”とあるように、2人の恋愛模様を想起させる。
――吹奏楽という共通項で結ばれた片桐と相川ですが、友達関係を超えるものも感じます。マンガやアニメでも同性愛を題材とした作品は珍しくなくなってきましたが、多くの人に読まれるLINEマンガの連載で、好みが分かれる百合要素を作品に入れ込もうと思った理由は?

蓬餅さん「百合を連載するぞ!」という気はなく、たまたまお声がけいただいたので…。最初に「LINEマンガで百合作品は(読者をつかむことが)難しい」と言われた上でのお誘いでしたが、そもそも実績ゼロの私が連載なんてどこでやっても厳しいだろうなと思っていましたし。かなり自由に描かせていただいているので、LINEマンガさんでの連載でよかったと思います。

――作品タイトルにも、ストレートに“百合”という言葉を入れた意図はありますか?

蓬餅さんタイトルに「百合」と入れた理由は特にありませんが、おかげで百合マンガを好む方々の目に留まって話題にして頂くこともあったので、よかったと思います。話題にすら挙げてもらえないよりは、ずっといいです。

――Twitterでも制作秘話を明かされていますが、百合マンガファンの目に留まるような刺激的な絵柄にもチャレンジされていました。

蓬餅さんサムネイルの試行錯誤は、前の質問でも言われた通りやっぱりLINEマンガでの百合作品の連載は厳しくて、批判されたサムネイルもありました。でもどれが欠けても今連載ができていないと思うので、今後の作品内のストーリーを読んで、信頼していただければと思います。

――恋愛対象が同性であることに、何か思いがあれば教えてください。

蓬餅さん描きたいものや好きなものが、世間で言う「百合」に近かったので、ジャンルの端に席を置いて描かせていただいている状態な気がします。

――片桐と相川の間に入る唯一の男の子が日向です。彼が出てくることで、百合好きからは拒否反応のコメントもありましたが、女子同士の話にまとめなかった理由は?

蓬餅さん女性だけで完結しない世界での女性同士の繋がりが好きなんです。マンガで時々ある展開で、「主人公(女)に親友(女)が恋するけど、主人公にはヒーロー(男)がいるので失恋が確定されていて、親友は親友ポジションで落ち着く」みたいな流れがあるんですが、それを見て毎回「なんで男女の恋愛が優先されるんだ…?」と思っていまして…。男女の恋愛を扱うマンガが多いので、当たり前なのは分かっているんですが。自分で見たいものを描いたらこうなりました。

経験から描けるリアルも「何かの技術を高めようともがいている人が好き」

――“百合マンガ”というだけではなく、吹奏楽部分もしっかり描かれているのが、本作の魅力でもあると思います。吹奏楽経験者やファンからも初回から熱いコメントがついていました。なぜ吹奏楽をテーマに選んだのでしょうか?

蓬餅さん狭い環境の中で育まれる、微妙な年頃の女の子同士の強い繋がりの話を描きたい気持ちがありました。勝敗のハッキリしない文化系の部活なら、より繊細な意地とプライドのぶつかり合いが描けるかなと思いまして…。

――先生も吹奏楽部だったのでしょうか?

蓬餅さん確かに自分も学生時代は吹奏楽部だったのですが、(テーマに選んだのは)それが1番の理由ではない気がします。でも経験者なので描きやすい箇所は多くて、結果的には吹奏楽を選んでよかったと思います。

――この年代特有の悩みや葛藤、友情とも恋愛なども盛り込まれていて、物語の世界観に没入できます。お互いへの思いが強いからこそ、本音が言えず苦しくなる…彼女たちの心情は、大人や男女でもありえることかと思いますが、彼女たちの関係性を描くことで伝えたかったこととは?

蓬餅さん何かの技術を高めようと、もがいている人が好きなんです。あと、技術を向上させるためには1人で黙々とやってちゃダメで、目的のために人間関係が生まれるんですが、その関係の中で生まれる尊敬や嫉妬や焦りや諦め…のような感情も好きなんです。学生で同性間だと、より自分が見たいものが見られる気がしました。それらを通過して大人になる様子も描きたいです。

片手間で描いていたマンガが人生の中心になっていった

――本作は、LINEマンガ インディーズのトライアル連載を経て本連載となったそうですね。インディーズ作品に投稿する前はどのような活動をしていたんですか?

蓬餅さんインディーズ作品に投稿する前は、会社員として働く片手間に趣味でマンガを描いていました。

――趣味が仕事に変わったわけですね。

蓬餅さん働いている時間って、創作に邪魔だな〜と思いながら過ごしていました。トライアル連載のお声がけを頂いてからは、人生の中で創作をする時間を増やすためにも“本連載を勝ち取る気持ち”が強かったです。周りの方に相談に乗って頂いたり、試行錯誤をした過程を経ての本連載決定だったので、決まった際も「この試行錯誤が続くのか〜」という感じで、今もずっといい緊張感が続いています。

――本作を通して、読者に届けたいメッセージとは?

蓬餅さん伝えたいものが先にあって描いている作品ではないのですが、キャラクターそれぞれの生き様や選択が、なにか心に響いたなら嬉しいです。

――連載中ではありますが、今後描いてみたい作品や、漫画家としてスタートした目標、夢を教えてください。

蓬餅さんとりあえず今は、この作品を描き切るために試行錯誤をやめないのが目標です。紙の単行本を出せたらな〜という夢もあります。今後は性別問わずめちゃくちゃなラブコメと、全然恋愛しないような両極端な話も描いてみたいです。

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