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『すみっコぐらし』とのコラボも…なぜ銭湯文化が薄れた今も「ケロリン桶」を売り続けるのか?

 かつては、銭湯や温泉に必ずと言っていいほどあった『ケロリン』と書かれた黄色い風呂桶。先ごろ、『すみっコぐらし』のデザインを起用した「ケロリン桶」が、SNSで話題になった。銭湯に馴染みのない若い世代のなかには、人気アニメとのコラボで知った人も多いだろうが、もともとは解熱鎮痛薬『ケロリン』の広告として誕生した「ケロリン桶」。銭湯文化が薄れつつある現在、同商品はどのように価値を維持し続けているのか、富山めぐみ製薬の北村学さんにお話を聞いた。

銭湯文化が縮小傾向もケロリン桶は死せず!「出荷数は販売初年度から変わらず。国内現存数は300万個」

 富山めぐみ製薬が製造販売する解熱鎮痛薬『ケロリン』は、大正14年の発売開始以来、現在に至るまで変わらない処方で、親子代々にわたって「我が家の常備薬」としている家庭も少なくない。その『ケロリン』の文字が最初に風呂桶に印刷されたのは、前回の東京五輪前年の昭和38年のこと。それ以前まで銭湯や温泉では木製の湯桶が主流だったが、衛生面や耐久面から徐々にプラスチック製(合成樹脂)に切り替わるタイミングで、ここに広告として商品名を入れたのが「ケロリン桶」の始まりだった。

「当時は、お風呂がない家庭も多かったため、1日の疲れを癒す銭湯は広告効果の高い場所でした。ところが風呂桶はお湯にさらされて印刷が剥がれやすいことから、広告に使用されるケースは少なかったようです。ケロリン桶は、インクをプラスチックの中まで浸透させる特殊な印刷方法を採用しているため、文字が消えない上に、表面もツルツルで汚れが付きにくいんです」(北村さん)

 ちなみに初年度に納入された「ケロリン桶」の色は白だったが、翌年から汚れが目立たない黄色に変更された。ここでおなじみの「ケロリン桶」が誕生したわけだが、今なお「白のケロリン桶」が現役で稼働している温泉や銭湯も全国にあるという。実に58年にわたって業務用の使用に耐えてきた驚異の耐久性だ。

 銭湯に通った世代にはノスタルジック、銭湯を知らない世代にはレトロ可愛い。そんなケロリン桶は、銭湯が減少しているにも関わらず年々増殖し続けているという。

「1963年の製造開始から現在まで、年間5〜6万個の出荷数は変わっていません。またちょっとやそっとでは壊れないため、国内に現存するケロリン桶は2021年現在で約300万個と推測されます」(北村さん)

アニメコラボがSNSで話題に、改めて注目された「ケロリン桶」

 かつては銭湯や温泉に納入されてきたケロリン桶だが、30年ほど前から一般販売を開始。日本の銭湯文化を象徴する小道具として、映画やドラマ、アニメに登場することも増えた。なかでも映画『テルマエ・ロマエ』(2012年、2014年)の反響は大きく、この頃よりアニメ作品をはじめとするコラボレーションが本格的に始まる。

「ありがたいことに銭湯や温泉を扱った作品からは、必ずといっていいほどお問い合わせがあります。ただケロリン桶の製造プロセスには手作業も多いため、年間で出荷できる個数には限りがあります。そのため大規模コラボは年間に2回まで。すでに2023年までコラボ予定が埋まっています」(北村さん)

 2013年のアニメ『ケロロ軍曹』に始まり、『銀河英雄伝説』、『けものフレンズ』、『ゆるキャン△』などこれまでコラボしてきたのは人気作品ばかり。効果は大きく、近年はさまざまな施設からの問い合わせが増えていると言う。

「銭湯とは異なるコンセプトを打ち出すためか、ケロリン桶を使用しないスパやスーパー銭湯、サウナも多かったのですが、SNSなどでのコラボが話題になったことで、改めて注目していただけたようです。とはいえ、出荷数はこれ以上増やせないので、在庫ギリギリで回している状態です」(北村さん)

 北村さんが言及しているように、ケロリン桶の製造プロセスには手作業も多い。プラスチック製なのだから、鋳型に流して簡単に製造できそうなものだが──。

「成形までは機械でやるのですが、型から抜いたあとは手作業。お風呂に入って柔らかくなった皮膚を傷つけないよう、徹底的に研磨します。100円ショップで風呂桶が買える時代に、1300円(税抜)を高いと感じる方もいるかもしれませんが、このツルツルな質感をぜひ手に取って確かめていただきたいです。今は通販もしていますが、実物に触れて納得していただけたらうれしいというのが本音です」(北村さん)

ケロリン桶の役割は今も変わらず広告、SNSが普及した令和ならではの広告効果も

 また、ケロリン桶のサイズには関東用と関西用の2種類があり、関西用の方がひと回り小さい。関西では浴槽から桶で湯を汲んでかけ湯をする銭湯文化があるため、「お湯を入れると重くなりすぎる」という配慮からだ。

「耐久性にも自信があります。業務用を想定しているため、強酸性、アルカリ性の温泉でも劣化しない素材を採用。耐荷重試験では200キロで限界値を超えてしまったため、公式データは取れませんでした。ただ試験では倍の荷重をかけるため、400キロでも壊れないことはわかりました」(北村さん)

 滅多なことでは壊れない上に、毎年コンスタントに出荷され、全国で増殖し続けるケロリン桶。しかしここで改めて言うと、富山めぐみ製薬は「桶屋」ではない。

「ケロリン桶の役割は今も昔も変わらず広告ですが、SNSを見ていると若い世代には“ケロリン=桶”だと思っている方もいるようです。そういう“誤解”に対して『いや、“ケロリン”は薬の名前だよ』と指摘してくださる方もいたりして、SNSが普及した現代ならではの広告効果を感じますね」(北村さん)

 大正14年から処方が変わらない解熱鎮痛剤の『ケロリン』。そして昭和38年からデザインが変わらないケロリン桶。いずれも驚異のロングセラーであることは間違いない。

「リニューアルの必要がなかったのは、お客さまが愛用し続けてくださったから。それもすべては品質への信頼の証だと捉えています。ただ桶のデザインについては悩ましいところで──。実は『ケロリン』は、2018年に内外薬品から富山めぐみ製薬に事業移管されているのですが、ケロリン桶は現在も“内外薬品”と印字したものを製造しているんです。7文字をレイアウトするのが難しいというのがその理由なのですが、いつかは変更しなければいけないときも来ます。ただ会社名よりも『ケロリン』というお薬を知っていただくのが大事なので、当面はこのままのデザインでいく予定です」(北村さん)

(文/児玉澄子)
◆『ケロリン』ファンクラブのサイトはこちら⇒(外部サイト)
◆富山めぐみ製薬 解熱鎮痛薬『ケロリン』公式サイトはこちら⇒(外部サイト)
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