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優等生“第7世代”のカウンター? 岡野陽一、鈴木もぐらなど…クズ芸人脚光の背景
コンプライアンスの強化とともに、求められた清廉性
そこへ台頭してきたのが、いわゆるお笑い第7世代。霜降り明星やEXIT、ハナコや四千頭身などはそれぞれ特徴がありながら、お笑い芸人が放つアクの強さ、武勇伝的なものはほぼない。むしろマイペースで根は真面目といった雰囲気があり、これまでの芸人にはなかった“清廉性”が備わっているようにすら見える。
EXIT・兼近大樹やフワちゃんなどはSNSを騒がせる発言が多く、一見すると自由奔放に振る舞っているようにも見えるが、実は人一倍空気を読み、目上の人にも嫌われない言動を心がけている。彼らは単に(年上世代からは理解できない)新しい価値観を持っているだけではなく、それを角を立てずにスマートに表現することができる“お笑い芸人の新常識”を備えているのだ。そのあたりが第7世代の強みともいえるが、もはや芸人はプライベートな部分で怪しさやいかがわしさを盛って、箔をつける必要がなくなってきたのかもしれない。
第7世代が根付かせた“新常識”を覆す“笑えるクズ”の台頭
その他、『金借りチャンネル』を立ち上げたヒコロヒー、相方に金を借りる相席スタート・山添寛、ギャンブル狂のマヂカルラブリー・村上など、清々しいほど明るくクズっぷりを見せる芸人が続々と登場してきている。彼らに共通しているのは“信念が一貫しているクズ”。自分に嘘がなく、信念を貫いているからこそクズネタにも迫力があり、その突拍子のなさがお笑いのネタとして確立される。ちなみに岡野は、AbemaTVの『マッドマックスTV』で論破王・ひろゆきとディベート対決をし、「一貫して嘘がない」との判定を受けて勝利している(判定は日本弁論連盟)。
第7世代の“クズ”代表・粗品、千鳥&かまいたちなどトップランナーに共通する清廉性とクズの“良い塩梅”
また、大ブレイク中の千鳥やかまいたちにしても、芸人としての地位を確立しながらもギャンブル好きを公言している。特に千鳥・大悟の飲酒エピソードなどは、故・志村けんさんのDNAを受け継ぐ「最後のクズ」「泣けるクズ」エピソードとして昇華している感さえある。
かつては、社会からハミ出した人間・社会不適合者の最大の成功例という側面があった“お笑い芸人”。「芸人をやっていなければ今ごろは…」なんて枕詞もよく耳にしたものだったが、彼らを見て育った視聴者は(特に40代以上男性)、その破天荒な生き様に「カッコいい」「男前」と憧れすら抱いた。社会に生きづらい人たちが自由奔放に熱く生きる姿は、芸人の魅力の一つだったのである。「他人のクズ話はおもしろい」とはよく言われるが、明るく悲壮感のないクズ話は最高のエンタメともなる。コンプライアンスや自粛やらで息苦しい世の中になったが、今を生きる“クズ芸人”たちには、限られたルールの中で徹底的に“クズ”を貫いてほしいものである。