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最狂女優・萩原みのり、続く“ドラスティックな役柄”に納得も「壁ドンとかされてみたい」

 2021年、ドラマ、映画に10本以上出演するなど大活躍を見せた女優・萩原みのり。劇中では、鬼気迫る迫力を見せたかと思えば、儚げな狂気をにじませる役を演じるなど、24歳という若さながら役柄の幅は広く、演技派女優として、映像界では引く手あまたの存在となっている。そんな萩原は、最新作映画『成れの果て』でも、過去に因縁があった姉の婚約者に対して驚くべき行動を仕掛ける女性を熱演。「この役を受けていいのか迷った」と語るほどの難役に挑んでいるが、いまの活躍を自身はどのように評価しているのだろうか。萩原の胸の内に迫る。

助けを求めているような過酷な役が多いことに「自覚はあります」

――2020年、2021年と出演作が続きましたね。ドラスティックな役柄が多いように感じます。ご自身でもそういった自覚はありますか?

萩原みのり「幸せになりたいだけなのに」とか「苦しくてたまらない」みたいな幸せを求めるようなフレーズが多い作品が多いなと感じていました。企画書を見て、「たぶん、この役の話が私に来ているんだろうな」とピンとくるようになりました(笑)。助けを求めているキャラクターの役のお話が多いなという自覚はありますね。

――そういう役が舞い込んでくるということに対してはどんな思いを抱いていますか?

萩原みのり私は自分では割と明るい方だと思っていたので、「あれ、皆さんの私に対するイメージってそういう感じなんだ」というのはありましたが、良く考えるとデビュー作も不登校の役だったなと(笑)。そこから割と過酷な運命を背負う役が多く、自分でも「なんでなんだろう」と思っていたのですが、最近はその違和感もなくなってきました。すごく分かりやすい言葉でいうと、暗い役が多いのですが、演じていくうちに、そういうキャラクターでも、どこか違う面、例えば一瞬見せる明るさとか……そういう部分をどれだけ出せるかという楽しみを見出せるようになった気がします。

――過酷な境遇の役を演じるうえで、意識していることは?

萩原みのり例えば映画を観た人が「意地悪な子だな」と思う役を演じても、私だけは否定しないということは心掛けています。どんな意地悪な子でも、違った側面もあるはず。そういった部分を丁寧に表現したいと思っています。

感情を爆発させることはストレス発散にも「撮影後は、よく眠れます(笑)」

――最新作映画『成れの果て』でも、姉の婚約者との確執を描く、ハードな役を演じていますね。これまでさまざまな役を演じていますが、本作で演じた小夜という役は受けるかどうかかなり悩まれたとお聞きしました。

萩原みのり内容的に軽い気持ちで挑める作品ではないというのはあったのですが、なによりも台本を読んで、小夜が最後に向かって選択していく行動が、まったく理解できなかったんです。そんな私が演じていいのかという葛藤はありました。
――どうやってその気持ちを消化していったのでしょうか?

萩原みのり一番は「小夜をひとりにしてはいけない、側にいてあげたい」と思ったことです。私が感じた気持ちを、映画を観たお客さんが一人でも同じ気持ちになってくれたらいいなと思って挑戦しようと決心しました。

――実際小夜を演じてどんな思いが心に宿りましたか?

萩原みのり台本を読んで想像していたよりも断然苦しかったです。

――そういった苦しさは萩原さんにとっては女優業の醍醐味だったりしますか?

萩原みのり現場に入ったからこそ感じられるものを得られる経験はすごく楽しいです。あとは、本番はメチャクチャ苦しいのですが、感情を爆発させられる瞬間というのは、すごくすっきりした気分になるんです。この一年ぐらい、特に激しい役が多いので、周囲からは「苦しくならない?」「私生活に影響しない?」と言われるのですが、大人になってから大声で泣くとか、わめくとか感情を爆発させる瞬間ってないから、変な気持ち良さがあるんですね。撮影のあとはよく眠れます(笑)。

オーディションに受からず、仕事がない日々「キラキラしている裏側に、悔しい思いがたくさんあることを学んだ」

――デビュー作の話が先ほど出ましたが、本気で取り組んでいた新体操が怪我で挫折したところにスカウトされたんですよね。当時はまだ女優業に対してふんわりとした思いしかなかったと話されていましたが、約10年経過し、気持ちは変わりましたか?

萩原みのり私自身の気持ちが変わったというよりは、応援してくださる方からいただく言葉や思いによって、お芝居をすることの重みなどを感じるようになりました。昔はもっと自己満足というか、自分が楽しければいいやと思っていたのですが、出演した作品を観た方から激励の言葉などをもらうと、演じるという仕事に対する思いがどんどん強くなっていきました。いまは作品を観てもらうためにどうやって宣伝したらいいのか……とか携わった作品を一人でも多くの人に観てもらうためにどうしたらいいかを課題として考えています。

――本作のような主演作では、なおさらその思いは強いのではないですか?

萩原みのりそうですね。真ん中に立たせてもらうときは、この作品を一人でも多くの人に届けなければいけないという思いにプラスして、自分の伝え方ひとつで作品のイメージも変わってきてしまうので、いつも以上に責任感を持って臨んでいます。

――伝え方が難しいと感じる場面はありますか?

萩原みのり舞台挨拶に悩むことがあります。特に上映後だと、小夜という役を演じていながら、いきなり明るいテンションで登場してしまうと、作品の余韻を壊してしまいかねないですよね。絶対にお客さんの邪魔をしたくないので、そういうときにどんな顔をして登壇すればいいのか戸惑ってしまうことが多いです。

――お芝居を始めてから10年経過していますが、振り返ってみるとどんな時間でしたか?

萩原みのり最初この世界に入ったとき、実はいっぱいお仕事があって、キラキラしているんだろうなって幻想を抱いていたんです。電車とかも乗れないのかなーとか、すごく能天気な妄想ばかり(笑)。でも現実はオーディションにはまったく受からないし、仕事はないし……。キラキラしている裏側は、こんなに悔しい思いがたくさんあるんだって実感していました。

――風向きが変わったのは?

萩原みのりだんだんとそういう辛い経験も体に馴染んでくるんですよね。一番気持ちが変わったのは、みんなが進学を決めるタイミングで、私はこのお仕事一本で行くと決めたときですね。そのとき、本当の意味での自覚が芽生えてきたような気がします。

――逆に言えば、辛い経験をされてきたからこそ、いまは怖いものがないのではないですか?

萩原みのりいえいえ、いまでもめちゃめちゃ怖いです。基本的にクランクイン前日は眠れないし、胃も痛くなります。初日のファーストシーンなんかは緊張し過ぎて声が出ないんです。だからなるべくメイクさんとかとおしゃべりして、声を出すようにしています。いつか治るかなと思っていたのですが、10年経ってもこれなんで、たぶんずっとこうなんだろうなって思っています(笑)。

年齢を重ねて客観的に自分の顔が見られるように

――若手演技派女優として製作陣からの信頼が厚い萩原さんですが、今後はどんな道を歩んでいきたいのですか?

萩原みのりこれまでずっと“女優さんじゃない感”がコンプレックスで、身の丈に合わない背伸びをしていたんです。同世代の友だちとご飯に行っても、「自分より高い服着ているんだー」とか劣等感を持ち過ぎてしまったりして、苦しい時期もありました。いまは格好つけることをしなくなってきたので、このまま等身大で格好つけない女優さんでいたいなと思っています。

――狂気的な役を演じることで、そういったパブリックイメージがついてしまうことに危機感を感じることは?

萩原みのり「キツそうだね」とか言われるとちょっと気になったりはします(笑)。でもいまはSNSなどで自分自身を表現できる場所もあるので、私に興味を持ってくださる方は、そこで「あ―普通の子なんだ」ってわかってもらえると思うので、それでいいかなと思っています。

――とろけるような恋愛作品のヒロインを演じてみたいという思いは?

萩原みのりやってみたいです! 私も“壁ドン”とかされてみたいです(笑)。大体がヒロインのライバルとか、彼氏の周りにいてほしくない女の子の役とかばっかり(笑)。でも客観的に考えて、私が壁ドンされている姿なんて観たいと思わないので、わかる気はするんです。どう見ても目つきが鋭いし「こういう役だよな」って(笑)。年齢を重ねて客観的に自分の顔が見られるようになってきましたね。

――これまでの作品でご自身に大きな影響を与えた出会いはありますか?

萩原みのり未公開作なんですけど、10代の時に参加させて頂いた日中韓合作映画の『双生』という作品があるのですが、その現場は韓国と中国のスタッフさんだけで、まったく言葉が通じなかったんです。でも撮影現場で私のお芝居を見て、泣いてくださった方がいたんです。そのとき、本気で表現すれば、言葉が通じなくても気持ちって伝わるんだって衝撃を受けました。すごく私にとっては大きな経験でした。その時感じた想いは忘れないでいたいなって思いますね。
取材・文:磯部正和

写真:Mitsuru Yamazaki
ヘアメイク:石川奈緒記
スタイリング:清水奈緒美

information

映画『成れの果て』公式サイト
https://narenohate2021.com/

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