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(更新: ORICON NEWS

「本物じゃないの!?」「飲めそう!」リアルすぎる“切り絵のペットボトル”に称賛「作品が訴えるものを感じてほしい」

 「水の入ったペットボトルにナイフを突き立てている?」…と思いきや、“1枚の紙”、しかも切り絵だったということで反響を集めた切り絵作家SouMaさんの作品。立体的に見えるけれど平面で、紙を切るだけでなく薄く剥がすなどして濃淡をつけているのだそう。創作のコツを聞いた。

平面なのに立体的…不思議な“切り絵”「切るだけでなく削って、濃淡をつけています」

――切り絵で作ったペットボトルが「本物にしか見えない」と話題でしたね。特にこだわった部分を教えてください。

SouMa “水”と“光”の表現にこだわりました。同じ白い部分でも微妙な明度の差をつけることで光って見せたいところをピンポイントに明るくみせられるよう切り方を工夫しています。

――これは平面なんでしょうか? 構造が知りたいです。

SouMa 平面の白い紙をカッターナイフで切り抜いて黒い背景の台紙に貼りつけています。おそらく“切り絵”と聞いてイメージするような、シンプルな切り絵だと思います。カッターナイフは切り方次第で切る線を擦ったりして、薄く削ることもできます。影のように見えるグレーの部分は、紙を極限まで削いで薄くすることで黒の背景紙が透けて見えるためそう見えます。

――厚みで濃淡をつけていたんですね。

SouMa それを何段階も調整して、グラデーションを表現することで立体的に見えます。創作に使用している紙の厚みは市販のコピー用紙と同じくらい薄いものですが、そこに厚みを感じながら彫刻のように削っていくイメージです。

――そんなに薄い紙で表現しているんですね。1枚の紙から切り出したとのことですが、特に大変だった部分はありますか?

SouMa 切り絵は、全て切り終えてから台紙に貼りつけることが多いんですが、私は大枠を切り取った後は、カッターマットを使わずに背景の黒い台紙に貼りつけて、そこから直接切っています。そのとき台紙に刃が当たらないように切っていくことが難しいです。また、水滴の表現も遠目で見たときにリアルに見えるよう水の特徴を捉えながら切ることを意識しました。

――すごく精巧な作品ですが、途中で諦めそうになるようなことはなかったのですか?

SouMa 私が普段行っている創作は、これらの手法を応用した、大きくて立体的なオブジェがメインとなっています。それに比べるとペットボトルの作品は作業工程がシンプルでした。完成までは4日間くらいでしたね。

着想は水害での出来事「同じ水でも“生かす水”と“奪う水”がある」

――たくさんのいいねがついていましたね。SNSで反響を得た感想を教えてください。

SouMa 私は今回のような写実的な作品を作ることは少ないのですが、イメージがストレートに伝わる作品の反応を見ることができたことがひとつの収穫でした。SNS上だと反響がダイレクトに数字に表れてくるので、それも新鮮でしたね。展覧会とはまた違った舞台でコメントや反響を頂けたことは、とても嬉しいです。

――今回SNSで反響を得たことで起きた、良いことや驚いたことなどがあれば教えてください。

SouMa 幼いころから何気なくやっていた自分独自の技法が、こんなにも不思議に思って頂けることに驚いています。そして作る様子を見てみたいという声も沢山頂いたことで、展覧会での創作実演の演出を考えてくださる会場スタッフさんや、わざわざ会場へ見に来てくださるお客さまもいたりして、こういったご縁を大切にしたいと思いました。これまでもたくさんの取材で創作の様子を撮っていただきましたが、それを離れた場所で見てくださる顔の見えないみなさまへの感謝の気持ちも大きくなりました。

――今回の作品はどんなところから着想したのでしょうか? またその着想を、作品に起こすまでの道のりや、苦労などがあれば教えてください。

SouMa 今回は「水の入ったペットボトル」と「流れ着いたペットボトル」の二部作なんです。これは先日私の住む地域で起こった、水害による出来事をきっかけに着手しました。増水で孤立した地域の住人からの「水が欲しい」というメッセージを見て、“生かす水”と“奪う水”という、同じ水のはずなのにまったく違う存在の“水”について考えながら切り進めました。

――確かにそうですね。

SouMa 当たり前のように机の上にあったペットボトルという容器に入った飲水は現代に生きる人の生活を象徴した素材であると感じましたし、そういったエピソードを一本のペットボトルというシンプルな題材に込めることは私にとってチャレンジだったと思います。

――イマジネーションは普段どんなところから湧いてきますか?

SouMa イマジネーションは常に湧き起こっています。何作品も同時に創作していますが、作りながら他の作品の工程を考えていたりと、まだまだ作りたい作品が列をなしています。題材はその時の感情に任せていることがほとんどで、最初に完成図をはっきり決めることもあまりないです。切り絵は最初のデザインが肝心だと思われがちですが、私は途中で大きさを変えていったり、その時々でどんどんデザインを変えていきます。完成したときに、「私の思い描いたイメージはこうだったんだな」と感じることも多いですね。

――下絵や設計図を用いないとおっしゃっていましたが、今回はどうでしたか?

SouMa 今回の作品や、似顔絵など、実際に存在するものを作るときはある程度下絵を描きます。今回の作品のモデルは実物を見ながら創作しました。ふと湧いた頭の中にイメージするものを創作することがほとんどなので、そのときは下絵にこだわることはあまりないです。

――今後作りたいと思っている作品、具体的な作品じゃなくてもやってみたいこと、目標などあれば教えてください。

SouMa 常に意識していることですが、技術に目がいかない作品作りを目指しています。切り絵は細かさや、「どうやって作っているの?」のような印象が残りがちなんです。もちろんそれも重要なポイントですが、実物を前に作品が”訴えるもの”を感じてもらうことが本来の私の希望です。目立ってしまいがちな技術も、技術によって透明にすることができると私は思いますので、それを目標に研究をしています。最近ようやく、お客さまに伝えられるようになってきたのかなぁと感じています。これからも切り絵の可能性を信じつつ、切り絵というジャンルに縛られすぎない、SouMaらしい新しい表現を追求していきたいと思います。
SouMa氏公式ホームページ
https://www.souma-wkh.com/

ツイッターアカウント:@SouMaNoKirie

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