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「人間と同じようにお見送りができなかった」友人の後悔をバネにペット保険を創業 動物愛護が高まる中で保険の立ち位置は?
4年で契約者数が約3倍に 緊急事態宣言下では保険の請求件数が増加
「日本でも欧米のようにペットを家族の一員として迎え入れ、人間が医療保険に加入するのと同じように、若いうちからケガや病気に備えて保険に加入する。そんなふうに飼い主さまの意識が年々、高まっていると感じています」
最近では、飼育している動物たちを「ペット」から「コンパニオンアニマル(伴侶動物)」と呼ぶことも多くなってきたが、大切な家族の一員であれば、長生きしてほしいと願うのは言わずもがな。高齢になればケガや病気はしやすくなるし、それ以前にも、我が子にちょっとした変化があったとき、病院で診てもらいたいと思うのは当たり前の“親心”。それはコロナ禍、顕著に表れた。
「緊急事態宣言下に保険の請求件数が増えました。在宅で一緒にいる時間が増えて、変化に気づきやすくなったのだと思います。ワンちゃん猫ちゃんの元気がない、ちょっといつもと違う、病気かも? と思ったときに、保険に入っているから病院に連れて行こうと思える力になっているのではないかと思います」
17年前、PS保険が設立された目的もまさにそこにあった。
手書きのメッセージを大切に ペット亡き後に舞い込む顧客からの感謝の手紙
「弊社設立のきっかけは、社長の友人が、ペットちゃんを亡くした際、お骨を拾うことができず、人間と同じようにお見送りできずに悲しまれている姿を目にしたことだったそうです。同時に、保険に入っていないから治療ができなかったとか、お金がかかるから病院に連れていけなくなってしまったという声を聞いて、自分がどうにかできないかという使命感で立ち上げたと聞いています」
「お客さまからお電話をいただかない限り、システマティックな対応だけになりがちなので、なるべく人の温かみを感じていただけるよう、支払いに関する書類を郵送する際は、手書きのメッセージを添えさせていただいております。顔が見えないからこそ、人と人とのコミュニケーションを大切にしています」
大切なペットが体調不良になれば飼い主は不安でいっぱいになる。そんなときの親身な対応は心強いものだ。毎月4〜5通は届くという顧客から感謝の手紙はそんな気持ちを端的に表している。それらはスタッフの宝物として大切にスクラップされているそうだ。
「回復されたという喜びのお声はもちろんですが、亡くなられた後、『保険に入っていたおかげで最期まで良い治療をさせてあげることができました』というお便りをいただくこともあります。それは弊社が設立当初から望んでいることでもありますので、そのお言葉をいただけたときは本当にうれしいです」
契約者数増加といえど日本全体ではわずか10% 根強い保険懐疑派の声
「ペット保険については、100%補償を求めるか、一部を求めるかで意識が変わると思います。例えば100万円のリスクを取り去ろうと思えば、保険料も当然高くなりますし、そうではなく、その半分でも保険金でカバーしたいということであれば、リーズナブルになります。あとは、万が一の場合は自己負担で全額実費の覚悟をもつか。今は、納得いく保険料で、永続的に契約する人が増えている傾向にあるように思います」
ちなみにPS保険の加入割合では75%が犬、25%が猫。フレンチブルドッグは皮膚が全般的に弱い、チワワなどの小型犬は心臓の疾患を発症しやすい、純血種の猫は病気にかかりやすいなど、犬種猫種によって特有な病気はさまざまあるが、犬の場合、近年は、アレルギーやアトピーなど皮膚疾患での治療による請求が増えているという。
「一度、発症すると、完治しても再発を繰り返すことが多く、慢性になってしまうとずっとお薬を飲み続けなければいけなくなるので、そういう話を耳にされた新規飼育者の方々が、早い段階で保険に入っておこうと考えるケースも増えています」
食事や飼育環境の向上で、近年、愛犬・愛猫たちの寿命は大幅に伸びている。獣医療の高度化も目覚ましい。幸いなことに、入院も手術も経験することなく、生涯を終える犬や猫も多いかもしれないが、もし、自分の大事な家族の一員が具合が悪そうにしていたら、あなたは迷わず病院に連れて行くことができるだろうか。もし、獣医師に病気が潜む可能性を示唆されたら、治療費の心配をすることなく、迷わず血液検査やエコーなど提案された検査を受けさせようと思えるだろうか。できうる治療を最大限してあげたいという願いは、どの飼い主においても共通項のはずだ。
(取材・文/河上いつ子)