元アイドリング!!!の遠藤舞、表面化するアイドルのセカンドキャリア問題「職業訓練あっても良い」

遠藤舞

 アイドリング!!!の初代リーダーで現在はボイストレーナーとして活動する遠藤舞が、“インディーズ(地下)アイドル”業界を調査・分析し、効果検証を行ったデータや情報の提供、アイドルとファンのリアルの声を発信するマーケティング機関「インディーズアイドル研究所」の所長に就任した。「アイドルになること」へのハードルが極端に下がり、それに伴い起きている問題や令和アイドルの理想的な姿、自身も経験したアイドル卒業後のセカンドキャリアについて語った。

何のノウハウや戦略もなくアイドルは量産されるが、その後のセカンドキャリアは“自己責任”

──「インディーズアイドル研究所」とはどのような機関なのでしょうか?

遠藤舞 まず、本研究所で扱うのは「メジャーレーベルからCDデビューしていないアイドル」です。世間では地下アイドルと呼ばれることもありますが、アイドル本人たちにアンケートを取ったところ、「地下」というワードはあまり好きじゃないという声が多かったんですね。やはり「地下」というと世間から遮断されたイメージもあるから、ということで。

──マスメディアを主な活動フィールドにするアイドルとの対比語ですよね。

遠藤舞 本来はそうですね。ただ実際のところ「地下」としか言いようのない、いい加減でやりたい放題な運営会社も少なくありません。それによってアイドル本人が被害を受けたりと目に余る状況もありました。業界の現状を独自の調査と分析によるデータとして可視化することで、インディーズアイドル業界をもっと健全なものにしたいという思いから設立したのが本研究所です。

──アンダーグラウンド化してしまう原因はどこにあるのでしょうか?

遠藤舞 1つにはアイドルになることもアイドルを運営することも、ハードルが極めて低くなったことがあるでしょう。SNSには頻繁に「#アイドル募集」が流れてきます。個人的にはほんの一握りの選ばれた人しかアイドルになれなかった時代とは違って、自己実現の門戸がたくさん開かれたこと自体は良いことだと思っています。ただ、今のインディーズアイドルには「自己責任」があまりにも重くのしかかっている。若い女の子たちに、それはあまりにも酷じゃないかと思うんですよ。

──インディーズアイドルが背負っている「自己責任」とはどんなものですか?

遠藤舞 よく言われるのが「アイドルのセカンドキャリア」ですよね。それはメジャーでも同じことが言えますが、若い時期にアイドル活動に専念したことで社会経験を積む機会がなく、アイドル卒業後の仕事の選択肢が狭まってしまう。ただ若いときに10年後や20年後なんて、なかなかイメージできないですよね。だからこそ大人である運営側が責任を持ってほしい。今は何の業界経験もノウハウなく、SNSで簡単に「#アイドル募集」をするような運営会社も増えています。若くて可愛い輝いている期間をお借りする以上は、人生丸ごと背負うくらいの責任を持ってほしいですよね。

──具体的にすべきことは?

遠藤舞 とにかく話し合いの場を持つことだと思います。アイドルたちの声を聞いていると、一番不安になるのが、「私たちをどうしていきたいのか、何もプランがないこと」だと言います。不安を抱えたままでは全力でパフォーマンスすることなんてできないですから、売り出しプランはもちろん、卒業後のライフプランも提案できるような運営者が増えてほしいです。

元アイドル経歴を生かせる職業はたくさんある、それだけに職業訓練のようなものもあっても良い

──遠藤さん自身、芸能界を引退して一般企業に勤めたときに戸惑ったこともあったようですが。

遠藤舞 一般企業に勤めていた頃、「議事録を取ってください」と言われて「議事録って何?」と固まってしまったことがありました。同世代の人が経験を通して身につけていく社会人スキルを、私は全く積んでいなかった。一生アイドルを続けるのは難しいなか、アイドル活動と平行して、職業訓練のようなものもあっても良いと思います。WordやExcelを扱うような事務作業を手伝ってもらうなどすれば、それだけでも卒業後の職業の選択肢は広がると思うんですよ。

──逆に元アイドルという経歴を生かせる一般の職業はあるのでしょうか?

遠藤舞 たくさんあると思います。例えば、デジタルの普及により自分でプロモーションをすることも増え、SNSスキルがとても高い。商品(=自分)の魅力を最大限にアピールしたり、ファンのニーズを掴んで戦略的に発信して行くといった能力は、一般企業でも役立つと思います。また、ファンと接することで対人スキルやホスピタリティも磨かれるので、接客や営業といった業種ではかなり力を発揮できるのではないでしょうか。

──アイドルのセカンドキャリアとして、女優や歌手、タレントに転身するケースはないのでしょうか。

遠藤舞 アイドルがこれだけ増えた今、メジャーでもそれを実現できる人はほんの一握りですよね。また今は、踏み台として覚悟を持ってアイドルになる人よりも、アイドルが最終目標という人も多い。卒業後に“何者か”にならなければいけないというプレッシャーもないようです。それだけにアイドルを卒業した途端、一般社会に放り出されて戸惑う人も量産されているのだと言えます。

──アイドルが量産され、飽和状態とも言える今は「アイドルのあり方」を見直すべきタイミングに来ているのでしょうか?

遠藤舞 ただアイドルになりたい女の子は今も昔もたくさんいます。さらに今は「なれる」ハードルが極限に下がっています。インディーズアイドルについては、これからも増え続けると思います。だからこそ運営者にしっかりしてほしいですよね(笑)。「チェキを撮影すれば課金してくれるだろう」といった“なんとなく”の運営方法ではない、ファンが本当に求めているサービスをデータを元に開発し、その効果検証を行う。一般の企業では当たり前となっているPDCAサイクルをきちんと回すアイドル運営を、そろそろインディーズアイドル業界でも取り入れたほうが良いと思います。

アイドルたちの成功や幸せの価値観も多様化、「選ばれる」のではなく、自己選択することが重要

──ちなみに遠藤さん自身は引退時に「20代中盤がアイドルの限界」と語っていましたが、今はどうなのでしょうか。

遠藤舞 メジャーでも結婚して子どもが生まれてもアイドルを続ける方はいますが、インディーズではさらに多様化されています。会社員の傍ら週末だけアイドルをしている方、それこそ40〜50代の歌って踊れるアイドルもいるように年齢も活動スタイルもさまざまです。いくつになってもやりたいことを実現して輝いているのは、女性目線から見ても本当にステキだなと思います。

──「若くて可愛い」だけが条件でないとすると、現代のアイドルの定義とは?

遠藤舞 たしかに名乗った者勝ちではありますが、個人的には「応援する/される」の双方向の関係性が成り立っていることが定義ではあると思います。つまりファンの存在です。1人でも応援してくれるファンがいれば、アイドルと言って良いと思います。むしろ今は「アンチによって傷つくよりは、有名にならなくてもいい」と言っているアイドルも少なからずいますし、成功や幸せの価値観も多様化しています。

──昭和、平成とアイドルの姿は大きく変わりました。令和の時代にはどうなっていくのが理想ですか?

遠藤舞 個人的には、1人でも傷ついてアイドルを辞める人をなくしたいです。卒業するときには笑っていてほしい。そのためにも、これからのアイドルには自己選択できるようになってほしいですね。運営やファンに「選ばれる」のではなく、自分が「選ぶ」。そうした芯を持ったアイドルが増えていけば、インディーズアイドル業界はもっと健全なものになっていくと思いますし、本研究所もそのために貢献していきたいです。

(文/児玉澄子)
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