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されるがままのウミガメの赤ちゃんに「たまらん」 食用で絶滅危機に瀕したウミガメ保全活動の裏側

 海洋生物の中でも特に人気があり、馴染み深いウミガメだが、多くの種が絶滅危惧種に指定されている。日本では主に小笠原諸島に生息で繁殖しているアオウミガメは、食用のために乱獲されたことがその数を減らした要因だと言われている。そんなアオウミガメを20年以上にわたり保護・飼育をしている小笠原海洋センターに、日本人にとってなぜか古くから親しみ深い“ウミガメ”の実情について聞いた。

絶滅危機を救うための保全活動には長い時間が…「産卵できるようになるまで30〜40年」

 小笠原海洋センターは、アオウミガメをはじめとする小笠原の生物の保護に尽力するため1982年に開設された。現在はアオウミガメのモニタリング調査、ザトウクジラの個体識別調査などの生態解明のための調査研究、また、そこから得られた情報を展示館に展示したり、環境教育のプログラムを一般の方に向けて実施したりする普及啓発活動等を行っている。

 施設の運営を行っている認定NPO法人エバーラスティング・ネイチャー(ELNA)の大久保さんは、アオウミガメが絶滅危惧種に指定されている原因として「様々な要因が考えられますが、小笠原の個体群に関していえば過去に食用のため乱獲されたことが一番の原因です」と話す。

「保全活動をするにはまず、アオウミガメの生態と現状を知る必要があります。生態を解明し、何が減少の要因で、何をすれば個体数を増やす取り組みになるのかを考え、データに基づいた保全活動を行っています」

 センターでは、年間200頭に及ぶ子ガメを生後半年から1年ほど飼育して、甲長20cm〜30cmほどの大きさで放流している。しかし、その成果が出るのには長い時間が必要だ。

「私たちの調査結果から、繁殖のために来遊するアオウミガメの頭数は近年増加傾向にあることが確認されています。しかし、この個体数の増加は、私たちの活動による成果ではなく、戦時にアオウミガメの捕獲頭数が減少したことが関係していると考えています。アオウミガメは産卵できるようになるまで30〜40年ほどかかるため、私たちの活動の成果が表れるまではもう少し時間がかかりそうです」

ウミガメの赤ちゃんをSNSで公開 補助金の減少に悩む中、“バズり”がもたらした効果

 センターは海洋生物の保全を目的としているが、近年、ウミガメの様子を撮影したSNSの活動を積極的に行っている。

 「ELNAは、認定NPO法人で営利を目的としていない団体です。NPO法人は補助金や助成金、一般の方や企業からの寄付金を元に活動していますが、補助金などは常に削減傾向にあり、活動資金不足はいつも悩みの種です。どうにかして活動資金を集めなければならないといった状況なのですが、SNSのフォロワーが増えたことにより、寄付をしてくださる方が増え、オンラインショップでの売上も伸びました」と、SNS効果を実感している。

 最近の投稿では、赤ちゃんウミガメの甲羅を歯ブラシで磨く動画に10万いいねを超える反響が集まった。「ウミガメの赤ちゃんの甲羅磨きはとても人気で、上げる度に良い反応を頂いています。Instagramでは海外からのフォロワーも大変多く、関心を頂けてとても有難いです」

 「たまらない可愛さ」「これが最強生物か」「されるがまますぎて可愛い」などの声の他に、「お腹側も甲羅と言うのですね」「なんで甲羅を掃除するんですか」「こんなに腹の白い亀は初めてみた」といった、ウミガメに興味を持つきっかけにもなっている。

 ちなみに甲羅磨きは皮膚病の予防のために行っているそう。「野生のウミガメは、魚に甲羅をお掃除してもらったり、岩に背中をこすりつけたりすることもありますが、水槽にいるカメはそれができないので人の手で磨いています。また、あまり知られていない情報として、生まれたばかりの子ガメには、鼻先に卵の殻を破るために卵角(らんかく)という角があるんです。この卵角は1ヵ月くらいたつと消失し、みなさんが知っているおなじみの丸い顔になります」

意外と身近な存在のウミガメ、私たちでもできる保全の方法とは

 日本人にとって、ウミガメは世代を問わず馴染み深い海洋生物であるが、それはなぜなのだろうか。

「小笠原のアオウミガメは、本州の方に向かって泳いでいくことがわかっており、本州の太平洋側が餌場だと考えられているため、実は身近に生息しています。また、浦島太郎のモデルになっていると言われるアカウミガメは、本州の広い地域で産卵をする種類ですので、沿岸地域では意外と馴染み深い種類なのかもしれませんね。また、小笠原では、今でも様々な制約が設けられた上でウミガメ漁が行われており、島内の飲食店では1年を通してウミガメの郷土料理が親しまれているんです」

 最後に、海洋生物達のために私たちができることを聞いた。

「まずは『関心を持って知る』ということが大切だと考えています。なんとなくの知識だけで行動すると、実はその生物にとって良くない事かもしれません。対象の動物の生態やおかれている状況を知ることで、自分がやるべきことが浮かび上がってくると思います。船で24時間かかるのでなかなか簡単に来られる場所ではないですが、機会があればぜひ小笠原海洋センターに遊びに来てみてください。赤ちゃんガメは小さくてとっても可愛いですが、お母さんガメはびっくりするくらい大きいですよ!」

小笠原海洋センター

アオウミガメをはじめとする小笠原の生物の保護に尽力するため(財)東京都海洋環境保全協会により1982年4月に開設。以来、特にアオウミガメやザトウクジラなどの海洋生物の生態の研究・解明に尽力し、それぞれの結果は世界的な評価も得ている。 2001年3月に運営母体である(財)東京都海洋環境保全協会が解散したことに伴い、施設や資料などの財産は小笠原村に譲渡されたが、センター事業の運営と施設管理に関しては、NPO法人日本ウミガメ協議会が2001年4月から2006年3月まで行ない、2006年4月からはNPO法人エバーラスティング・ネイチャーが実施し、現在に至る。2002年には、20年間潮風にさらされた外部壁が修繕され、展示館もさらに充実した。

支援ページ
https://www.elna.or.jp/for-individual/

オンラインショップ
https://elna-support-shop.stores.jp/

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